写真/2015年12月29日・第66回NHK紅白歌合戦記者会見

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ロマン優光のさよなら、くまさん
連載第170回 山口達也アル中問題 元TOKIOの山口達也氏が、警視庁の警察官の運転すり信号待ち中の乗用車にバイクで追突。呼気検査の結果アルコールが検出され、酒気帯び運転の疑いで現行犯逮捕された。取り調べで山口氏は「酒が残っていることがわかっていて乗った」と供述していたが、釈放後は「酒が残ってると思ってなかった」と一部供述を翻しているという報道もある。この違いで罰の大きさが変わってくるのは確かだろうけれど「そんなのどうでもいいから、まず酒飲むなよ。」という感想が出てくる人が多いだろう。
 以前の未成年に対する強制わいせつ事件の際に、彼の飲酒にまつわるトラブルが多く報道されたのだが、 事件前にアルコール依存症の治療に評価が高い病院に入院していたがアルコール依存症だという診断は下されたわけではなかったということだし、その後もアルコール依存症の診断が下されたという本人からの明確な表明はない。事件後の入院は精神疾患の治療のためだったという報道も一部にはある。ただ、あの事件の原因の一部も飲酒による判断力の低下がもたらしたものとされ、断酒のために入院までしていたのに、前日の夜に大量に飲酒していたのに他の交通機関を使うという判断ができなかったことで、アルコールに対する意識が改善されてないと見られてしまうのは仕方がないことだろう。
 そもそも、本人によると肝臓の値が高いために家にいると飲んでしまうから肝臓を休ませるために入院したというが、断酒するのに入院を必要とした時点で、アルコールに対するコントロールを失っている。そして退院の日に酒を飲んで強制わいせつ事件を起こしている。酒の怖さをなめているから飲んでしまうとかいう話ではなくて、もうアルコールがいつでも入手できる状況では欲求をコントロールできない状態にあるということだ。
 ここからは依存症について話をしてみたい。アルコールに限らず、依存対象が手に入らない状況に本人が置かれるならば、その呪縛から一時的に離れることは比較的容易だ。だから、入院することや、違法薬物の場合は服役することで、そこから離れることができる人もいる。別に薬物に限らない。週のほとんどをライブに通いつめ、常軌を逸脱した金額を注ぎ込み、生活に支障をきたすレベルに達していたアイドルオタクの中にも、このコロナ禍でライブイベントが出来なくなっている間にすっかりアイドル熱がさめてしまった人も見られる。
 ただ、隔離された環境で依存から抜け出すことはできても、それが自由に手に入る環境に戻って元に戻らない人は正直少ないと思う。隔離は一時的な手段でしかない。結局のところ、そういうものに依存することでしか心の平安を得ることができない内面の問題を改善しないことには依存から脱却することができないのではないだろうか。その内面の問題が精神疾患や発達障害から生じている場合もあり、そこに踏み込まなければならない場合もあるだろう。違法薬物の依存から抜け出し、すっかり更正して真面目に働いて幸せな家庭を築き周囲も安心していた人物が、何年か後にアルコール依存に陥って再び自分の生活を破壊することになった例も知っている。根本の内面の問題を解決できなければ、何かに対する依存を辞めたように見えても、依存対象が他に移るだけで何も変わっておらずに別のもので同じことを繰り返す場合もある。
 人間は誰だって多かれ少なかれ何かに依存しているものだが、それにのめり込むことでコントロールを失い、普通の安定した社会生活が送れなくなるようになってしまっては仕様がない。人間の脳にダイレクトに作用するようなもの、薬物や賭博に類したものはよく効くだけに、そういう事態を引き起こしがちだ。
 そうなってしまうと、独力で脱することはほぼ不可能なんだと思う。「そんなことはない。病院や自助グループに頼らず、自分の力で抜け出した人もいる」と言う人もいるかもしれない。しかし、対象が違法薬物の場合、依存してるというより、単に遊びに使ってる程度の人が捕まったので辞めたぐらいの話だったりするのでは。確かに独力で依存状態から脱する人もいるが、そういう人の方が例外なのであって、それを基準にしてはいけないのだと思う。それに、そういった人でも本当に独りというわけでもなく、たいていは家族や周囲の協力がある。そういう周囲に恵まれるのも奇跡的だ。社会的にも不遇で孤独だった人が恋人や配偶者ができたり、社会的にも認められるような環境に身を置けるようになったことで薬物依存の状態から抜け出した例は見たことはあるが、客観的には家族や社会的にも認められているような人で薬物依存に陥って破綻を起こした人がそこから抜け出せた例は自分が知ってる限りより少ない。前者は人や社会と繋がることで他者の支えによって内面の問題を解決することができたから脱却できたのだろうけど、後者は客観的には恵まれた環境でも解消できない、普通の幸せを得ても解消できないような内面の問題を抱えていたのかもしれない。一度そういう問題が起こると人は離れていく。最初より状況が悪くなるのだから、より抜け出しにくくなるのは当たり前なのだろう。
 依存症というのは病気であり、治ることがないものだ。退院したから終わりとかいうものではない。一度なってしまうと一生付き合わなければいけない病だ。石丸元章氏ともそういう話をしたことがあるが、覚醒剤依存から立ち直った人で覚醒剤を渡されてやらないでいる自信があるという人はおそらくいないだろう。いたとしたら、逆に自分を過信していて危険だと思う。覚醒剤は恐ろしいものだが、覚醒剤に限らず違法なものは、今までのそういった人間関係や環境を断ち切ることで手に入らないようにするという方法をとることで自主的に隔離することができる。それでも外部からの誘惑はあるし、並大抵の意思の強さでは難しく、田代まさし氏の例をあげるでもなく失敗してきた人は数えきれないだろう。しかし、アルコールは日本ではどこででも手に入るものだ。それはパチンコも一緒かもしれない。街中に溢れかえっている。求めてなくても、かってに目に飛び込んでくる。そういう中でそれを独りの力で断ち切るなんて、それができる人間は何人もいないのでは。 依存症が原因で色んなものを失ってしまった人が、その苦しみから逃れようと、空白を依存対象で埋めようとして状況をさらに悪化させてしまうのはよくある流れだ。社会的地位も周囲の人間も生活も最終的に自分の心も何もかも失って依存対象しか残らなくなるのがアルコールを含む薬物依存の怖さだ。
 山口氏が退院後にどのような生活を送っていたのかはわからないが、今回の事故にいたる経過を見ていると、このままでは芸能界での再活動(賛否は当然あるだろうが)はおろか、社会からドロップアウトしてしまう可能性もある。少なくとも、世間の風当たりはいっそう強くなるし、支えてくれていた周囲もさらに減ってしまうだろう。現在アルコール依存症であるかどうか、精神的な疾患がどうかといったことが公表されてない以上はっきりしたことはわからないが、このままでいくとより精神的に確実に悪い方にいってしまうと考えるのが普通だろう。芸能界復帰とかそういうこと以前に自分を人間として社会的に留めておくために、自分だけを壊すのではなく様々な要因で他人を傷つけていくことがないようにするためにも、色々と他者の力を素直に受け入れながら内面の問題に今こそ取り組むべきなのではないだろうか。一人では解決できない問題を一人で抱え込むことで状況を悪化させても本人にも周囲にも害があるだけなのだから。
(隔週金曜連載)
写真/2015年12月29日・第66回NHK紅白歌合戦記者会見
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