劇団Patchがカンテレとコラボプロジ
ェクトを始動、「音」と「記憶」の関
係がテーマの音楽朗読劇に挑戦 ーー
メンバーの「記憶を呼び起こす曲」と

関西を拠点に結成8周年を迎えた劇団Patch(パッチ/8ッチ)と、8チャンネルのテレビ局・カンテレがコラボレーションする音楽朗読劇『マインド・リマインド〜I am…〜』。8月8日に公演情報が発表されるなど、8づくしの「末広がり」で縁起が良さそうな同舞台。演出をつとめるのは、舞台『はい!丸尾不動産です。』シリーズなどの木村淳(カンテレ)。木村は劇団Patchの持ち味を十分に評価しつつ、一方で「いまだ覚醒せず」とまだまだ伸び代があるとコメント。ドラマ『LIAR GAME』で知られる古家和尚の脚本のもと、劇団Patchの潜在能力をこの舞台で引き出す。物語の題材は、音楽によって呼び起こされる記憶。恋人に疑惑をもつ男性が衝撃の事実にたどり着く様を、現実と空想を交錯させながら描く。SPICEではそんな同作をこれから密着取材。その第1弾として、劇団Patchのメンバーである中山義紘、井上拓哉、吉本考志、尾形大吾のインタビューをお届けする。
中山 義紘
――『マインド・リマインド〜I am…〜』は当初、3月に情報解禁予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大により始動が大幅にずれこみました。この新型コロナの自粛期間ですが、みなさんはどのように過ごしていらっしゃいましたか。
中山:Amazon Prime、Netflix、Huluなどでいろんな作品を観ていました。特にハマったのが『Nizi Project』ですね。盛り上がっているものはちゃんとチェックしておきたくて観たのですが、めっちゃ泣いちゃいました。僕らも劇団Patchにはオーディションで入ったし、今も作品に出演するためのオーディションを受けているので、刺激的な内容でした。
井上:僕は、トランペットを毎日練習していました。でも部屋で演奏すると近所迷惑になるから、実家の近くにある誰も来ない森の中で吹いていました。
尾形・吉本:え、森の中!?
中山:そういうことをやっている人はパズー(『天空の城のラピュタ』)くらいしか知らんで。
井上:森の中なら誰の目も気にしなくて済むし、そこで音階やロングトーンなど初歩的なことを練習していました。『ルパン三世』や『情熱大陸』のテーマ曲を吹けるようになりたくて。
尾形:僕はゲームが好きで、どちらかというと普段からインドアなタイプ。自粛期間中は、過ごしやすい部屋を作るために、オンラインショップを使っていろいろリニューアルしていました。ベッドもシングルからセミダブルに変えた。寝返りも2回転くらいゴロゴロできて快適です(笑)。あと2メートルくらいの観葉植物も買いました。
尾形 大吾
――確かに部屋の雰囲気が変わると気持ち良く生活できますよね。
尾形:何をするにも楽しいです。食事のときも、普通のお皿ではなく木製のまな板みたいな器に乗せて、料理にはバジルをまぶしたり。あと絵も描いていました。自分に見立てた木に、ゲームのコントローラーやラーメンなど好きなものが実としてなっているという。僕自身が何で形成されているかを表した絵なんですけど、自粛期間中はそうやって自分を見つめ直す期間にもなりました。
吉本:僕は、あらためて収入について考えるようになりました。僕らは舞台がなくなりましたし、世の中でも多くの人の収入が落ちてしまった。生きていくためにどうしようか、と誰もがなっていたはず。
吉本 考志
――とてもリアルな話ですね。
吉本:もし今の仕事が立ちいかなくなったとき、他に何かできなきゃいけない。僕はそこで動画編集を勉強しようと思いました。YouTubeで動画編集のコツを教えているチャンネルを観ながら、まず自分で1本、丸二日かけて完成させて、8月に自作動画の毎日投稿をし始めました。途中で挫折してやめてしまうんじゃないかと思ったけど、「今日やめると昨日の自分に申し訳ない」「みんなの前でやると宣言したから」という気持ちで続けていました。自粛期間中にやろうとしたことが、8月に実行に移せました。収入のことについて考えて始めた動画編集ですが、結果的にはそれ以上に良い経験が得られましたね。
井上 拓哉
――そして満を辞して『マインド・リマインド〜I am…〜』が始動するわけですが、内容は、音楽を聴くと眠っていた記憶が呼び起こされるというお話。ちなみに『パーソナル・ソング』(2014)というドキュメンタリー映画で映されているのですが、認知症、アルツハイマー病の方に思い出の曲を聴かせると記憶がよみがえることがあるそうなんです。
