西片梨帆

西片梨帆

【西片梨帆 インタビュー】
連れ出してくれる人がいるだけで
人って変わる

独特の視点で書かれた歌詞が共感を呼ぶシンガーソングライターの西片梨帆が、9月23日にリリースされるミニアルバム『彼女がいなければ孤独だった』でメジャーデビューする。どことなく神秘的なイメージに包まれている彼女に、最新作についてはもちろん、各楽曲の背景など、自身を作ってきたものたちについて語ってもらった。

ファンの人がくれた言葉で
私も救われた

今回、メジャーデビューされるにあたって、西片さんのこれまでについてもいろいろとお話をうかがっていきたいのですが、まずどういったきっかけで音楽に目覚めたのでしょうか?

父も母も音楽好きで、特に母はキマグレンが好きだったんです。毎年、夏に逗子で行なわれているイベント『OTODAMA』にも連れて行ってもらっていました。そこにはスキマスイッチなどいろいろなアーティストが出ていて、“こういう世界もあるんだ!?”と知って。それで高校生の時にギターを始めたんです。

音楽以外にも小説やデザインなど、多彩なクリエイティブ活動を行なっていますよね?

はい。中学の時は小説がすごく好きで、土日は近くの図書館に行ってずっと入り浸っている生活を送っていました。デザインや映像に関しては、大学3年の時に夜間のデザイン学校に通ってて。デザインを学んでいくうちに映像も似たところがあってできるようになり、少しずつ音楽以外のクリエイティブに関して興味を持つようになったんです。父と母が音楽好きだったから、今は音楽をやっているんですけど、もし父と母が違うものを好きだったら、また別の世界にいるんじゃないかという感覚はずっとあって。自分の内側が表れているものであれば、その媒体は問わないという感じです。

今作には17歳から現在に至るまでの曲が収録されているそうですね。

“曲と私が一緒に生きている”という感覚は、たぶんファンの人にもあると思うんですよ。だから、昔の曲もいっぱい入れたかったんです。今回、昔の曲をもう一回レコーディングすることになってすごく恥ずかしかったんですが、そこは割り切って頑張りました(笑)。

“彼女がいなければ孤独だった”というタイトルには、どんな想いが込められているのでしょうか?

ワンマンライヴの時にいただいた手紙の中に“西片さんがいなければ、私は本当に孤独でした”という言葉があったんです。その時は何かに使おうとはまったく思っていなかったんですけど、ずっとそれを覚えていて。他にもいろいろな手紙をいただいてて、“電車の中で聴いています”とか、“〇〇で聴いています”と書かれていたんですね。だから、その場所に自分が行った時には、“ここで聴いてくれたんだな”と想いを馳せたりして。で、今回ミニアルバムを出すとなった時、この言葉がパッと浮かんで、絶対に“彼女がいなければ孤独だった”にしようと思いました。

制作はいかがでしたか?

制作は4月ぐらいから始まってたんですけど、こういうコロナの状況で、大学の友達はみんな就職しているので会えないし、家族にももちろん会えない。さらにライヴもできないから、ファンの方にも会えない。ひたすら制作と向き合わないといけない時間が長く続いて、正直言ってキツかった時もありました。もちろん嫌だったわけではないんです。でも、メジャーデビューで環境が変わり、初めて一緒にやる人たちばかりだったので、どうやって自分の考えを伝えたらいいのかと、ずっと悩んでいたんですよ。それでミニアルバムのタイトルを振り返った時に、私自身がその時すごく孤独だったから、ファンの人がくれた言葉で私も救われたと思って。だから、タイトルはファンの人たちに届けるという意味でもあるし、私がもらったものという意味でもあります。

歌詞はどのようなかたちで書かれますか?

感覚的に歌詞や曲を書くことが本当に多くて、2曲目の「リリー」以外は1時間ぐらいで書いた曲がほとんどですね。感情が振り切れた時にパッとギターを持って歌う感じです。歌詞もその場で書いて、次の日にちょっと見るけど、変なところ以外はあまり直さないようにして。1曲目「黒いエレキ」は17歳で何かを感じた時に書いた曲です。

「黒いエレキ」はライヴハウスに出ている上の世代のバンドマンについて書かれていますよね。いろいろな感情が含まれていると感じたのですが。

この曲はライヴハウスで歌い始めた時くらいに書いたんですけど、バンドとかやっている人たちって、そこら辺にいたら見かけはめちゃくちゃダメそうな人じゃないですか(笑)。でも、ステージに立った時に、人が変わったように輝く瞬間を見て。特定のモデルの人がいるわけではないんですけど、社会と自分を切り離して、ただ自分の半径30センチぐらいの世界を歌ってる人たちが、私にはとても美しく見えたんです。売れようとがむしゃらになっているわけでもなく、むしろそんなことはどうでもいいと思っているのが、ほんとにカッコ良いと思って。

確かに、周りに影響されない強さを感じます。

例えば、“あの人たちは新宿駅とかの大きな街頭ビジョンで流れているビルボードなどのランキングを見てどう思ってるんだろう? 自分は将来どっちになるんだろう?”と漠然と思ったんです。それは別に音楽だけでなく、会社に入ったとしても同じで。ただ自分がやりたいからやっている人と、“昇り詰めたい!”と思っている人とでは、考え方自体が違うじゃないですか。自分はやりたいことをやる人のほうがきれいに見えたけれど、大人になった時にどっちを選ぶのかなと思って。不安や憧れといったいろいろな気持ちが混ざって、この「黒いエレキ」を書いたのかなと、今になって思います。

恋愛の歌にとらえることもできるけれど、自分の生き方を貫く大人の男性にも刺さる歌詞だなと思いました。

表面的に見たら、どの曲も“女の子が男の子を好きで〜”みたいな感じになっていると思うんですけど、私はひとつひとつの曲についてこれくらい話せるくらいのストーリーを持っているつもりなんです。だから、そういうのを汲み取ってもらえた時は、すごく嬉しいですね。あと、私が持っていない解釈をしてくれるのも本当に嬉しいので、聴いてくれた人がどういうふうに思うのかは、とても気になります。

制作者側としては聴いてくれた人に想像を委ねたいから、制作の意図をどこまで言っていいのかは悩みどころですよね。

みんないろいろなことを分かりやすくしたいだろうから、テーマを1個に決めたほうが楽じゃないですか。でも、私の中には“分からないほうが楽しい”という想いがずっとあって。歌詞にはそんなに難しい言葉は使ってないので、解釈には聴いてくれた人自身が表れるんじゃないかと思います。

サウンドは淡々と語るような始まりから、感情が高まっていくサビにつながっていくのが印象的でした。

とにかくギターをRadioheadの「クリープ」みたいに歪みがすごい感じのものにしたくて。インディーズ時代にバラードっぽい感じのアレンジで作ったことがあったのですが、自分の中でもうちょっと激しさがあり、危うさが残っているサウンドがいいと思ってたんで、結構狭いスタジオでギターを録りながら“もっとうるさい感じで”ってずっとやってましたね。ギターの伏見 蛍さんは私の要望に対してすぐ対応できる方だったので、とても助かりました。
西片梨帆
アルバム『彼女がいなければ孤独だった』

OKMusic編集部

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