BIMとcero・高城晶平による“2020年
、東京のリアル”を描き出すタフなパ
ーティーチューン【SPICE×SONAR TR
AXコラムvol.15】

PUNPEEらが所属し、日本のヒップホップシーンにおいて独立した立ち位置を築き上げている音楽レーベル、SUMMIT。そんなSUMMITの若頭的存在であり、こんなことを言ったら本人は照れくさいと首を横に振るかもしれないが、なんというか、彼、BIMというラッパーは、かなり愛され上手である。たとえばそれは、去る8月28日にリリースされたばかりの彼の2ndアルバム『Boston Bag』にも顕著に表れている。本作には10代でデビューし、27歳になった“今のBIM”だからこそ集められた多種多様な客演/プロデューサー陣が顔をそろえている。今回ピックアップする「Tokyo Motion」でマイクを持っているceroの高城晶平を筆頭に、STUTSKEIJUKANDYTOWN)、G.RINAkZm(YENTOWN)、初のバンドとのコラボレーションとなったNo Busesなど、今のBIMのオープンマインドなクリエイティビティを分かち合うアーティストたちとの音楽的な交歓こそが、過去最高のポピュラリティを獲得している本作の様相をよりドラマティックにもしている。
少し彼のキャリアを振り返ろう。BIMがラッパーとしてのキャリアをスタートさせたのは、2011年。彼が結成したTHE OTOGIBANASHI’ Sの音楽性と、その兄弟関係にあたる総合的なクリエイティブチームであるCreativeDrugStoreが提示するプロダクトの洗練され、先鋭的でもありながら、心地よい弛緩性に満ちたセンス──そこにはヴェイパーウェイブにも近似するノスタルジアやサイケデリアが浮遊する──は、耳の早いリスナーからファッションシーンまで幅広い層の注目を集めていた。しかし、当時のBIM自身はどこかヒップホップシーンに居場所がないような孤独感や他の同世代のラッパー(それこそ今や盟友であるkZmやKID FRESINOなど)に対してある種のコンプレックスも覚えていたという。端から見れば順風満帆なキャリアを歩んでいるように見えたがしかし、当の本人にはラッパーとして向き合い、解消しなければならないいくつかのイシューを抱えていたのだろう。
そして、2017年にBIMはソロラッパーとして始動。2018年7月リリースの1stアルバム『The Beam』は全16トラックというフルボリュームのサイズを誇り、これまで明確に描いていなかった自らのラッパー像をさまざまな角度から活写するような熱量にあふれていた。『The Beam』がその“ラッパー像”に迫った作品だとすれば、BIMその人のパーソナリティ=“実像”をよりメロディアスに、より開かれた音楽像をもって映し出し、今作『Boston Bag』への大きな橋渡し役にもなったのが今年2月に配信リリースしたミニアルバム『NOT BUSY』だった。
あらためて、『Boston Bag』の全体像は非常に風通しがよく、これだけの客演やプロデューサー陣が参加している一方で、BIMがかつてないほどニュートラルな状態で楽曲制作に臨んだであろうことがフロウのアプローチやリリックの端々からもよく伝わってくる。オープニングからじつに小気味よく刺激的だ。in-d、VaVa、JUBEEというCreativeDrugStoreが集結し、また『NOT BUSY』では全曲プロデュースを担い、今やBIMの作品には欠かせない存在であるラスカル(ドイツ人のビートメイカーで、これまでチャンス・ザ・ラッパーやジョルジャ・スミスのプロデュースを手がけた経験があり、またBIMの代表曲の一つである「BUDDY feat. PUNPEE」や星野源の「さらしもの(feat. PUNPEE)」も彼のビートである)による「Get Gas(Hey You Guys)」のブーンバップ的なアプローチで幕を開け、バンドサウンドとともにスリリングにラップを疾走させる「Non Fiction feat. No Buses」までの全11曲、過不足なく濃密な聴き応えがある。「Non Fiction」のみならず生感の強いトラックが数多く並んでいるのも印象的でもある。それらのトラックは今後のライブでバンドアレンジに変換することも想像できる。あまつさえ、やはりフロウにおいても、フックのメロディにおいてもポップネスの強度が一層高まっている。
そして、本作のポップサイドにおけるハイライトと言っていいのが、STUTSプロデュースのM8「Tokyo Motion feat. 高城晶平」だ。フックの〈抜け出せこんなコロナ禍な世の中も〉というラインが象徴的だが、ディスコティックで性急なビートの上で、BIMのラップと高城のボーカルは、まるでパラレルワールドの終末世界であるかのような“2020年、東京のリアル”を描出しながら、そのうえでどこまでもタフに今このときを謳歌しようとするパーティーチューンを創出している。この曲の強靭な存在感と態度が、『Boston Bag』の背骨を力強く支えているようにも思う。1曲1曲を、ぜひじっくり堪能してほしい。
文=三宅正一
Tokyo Motion feat. 高城晶平 ["Bye Bye, BLITZ" YouTube Live] (Mastered Audio ver.)

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