須田景凪「Carol」賛美歌のような温もりを持つ歌詞の魅力に迫る!

須田景凪「Carol」賛美歌のような温もりを持つ歌詞の魅力に迫る!

須田景凪「Carol」賛美歌のような温
もりを持つ歌詞の魅力に迫る!

幼い頃の原体験を基に作られた楽曲

▲Carol
ボカロPバルーンとしての活動を経て、今では若者から絶大な人気を誇る須田景凪
彼が「NHKみんなのうた」のために書き下ろした『Carol』は、幼い頃の原体験を基に様々な気持ちや思い出を美しいと肯定する賛美歌のようなイメージで作り上げられた楽曲です。
Carol 歌詞 「須田景凪」
https://utaten.com/lyric/mi20070613
描かれる情景から温かみを感じることのできる楽曲は、夕暮れの帰り道から始まります。
サウンドの主体となるピアノと優しさに溢れたメロディから紡がれる歌詞はどこか懐かしさを感じさせます。
シンプルながらも的確に情感を表した言葉からは、情景を表現する言葉を持たない幼少期の記憶が思い起こされるようです。
街並みは覚えていなくても「騒がしい」と感じたことは覚えていたり、夕日の美しさを語る術がなく「すべてを染め上げる」ように見えた。
歌詞を読み進めていけば、その記憶はさらに鮮明になっていくでしょう。
情感に溢れる優しさを持った言葉の数々
Carol 歌詞 「須田景凪」
https://utaten.com/lyric/mi20070613
端的に情感を描く歌詞は続きます。
この楽曲の歌詞は誰もが想像できる普遍的な描写に優れています。
記憶を持っていなくとも「風が連れ去る花びら」と聞けば、暖かい風が吹き優しい色をした花弁が宙を漂うのを想像できるでしょう。
「日々の哀楽」も「灯っていく」と表現されれば、それが激しさを持った感情ではなく、繰り返しの日々での大切な要素だという感覚を持つことができます。
このような歌詞中に散りばめられた「誰もがなんとなく美しいと思える描写」に「名前はいらない」と言っているのではないでしょうか。
小難しい言葉で表現できることが偉いわけではなく、ただその感覚を持ち合わせているだけでいい。
そんな思いが込められているように思えます。
自分を肯定してくれる慈愛に満ちた存在とは
Carol 歌詞 「須田景凪」
https://utaten.com/lyric/mi20070613
この楽曲は須田自身の幼少体験を基にしていると書きました。
それを踏まえると、ここで登場する「あなた」は母親のことを指しているように思えます。
一人では何もできない幼い自分の隣には、いつも母親がいたはずです。
生まれてから最初に受け取る母からの愛情を思い出し、それを「幸せ」と歌っていると考えられます。
また、教会で歌われる賛美歌を意味する曲名の『Carol』も母からの慈愛を感じさせる単語です。
賛美歌と聞いても宗教的な意味ではなく、天使や母なる女神が舞い降りてくるようなイメージを抱いている人も多いのではないでしょうか。
このような西洋文化に基づく言葉は、正しい意味よりも雰囲気やイメージが先行する場合が多いように思えます。

Carol 歌詞 「須田景凪」
https://utaten.com/lyric/mi20070613
しかし、このフレーズを見ると「あなた」の未来を見据えているような言葉が含まれており「あなた」は、母親ではないように思えます。
確かに慈愛を感じますが、後半部分は過去の肯定を表しており子供から母親への言葉には見えません。
このことから「あなた」は私たち自身のことで、この歌詞全体が母親の言葉だと考えられます。
「上手に笑えず」「ぎこちない声」「形にならない心」その全てを肯定してくれるのは、自分自身ではなく母親でしょう。
つまり、この楽曲は成長を見守ってきた母親が様々な思い出を肯定してくれる賛美歌だということです。
成長し大人になるにつれて、自分を肯定してくれる存在は少なくなっていきます。
人によっては自分自身を肯定することを忘れてしまった人もいるのではないでしょうか。
そんな人は、ぜひ須田景凪『Carol』を聴いて慈愛の心を思い出してみてください。
きっと自分も他者も肯定できるようになるはずです。

TEXT 富本A吉

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