中山:実際にそんなことがあるんですね! もともとプルースト現象という、ある特定の香りから、それにまつわる記憶が呼び起こされる現象があって、それを音楽に置き換えているんです。今でいうと、瑛人さんの楽曲「香水」で歌われているドルチェ&ガッバーナのようなものですよね。あの曲はまさにプルースト現象について歌ったもの。
――ちなみにみなさんは、「この音楽を聴くと、あのときの記憶がよみがえる」という楽曲はありますか。
中山:僕はMr.Childrenさんの「渇いたKISS」(2002)が思い出に残っています。これって相手に未練タラタラの人の曲だと思うんです。僕も昔、好きな人にフラれてしまったとき、この曲を聴いていたんです。「こんなに自分のことを分かってくれる人がいるなんて」と曲に自分を重ねていました(笑)。今も聴いたら思い出しますね。
井上:自分は、GReeeeNさんの「キセキ」(2008)です。一歳上の友だちを中学時代に亡くしたことがあって、お葬式の最後でその曲が流れていたんです。お兄ちゃんのような存在で、「今も生きていたらな」と考えることがあります。今は思い出として話せるけど、当時は曲を聴くだけでグッときていましたね。大ヒット曲なので、それこそスーパーでも流れるじゃないですか。僕、買い物しながら泣きそうになりましたもん。今は聴くと勇気付けられる。「俺も頑張ろう」という気持ちになります。
尾形:僕はAqua Timezさんの「決意の朝に」(2006)です。中学、高校の受験期に、勉強に専念するためにゲームなどいろんな遊び道具を取り上げられたんです。趣味がなくなってしまって、辛くて仕方がありませんでした。習字の紙に「辛い、辛い」と書き連ねていました。ちょうどそのとき、「決意の朝に」をよく聴いていて。<辛い時 辛いと言えたらいいのになぁ>のところでめっちゃ泣けてきた。
中山:みんな、曲を聴いて泣きすぎやろ(笑)。
尾形:それで受験が終わったから「やっと漫画が読める」と思ったら、なくなっていたんです。親に「どこにやったの」と聞いたら、「古本屋さんに売った」と言われて。そのときまたAqua Timezさんを聴きましたね。
井上:ちょっと、それネタでしょ!
劇団Patch
吉本:ハハハ(笑)。僕は湘南乃風の「恋時雨」(2008)。高校1年生のときに好きな人がいたんですけど、そのコが「恋時雨」がすごく好きで、僕も「良い曲だな」と思っていたんです。ある日、そのコと夏祭りに行く約束をしていたんですけど、突然「元カレが忘れられない」と言い出して、待ち合わせに来なかったんです。電話をかけてもブツッと切られて。かけ直したら、着メロでずっと「恋時雨」の<サヨナラ愛しき人>というフレーズが流れていて……。何度かけても<サヨナラ愛しき人>の部分がリピートされるんです。
尾形:そこで答えを言われてるやん!
吉本:悲しくなるどころか、逆におもしろくなってきて。
尾形:そういえばこの前、一緒にカラオケ行ったときも「恋時雨」を歌っていたね!
吉本:今では自分の持ち歌みたいになっている(笑)。
劇団Patch
――音楽はやっぱりいろんなことを思い出させてくれますよね。今回は、先述したように音楽の記憶を題材にした音楽朗読劇。劇団Patchは肉体的な芝居が特徴的なので、そういう意味では新しい表現を見ることができそうですね。
中山:まだ稽古が本格的に始まっていないので、どうなるのか想像がつきませんが、朗読劇なのでおそらく本を手に持ちながら芝居をすることになるのかな。劇中で流れる楽曲によって、物語の世界観が増幅されるイメージを持っています。
尾形:僕は、本を読みながら演じることが苦手なタイプなんです。読みながらだと、そっちに集中しちゃって、演技として感情がなかなか入らない。そのあたりをどうするかが自分の課題です。
井上:でも朗読劇って、舞台ならではの表現ですよね。それに個々で体を動かしながら表現もできると思う。
吉本:朗読劇は劇団Patchとしては初めのチャレンジ。どういう演出をつけていただけるのか、すごく楽しみです。今までのPatchとは違った演技になる気がします。一方で芝居の根本は変わらないはず。作品と真摯に向き合っていきたいです。
劇団Patch
取材・文=田辺ユウキ 撮影=福家信哉

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