L→R 陽哉(Dr)、ryuto(Support Ba)、泰輝(Vo&Gu)、茅津(Gu)

L→R 陽哉(Dr)、ryuto(Support Ba)、泰輝(Vo&Gu)、茅津(Gu)

【Bye-Bye-Handの方程式
インタビュー】
苦しい時間すらも愛おしいと
思えるようになった自分がいる

一回成功したものにすがりたくない
っていう気持ちがある

『No Big Deal Records Audition 2020』はみなさんにとってどんな経験になりましたか?

泰輝
何回もいろんなオーディションに出まくっていて、負け慣れじゃないですけど、“俺たちは大会に出ても勝てないバンドなんだ”ってちょっと投げやりになってた部分もあったんです。このオーディションの前にもう一個別の大会に出て、出し切った感じもあったけど、その上で結果が出なかったから、最後に応募していたNo Big Deal Recordsでも同じことをして負けるくらいだったら挑戦をしたいって思って。今までは2曲しかできない持ち時間の中で自分たちの50~60パーセントを観せられればいいって気持ちでやってたんですけど、このオーディションでは0か100か、“また観たい”って思わせられることをしようって考えた時に、同じ曲を2回やろうって思いついたんです。

かなり思い切りましたね!

泰輝
“僕たちは2曲では表せられません! 10分間で今までの5年間を詰め込むなんて無理でしょう!”っていう、半ギレみたいな状態で(笑)。最初はお客さんを入れてやる予定だったので、“俺たちはお客さんあってのバンドだからお客さんに向けてやっているんだ”っていう気持ちで、お客さんが大笑いしてくれたらいいって気持ちだったんです。でも、直前に客入れができなくなったって聞いて、これはヤバいなと(笑)。
茅津
お客さんに向けてやるつもりが、審査員の前で同じ曲を2回やるのかって(笑)。
泰輝
そうそう。でも、これはチャンスでもあると思って。お客さんが入らないことによって自分たちをアピールするのが難しくなったんですけど、“大人しか観ていない状況の人生を懸けた大会で、そんな博打なことできるか?”ってところに賭けてみようと。審査員の方に向けてというより、やっぱり“今日来れなかったお客さんのために”っていう意気込みでやろうと決めたんです。

実際にやってみてどうでしたか?

泰輝
2回やっても反応はないし、手応えなんて全然なくて。自分たち的には面白かったし、やり切ったので、“まぁ、東京も来れたし”みたいな(笑)。でも、あとからスタッフの方には“あの曲はもう知ってるから違う曲が聴きたかったんだよ! 面白いね!”って言われて、そう思ってくれたのが嬉しかったし、初めて“ここのレーベルに入りたい”と思ったんです。渋谷から帰る時にみんなで“No Big Deal Recordsに入りたいよなぁ”って話したのは、バンドを5年間やってて忘れないシーンとしてありますね。

そんな流れでNo Big Deal Recordsからの一作目となる『Flowers』がリリースされるわけですが、肇さんが参加する最後の作品であり、バンドとしても5周年を経て一作目ということで。収録曲全てを新曲にしたのにはどんな想いがあったんですか?

茅津
自然とそうなったというか、結成時の話にもつながりますけど、とにかく泰輝の曲を作るペースがすごく早くて、この中にも入りきらなかった新曲がたくさんあるんですよ。
泰輝
いつも既存曲を入れようって思うんですけど、結局は新曲があるんやったらそっちを入れようってなっちゃうんですよね。一回成功したものにすがりたくないっていう気持ちがあるし、自分たちはまだ最強の一曲みたいなものを出してないので、この5年間の集大成みたいな曲はまだ作れていない。高校生の時にいい曲ができて、みんなにも褒めてもらった時に次に求められるのが“あの曲みたいな”とか“あの曲以上の”とか。そう言われるようになった時、高校生ながらすごく苦しい想いをして、そのジレンマで曲が作れなくなったことがあったんです。だから、一回“この曲いいね”って言われたら過去のものにするというか、絶対にすがらないっていう精神でやってます。常に2個3個先を見て作品を作っているので、『Flowers』は全部新曲やけど、ずっと温めてきたものを収録しています。

何か全体的なイメージはあったんですか?

泰輝
どの曲も作ったタイミングがバラバラだから統一感がない7曲なんですけど、だからこそ、その時々の気持ちが詰まっていて、なおかつ楽しかった時間を書いたものがほとんどなんです。終わってしまった恋を歌っているけれど、美しかった瞬間を切り取った曲ばかりで。例えば花は枯れてしまうし、花火は消えちゃうから、儚さがあってこそ美しく見えるというか。枯れてしまうから、消えてしまうから美しいっていうのをずっと感じていたので、そう思った時に出てきたタイトルが“Flowers”なんですよ。

なるほど。

泰輝
これまではちょっと意味深なタイトルを付けていたんですけど、今作は誰にとってもゼロ地点としてスッと入れるものにしたかったんです。その分、今までで考えるのが一番難しかったんですけど、“Flowers”って出てきた時はそれっぽいなと。肇にとって最後の作品でもあるから花束贈呈じゃないけど、そういうめでたい感じもあるし。あと、僕らが高1の時に初めて作った音源が「FlowerDance」って曲だったので、今までのことも切り取っていていいかなと。
茅津
“Flowers”だとひとつじゃないってことなので、いろんな意味での“Flower”があるっていう感じが、アルバムっぽいタイトルですごくいいと思ってます。

2019年2月にリリースされた「湿恋」を聴いた時は女々しいというか、後ろ髪を引かれるような想いを綴っている印象があったんですけど、今作では自分の中にある愛情だったり、喪失感を受け止めているイメージがありました。

泰輝
「湿恋」は恋愛をしても全然うまくいかないっていうのを繰り返してた時期に作った曲なんですけど、そういう苦しい時期を超えたアルバムでもあって、苦しい時間すらも愛おしいって思えるようになった自分がいます。音楽をやってると、つらい時期も曲にできたら良かったと思えるし、それって素敵なことだと感じるんですよね。アルバムで言いたいことの全体を占めているのは「ラブユー・シーユー」だと思ってるんですけど、ただ“頑張れ!”っていう曲じゃなくて、悲しいことすらも美しいっていう意味で、悲しい部分のこともしっかり描写しているというか。この曲をはじめ、全てを踏まえて美しいってことがアルバムを通して書きたかったことです。

OKMusic編集部

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