みんなで作り上げた夏の思い出! 車
で楽しむ音楽フェス「ドライブインフ
ェス」体験レポート

2020年の特別な夏の思い出……新時代のフェス体験をDJとして参加したTJOがレポート!

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コロナ渦におけるニューノーマル時代の
フェスとは?

正直、想像以上だった。
この状況下にあって、ここまで能動的にみんなが自らの「楽しい」を見つけて作り出すフェスになるとは思わなかったから。でも、この状況だからこそ、それぞれ抱えていたエネルギーが一気に放出された結果だったのかもしれない。一出演者として、一参加者として帰宅後にはやり切った感、充実感に満ち溢れ、今この原稿を書いている2日後も実はまだ筋肉痛や余韻に浸っているところだ。

コロナ渦におけるニューノーマル時代のフェスの在り方として、車で楽しむ新しい音楽イベント「ドライブインフェス」が2020年8月22(土)、23日(日)に開催された。初日22日(土)はglo x block.fmのヴァーチャルドライブインフェスとして招待限定と配信を中心に開催。僕が出演したのは一般参加日の23日。場所は都内から車で1時間ちょっとという好アクセスの千葉・ロングウッド・ステーション。昔はアウトレットだったであろう広大な駐車場スペースを舞台に、車が約150台集まった。Vol.1と銘打ってはいるが「ドライブインフェス」の開催は、実は今回が2回目。6月に栃木県は岩船山の採石場跡地でテスト開催となるVol.0が行われ、その様子をSNSやアフタームービーなどで見てとても気になっていた。
テスト開催時から感染対策はしっかりされていて、スタッフはフェイスシールドを装着。来場者や出演者である僕らにも検温を徹底して行う。さらに、トイレの利用も専用のLINEアカウントで混雑状況の報告や予約などが行えるよう、徹底して人の接触や密を避けるよう安全に配慮していた。今の状況において基本をしっかりと守りながらもそれだけでは終わらない細かい配慮に、主催者側のイベントを楽しんでもらおうという心意気を感じた。

当日は、前述のLINE公式アカウントでフェス参加者限定で会場に行くまでも楽しめるよう初日の出演者であるDJ YonYonによる「ROAD TO DRIVE IN FES」なる公式プレイリストが送られ、出発した瞬間からフェスへの期待が膨らまずにはいられない演出が。そして、会場内ではフェスの醍醐味の一つとも言える「フェス飯」も充実し、ステーキ丼から様々なカレーライス、キューバサンドにフレンチフライ、地元千葉のご当地ラーメンやドリンクなど種類も豊富に取り揃えてくれていたのも嬉しいところ。これも注文は屋台まで行かずに車内からLINEを通じて注文可能。しかも、ローラースケートを履いたスタッフが車まで届けてくれるというエンタメ精神に溢れた方法で配達してくれる。
個人的に面白いなと思ったのはグッズで、車イベントだからこそ車内のミラーにかけられるミラーボール型の芳香剤があったり、主催のアフロマンスから教えてもらったのがこの日のために作られたパンフレット。通常のフェスであれば持ち運びの利便性に合わせて首にかけられたり、ポケットに入れられたりするサイズで小さめに作られるものだが、車で来ているということで今回のフェスの可愛らしいキービジュアルを表紙になんとあえてポスターサイズで作成し配布したそう。そして、フェスに付き物のフォトブースもいつも以上のサイズのパネルを用意し、なんと車のまま乗り込んで撮影できるというアイデアまで、いつもと違う状況だからこそ出来る遊びも忘れないのが楽しい。さらに、この日のチケットは売り切れのため、当日はLINE LIVEで生配信も行われ、会場に来れなかった人達にもフェスの疑似体験をさせてくれた。

この日の天気は、ここ最近で一番の雨量を記録するかもしれない大雨予報が出ていたので心して現場に向かった。朝の道中は台風ばりの激しい雨に見舞われながらも現地に到着。リハーサルを済ませ会場の様子を見ていると16時の開場からどんどん車がやってきて、最前列から並んで行く。その様子を見ながらアフロマンスとMCあまりが「来場して来るみんなが今日は楽しもうという空気がバンバン伝わってくる」と言っていたのが印象的だった。そんな想いが届いたのか、危うかった天気はすっかり晴れ上がり、MCあまりによるアナウンスで18時にスタート!

まずはこの日唯一のライブアクトKan Sanoによるピアノ演奏ライヴ。キーボードを持ち込んでの生歌ライヴは、雨がすっかり上がって澄んだ空気の涼しい空間の中で心地良く鳴り、美しく照らす夕焼けを背景にイベント開始から極上な時間を堪能させてくれた。
続いては、僕TJOによるDJ。この日のセットはどんなものにしようか、いろんなジャンルを用意しながらも正直悩んでいたが、ラインナップ的にも様々なシーンで活躍するバラエティに富んだメンツが集まっていたので、これは1組ずつ違った楽しみ方を提供するのも面白いと思い、若い世代の来場者も多かったので「あの頃の夏フェスの補完」をテーマに今年野外であまり体感できなかったであろう思い切りの良いフェスセットを披露することにした。時間的にもちょうど夕焼けが沈み、辺りはすっかり暗くなっていたのでVol.0 のアフタームービーで見ていた照明などの演出も映える時間になっただろうと言う読みも当たって、空までも照らす特殊照明や炎の放射など、普通のフェスに全然負けない演出が僕のフェスセットと相乗効果を生むことが出来た。周辺が暗いこともあってブースからは大きな照明が消えるとフロアが全く見えないのだが、それでも曲の静かな部分で聞こえてくるお客さんの歓声に忘れていた感覚が急に呼び出され思わず鳥肌が立った。
途中、曲の合間の無音部分でフロアに「Make Some Noise!」とマイクで煽る。歓声が返って来るのを期待していたら、歓声をさらに上回る音量で鳴り響いたのが車のクラクション。これには思わず僕もビックリ! 過去に海外の車フェスでDJのマイクパフォーマンスに合わせて一斉に会場の車がクラクションを鳴らすのを見て「これは面白そうだ」と思っていたのをすっかり忘れていて、これが噂のやつだ! これは良いアイデアだと思い、ラストにアンセム、Avicii(アヴィーチー)“Waiting For Love (Carnage & Headhunterz Remix)”を投下。無音部分でフロアに向かってマイクで思いきり煽るとみんながクラクションでコール&レスポンス。今年に入って忘れていた野外フェスでの一体感を思い出させてくれて素直に感動した。この日のお客さんは配られていたライト棒を振り回したり、クラクションはもちろんハザードランプを用いたコール&レスポンスまでやってくれて車だからこその楽しみ方を彼ら自身も積極的に見つけて楽しんでいたように思えた。

