ラブリーサマーちゃん

ラブリーサマーちゃん

【ラブリーサマーちゃん
インタビュー】
曲を作ることは私にとって自浄作用

聴いてくれている人の言動とかに
毎回励まされている

どうやって楽曲制作のモチベーションを上げていくのかが興味深いところなので、このインタビューではその辺も探ってみたいところです。と言いますのは、今作にはセルフライナーノーツが同梱されていますが、「サンタクロースにお願い」の解説で“どうせ私は恋も家族愛も無いクリスマスを過ごすのだろうと思うと無性に反発したくなり、“恋愛か家族が主題のありきたりなクリスマスソングなんて絶対に書いてやるものか”という謎の闘志めいた感情が湧き上がった”とあって。これはとても面白いと思ったんですけど、曲作りにおいてはこういうモチーフもあるわけですか?

「サンタクロースにお願い」は少し特殊で(笑)。そのライナーノーツの前後にも書かせてもらったんですけど、今まで一回もクリスマスソングを作ったことがなかったので、どんな曲にしようかと考えていたんです。それで、“クリスマスソングってどんなことが歌われてますかね?”とサポートドラマーの吉澤 響さんに相談をしたら、“家族モノとか恋愛モノじゃないの?”って話になって。私、その時は家族とクリスマスを一緒に楽しもうという気持ちもなかったし、恋愛からも離れていたから“私は独りだ”と思っていて(苦笑)。そうやってクリスマスを過ごしている人たちが羨ましくて、なぜか反骨精神が出てきちゃいました(笑)。ただ、クリスマスソングをシングル配信することが決まっていたのでそういう闘志が湧いてきただけで、普段は曲を書く時に“誰かに歯向かおう!”とか、“こんな曲は書かない!”とか、そういったことは決めてないです。

まずモチーフとしてクリスマスがあって、今自分が置かれている状況でクリスマスソングを作るとなると、こういう闘志剥き出しの内容もありだと思ったわけですね(笑)。

あははは。まぁ、今回入っている曲の中で「サンタクロースにお願い」はたまたまそう思ったということです。

でも、そこがロックでカッコ良いと思いましたよ。

えーっ!(笑) 他の曲は全然そんなことはなく素直に書いているので、そう言ってもらうのは申し訳ないんですけど。

“他の曲は全然そんなことはなくて”とおっしゃられましたが、1曲目「AH!」や2曲目「More Light」もわりと世間に対して物申しているタイプだと思いますし、この辺からもロックを感じましたよ。

確かに構造に対して“嫌だな”と思っている面はありますし、それは今までロックがやってきたエッセンスのひとつであるとは思います。

その世間に対する物言いとガツンとしたバンドサウンドがマッチして、オープニングの1~2曲目はとてもカッコ良いと思います。しかも、「More Light」はダンサブルじゃないですか。こういう歌詞の内容で踊らせてしまうのもすごくいいです。

何かチクリと言いたくなる時は普通に言っても誰も聞いてくれないし、“こういうの嫌なんだよね”って言う時って、なるべくやさしい言い方をしたりとか、ユーモアを挟んだりとか、そういう工夫をするほうが好きなので、しんみり歌うというよりもカラッと面白く、楽しい感じに歌いたかったんです。

世間に対して正論を述べるにしても、そこにユーモアがないようなことはしたくないといった感じでしょうか?

私はユーモアを挟んじゃったり、ふざけちゃったり、言いたいことの他に何らかの要素を加えて言うことがデフォルトになってますね。そうじゃなく、ただ気持ちを言うだけで、他に何も思惑がない人もすごくカッコ良いと思いますが。

でも、私はそこがいいと思うんです。で、もう少し突っ込んで収録曲を見ていくと、3曲目「心ない人」と8曲目「アトレーユ」はそれぞれタイプは異なるものの、“どっちつかず”と言うと語弊があるでしょうけど、“そういうふうに進んでいくのも止むなし”といった内容であると思いますし、その辺は「AH!」「More Light」にも通底していると感じます。物事をはっきりと言うことが決して全てではないと言いますか。“白黒つけることが全てじゃない”という考え方をお持ちですよね?

すごくありますね。「More Light」もそういう曲だし。“正しい/正しくない”のグラデーションの中で生きてていいんじゃないかと思います。

今言われた“グラデーションの中”であることを認めつつも、しっかりと前向きであるところが、このアルバムのいいところではないかと思います。5曲目「豆台風」や6曲目「LSC2000」、もしかすると7曲目「ミレニアム」もそうかもしれませんが、この辺りの楽曲には“それでも進んでいかなくちゃいけない”といったところがありますよね?

ありますね、すごく。ほんとその通りで、そういう感じで音楽を作りたいと思ってます。やっぱり曲を作ることは私にとって自浄作用なので、“嫌だな”と思った気持ちを曲にして歌うことですっきりしたいんですよ。そのすっきりの仕方もいろいろあると思ってて、私はそれが必ずしも前向きじゃなくていいと思っているんです。Radioheadのトム・ヨークが“なぜあなたの曲はそんなに暗い歌詞ばかりなの? そんなことを歌っていたら自分自身が落ち込まないの?”と訊かれた時に、“マイナスの感情を歌詞にすること自体がとてもポジティブな行ないなんだ”と言っていたんですね。その気持ちがすごく分かるんです。悲しいことを悲しいままで書くこと…人って愚痴をこぼすだけですっきりしたりするじゃないですか。自分の内側にあった見えないものを文字で読めるように可視化するだけでデトックスになるので、歌詞はポジティブじゃなくてもいいと思うんです。でも、私は何となく自分に言い聞かせる…自分自身をなだめるために、光の方向を向いているような歌詞にしちゃいがちですね。それか…落ち込んでいる時って曲がまったく作れないので、落ち込んでいるところからちょっと糸口を見つけ出して回復してきた時とか、自分の中のモヤモヤした感情にちょっと決着が着き始めてきたタイミングで歌詞を書いたりすることが多いんですよ。そういう精神状態なので、モヤモヤしていても自然と前向きになるのかなと思いますね。

OKMusic編集部

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