【三澤紗千香 インタビュー】
熟成された気持ちが
曲になって降ってきた
誰かの常識を覆す瞬間が楽しくて、
そのために日々研鑽を積んできた
もう1曲の「With You」も歌詞に《昔の夢》や《声》や《手》が出てきて、「I'm here」と通じるものを感じさせますね。
意外と「With You」も応援歌っぽいと思っています。作詞の柿沼雅美さんは片想いをしている女の子がウジウジ考えているところをイメージして書いたそうですけど、そのイメージを大切にしつつも、私の中ではタイトルの“You”はファンのみなさんのことや聴いてくれる方だと思って歌いました。Bメロで“心が不安になることもあったりするよね。でも、諦めちゃいけないよね”と歌っているところは、「I'm here」とも共通しているし。違うアプローチだけど似たような距離感というか、押しつけがましくなく、でもしっかり背中を押したり、手を引っ張っている。なぜかそういう2曲になったなって。
“なぜか”ですか?
“こういうコンセプトでシングルを作るぞ!”と思っていたわけじゃなかったので。でも、共通したキーワードがあったり、伝わるイメージが似ていて、すごく運命的な2曲だと思いました。
また、ジャケットやビジュアルは緑の中で撮影されていて新鮮でした。
前作は夕暮れ時の海で撮ったので、それとは感じを変えたいと思って。私は山梨県の出身で、自然の中で野山を駆け回り、動物と触れ合いながら育ったから、海よりも落ち着いて撮影ができましたね。MVは河口湖で撮影したんですけど、ストーリー性のあるものになっています。前作とも違うし、若作りも背伸びもしていない、等身大の三澤紗千香が出せたんじゃないかと思います。
そういうビジュアル面やMVのアイディアも三澤さんから?
いえ、ビジュアルやMVのことまでは考えが回ってなくて。こっちの勉強はまだあまりできていなかったので、“三澤はどこで撮ったらカッコ良いと思います?”って訊く感じで、マネージャーさんやスタッフさんに協力してもらいました。同世代の他のアーティストとも被りたくない…誰とも被りたくないし。明るすぎず暗すぎず、弾けすぎてない、でもそんなにさわやかさも損なわれていない、ちょうどいい三澤っぽさが出せているんじゃないかと思います。
今後はどんなアーティストになっていきたいですか?
人を驚かせるのが好きだし、天邪鬼なので、“声優はこうでしょ”と言われる斜め上を行きたいです。欲張りですけど、声優、シンガーソングライター、ラジオパーソナリティーなどなど、全部認めてもらえるようにちゃんとしたいですね。最近はYouTubeもやっているので、動画を観て面白いお姉さんだと思っていたら、“めっちゃいい曲を歌ってるじゃん!”とか、“アニメでこんな声出せるんだ!?”とか、誰かの常識を覆す瞬間はすごく楽しくて。そのために日々研鑽を積んできたところがあります。そういうマルチな声優さんを目指すきっかけになったのが坂本真綾さんなんです。中学の時に友達からCDを借りて、めっちゃいいアーティストなのに声優さんだというところにまず驚いたし、エッセイを書いたり、舞台に出たりもしてて、“えっ、意味分からん!”と思ったけど(笑)、いつしか私もそういうふうになりたいと思うようになりました。その夢が今、少しずつ叶えられています。諦めずにやり続けることは大切だなって、11年やってきた今だから、より強く思いますね。
取材:榑林史章