自分の出番が終わり80KIDZはハウスを軸に自身の楽曲からDisclosure(ディスクロージャー)の“My High”、フレンチハウスのCassius(カシアス)名曲“Cassius 1999”など最新曲からクラシックまでをグルーヴィーに織り交ぜて攻めていた。続くokadadaはイントロからいきなりラジオ番組やCMのジングルのマッシュアップされた音源をプレイ。突然のサプライズ演出にブース裏で聴いていた僕は思わず驚いたが、今回のイベントはステージに設置されたスピーカーだけでなく、来場者の車にFM電波として飛ばし車内でも聴ける仕様になっていたので、車のカーステから謎のラジオの混線が聴こえて来るというシチュエーションも組み込んだ粋なイントロに思わず笑いながら拍手を送った。そして、フェスセット〜ハウスの流れに緩急を与えるためヒップホップやレゲエで気持ち良く会場を揺らしていた。
途中、ブースからだけでなく観客側から実際に車に乗り込んでフェスを体感した。窓を開ければ会場のスピーカーからの出音ももちろん聴こえるが、FM電波のサウンドもしっかりと車内に響く。この日はおよそ100台以上の車が右隣に1台分のスペースを空けて駐車。マスク着用であればそのスペースに出て楽しんでも良いというルールもあり、外を見るとLED搭載で車内をクラブ化させて楽しむ人、外に出てノリノリでダンスする人、チェアやデスクを出して食事を楽しみにながら音楽に揺れる人、さらにはBBQを楽しむ人、、車の上に乗り出してノリノリになる人も。みんながしっかりとルールを守った上で自由に楽しみ方を見つけている姿が見ていて嬉しくて、一つずつ焼きついた。なかには赤ちゃんを連れて家族で来ている友人もいて、疲れたら座っていられるし、冷房の効いた車内で休みながら音が楽しめ、それこそ子供が疲れたらFMの音を下げて静かにしたり、オムツ替えも車中でそのままできるなど、これまた車だからこその快適さも同時に体感できるんだなと感心してしまった。

イベントも終盤、続くDÉ DÉ MOUSEは前回のVol.0でも披露した全て自分のプロデュース曲で構成したセット。さらに、今回は未発表曲や最新バージョンだけで組んできたという。スタートからマイクで「クラクションを鳴らして!」とフロアを煽ると、エモーショナルなビートに併せて会場も一体となってパッシングやハザードランプでレスポンス返し。普通じゃ見る(聴く)ことの出来ないカオスな状況に飲まれそうになりながらも「ドライブインフェス」だからこその新しい楽しみ方を車内で体験できた。

最後の大トリを飾るのは、今回の主催の一人でもあるblock.fmの創設者☆Taku Takahashim-flo)。夏を感じさせるハウスから最新モードのテックハウス〜もちろん自らのm-floのクラブ仕様のバージョン、さらにはK-POPまで縦横無尽なプレイで観客を沸かす。ラストは自身がプロデュースを手掛けた韓国グループEXIDの“B.L.E.S.S.E.D”で雰囲気良く締めたかと思うと、来場してくれたみんなにサプライズがあるとMarvin Gaye & Tammi Terrellの名曲“Ain’t No Mountain High Enough”をプレイすると空には花火が! 天高く打ち上がった花火を見上げる会場一人一人のお客さんの表情がとても印象的で、「超えられない高い山はない」というメッセージを込めた歌と共にバックに打ち上がる花火は、今の状況の中で今日を楽しんだ僕たちの一日を締めくくるのに充分すぎるほど感動的なフィナーレとなった。
しっかりと感染対策が行われ、制限された空間の中で、主催、アーティスト、そしてお客さん全ての人達が自ら能動的にそれぞれの楽しいを見つけて作るフェス。それは準備段階のみならず実際にイベント開催中でも、リアルタイムで新しいアイデアが生まれ、最初とはまた違った形になっていく、この状況だからこそ生まれた一つの形と言えるのではないだろうか。自分にとってもこのイベントは確実に今だけしか体験できない「2020年だからこその夏の思い出」になった。また、当日みんなの楽しんでいる姿を見て、やはりみんなフェスなどの生のリアルな体験を求めてるなとも思ったし、この状況が落ち着いてリアルイベントが行われた際には今まで以上の熱量と活気に溢れた風景がたくさん生まれるのを想像してワクワクした。これからどんな新しいフェスが生まれるかも楽しみ。

最後に、この日の帰りには僕がセレクトしたSpotifyプレイリスト「AFTER THE DRIVE IN FES」も帰りの余韻を楽しむために来場者にプレゼント公開されているので、実際にイベントに行ったあなたも、行けなかったけどこれを読んで次回こそはと思ったあなたもぜひこれを聞いて、またドライブインフェスが開催された際にはぜひ参加してみては?
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