【山下久美子 インタビュー】
愛にあふれた人たちに対する
感謝の想いを込めている
DISC1の最後に新曲「Morning Star」が収録されていますが、これは今、久美子さんが“しばらく会わない時間があっても、また会った時に当時と同じような感覚でいられる”とおっしゃったことの具現化ですよね。「Morning Star」を作曲された亀井登志夫氏はデビュー曲「バスルームから愛をこめて」を手がけた方でもありますし。
還暦の誕生日ライヴ(2019年2月23日に開催した『The Sweet Sixty ☆ Special Rockin’ Live!!』)の時にプレゼントしてもらった曲なんです。それも個人的なやり取りの中で“、じゃあ、曲をプレゼントするよ”みたいなノリで送ってきてくれて、“いつか音源にするからね”って会話をしつつ、まずライヴから始めてみようかなって。でも、昔は“ライヴでちょっと歌い始めてみよっか”って音源にする前からやっていたりしたので、そんな感覚で何回かライヴでやってましたね。で、徐々にかたちになっていって、今回のベストの話になった時に「Morning Star」を入れてほしいと。だから、意外と早く音源になったとは思います。
「Morning Star」はファンキーでオフビートなノリで、ブラックミュージックテイストあるナンバーに仕上がりましたね。
そうですね。そこは未来につながるようなものであってほしいというふうには思ってます。今後ソウルフルなものをやっていくということではなくてね。「Morning Star」はちょっとアトランティックな感じがするんですけど、もともとモータウンとかが好きだし、ソウルフルなものも好きだったりするので、亀井さんはそういう嗜好を知っててくれて、私に合う曲という感覚でプレゼントしてくれたんだと思うんですよね。久しぶりで新鮮に受け止められたし、意外と難しい曲ではあるんで最初は戸惑ったりも迷ったりもしたんだけど、すごくスムーズに歌えたし。亀井さんは音域が広い人なんですよ。だから、歌い手泣かせって感じで、私だけじゃなく他にも泣かせてるんです(笑)。だけど、そういうところも含めて、有意義なレコーディングをさせていただいて嬉しかったです。あと、扇谷研人くんという若い世代にアレンジをしてもらって。亀井さんとつながりのある方で、そのふたりと一緒にレコーディングしました。
「Morning Star」はDISC1の15曲目に収録されていますが、イントロからしてさすがに“おっ、これは新しいな”という印象がありますよね。
こういう言い方が適切なのかどうか分かりませんが、歌詞を含めて過去を引きずってない感じがします。
おふたりとのご縁をものすごく感じる曲です。作詞の亀井知永子さんの想いも届けられたらという想いもありますし、これからも亀井さんとは何かお仕事をしていこうという話をしていますから、そのスタートでもあるというか。今回、40周年の3枚組ベストですけど、区切りというニュアンスではとらえてなくて、新曲の「Morning Star」を入れることで、ここから先を感じてもらえたらと思いますね。
それは圧倒的に感じますよ。
私ね、もっと発信していかなきゃダメだと最近思ってて。って、何も考えてないんですけど(苦笑)。
YouTubeとかどうですか?(笑)
そういう面倒なことは苦手なので、誰かがやってきれなきゃ嫌みたいな(笑)。まぁ、楽しくやれたらいいんですけどね。“やらなきゃいけないんだ!?”というのではなくて、プレッシャーもなく、楽しんでやっていくべきだなとちょっと思ってます。
それも期待したいところです。あと、亀井さん以外にも、大沢誉志幸、細野晴臣、布袋寅泰、筒美京平と、そうそうたる音楽家と仕事をされてきたことが、特にDISC2の楽曲からうかがえますね。
「最後の初恋」は作曲が筒美京平さんで作詞が湯川れい子さんですし。すごいでしょ? 我ながらすごいなと思ってます(笑)。
大澤誉志幸さんとは最近も一緒にライヴをされているようでもありますし、そういうすごい方との仕事が今もずっと続いているわけですよね。
長く時間が経たないと味わえない醍醐味みたいな感じですよね。最初に出会った頃、まさか60歳をすぎてお互いに歌っているなんて考えたこともなかったし。
まだまだこれからも新しい出会いはありそうですか?
えーっ! …あったらいいよね。じゃあ、新しい出会いを求めてこれから頑張ろうかな?(笑)
“じゃあ”って(笑)。
あははは。でも、刺激的な人に会うのは良いことですよね。音楽も楽しくなるし。
では、最後にDISC3の“黄金伝説”について訊かせてください。
これは1984年の映像で、今じゃ考えられないような異常に貴重な映像なんですけど、どう受け止めてくれるのかが楽しみですね。
まさに“黄金伝説”のタイトルに相応しいお宝映像だと。
これは賛否両論のあった同年リリースのアルバム『アニマ•アニムス』の楽曲で映像が構成されているそうですけど、今さらながらに衝撃を受ける人がいるかもしれない?
そうですね。一番反抗的な時代でしたから(笑)。でも、それを今聴いて面白がってもらえたらって思います。実際、面白いですよ。“何でこんなことしてるんだろう?”って(笑)。
つまり、今回の2枚のCDと1枚のDVDで、山下久美子というアーティストがより深く分かるということでしょうか?
かなり深いと思います。“実は変な人だったんだ!?”って(笑)。“何を考えてたんだろうね?”とかね。結構、頑張って大胆なこともやってきたし、“丸く収まってないぞ”や“どこかはみ出していたいんだ”みたいなところもあって。でも、その気持ちはこれからも変わらないようにしていきたいと思います。
その発言を目の当たりにして、久美子さんはやっぱりロックなんだなと思います。
そういうことなんですよ。丸く収まっていたくない。収まると終わっちゃうって感じなんで、そこが私のロックンロールへの想いということです。
取材:帆苅智之
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アルバム『愛☆溢れて! ~Full Of Lovable People~』2020年10月21日発売
テイチクエンタテインメント
- TECI-1701
- ¥5,000(税抜)
- ※2CD+DVD
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『山下久美子 40th Anniversary Best 「愛☆溢れて! ~Full Of Lovable People~」 アルバム発売記念配信ライヴ』
ヤマシタクミコ:1980年にシングル「バスルームから愛をこめて」、アルバム『バスルームから愛をこめて』でデビュー。82年に「赤道小町ドキッ」が大ヒットし、その後もハスキーでキュートなヴォーカルとロック色の濃いポップスで数々の楽曲をスマッシュヒットさせる。90年代には海外レコーディングやセルフプロデュースなど新たなアプローチを展開し、デビュー20周年となる00年には佐野元春や桑田佳祐らをゲストを迎え『THE_HEARTS』を、05年の25周年にはデュエットアルバム『Duets』、10年の30周年には『手をつなごう』を発表。11年6月より約1年ほど活動休止するも、翌年よりデビュー時からの友人でもあり代表曲の作曲者でもある大澤誉志幸のライヴに出演。その後、大澤誉志幸とアルバムのレコーディングとライヴ活動をともに展開。15年にソロ活動を再開させ、20年にはデビュー40周年記念作品『愛☆溢れて! ~Full Of Lovable People~』をリリース。山下久美子 オフィシャルHP