【BUCK-TICK リコメンド】
現在的視点と普遍性を同化させた、
静穏たるBUCK-TICKを表す楽曲
「凍える」に表現された、
寂寥感を伴う問いかけ
カップリングに収録された「凍える」は星野英彦が作曲を手がけたもの(『ABRA
CADABRA』には“Crystal CUBE ver.”を収録)。スローテンポでじっくりと聴かせる楽曲で、シンセアレンジも含めて、1980年代初頭のニューロマンチック系アーティストによるバラードに通じるテイストも感じ取れる。寂寥感を湛えた旋律と音像がジワジワと染み入ってくる。もし、この曲のMVも制作されるのであれば、また興味深い映像になりそうだ。
偶然かもしれないが、「凍える」の歌詞の物語も「MOONLIGHT ESCAPE」とそう遠くない内容と受け止めた。《死んでいる》という歌い出しは衝撃的だったが、《生きてもいるか》という返しに複雑な心境を突きつけられる。自分は何者であるのか? 自己同一性というよりも、家庭のような極めて身近な環境における存在価値を問いかける、言わば救いを求めるような歌に思えてくる。
《子守唄を聴かせて》とせめてもの希望を嘆願し、《罪だとは言わないで》というかすかな願いもある。“凍える月”は“青白く震えて”もいる。このレトリックが表すものに想いを巡らせてみれば、絶望的な状況に置かれた幼少期の少年・少女の姿が重なってくるだろう。“沈みたい”“眠りたい”“ただそれだけ”というフレーズが悲哀に満ちている。
終盤に出てくる“ララ ラララ”というリフレインにも寂しい描写が感じられる。「MOONLIGHT ESCAPE」にも《ララ反射》という言葉が登場するが、櫻井が音としての“LaLa”を歌詞に用いる時、どちらかと言えば、享楽的な空気を生み出すのではなく、ネガティブな感情を浄化させるような役割を担わせているケースが多い気がするのだ。もちろん、音とリズムを意識した配列でしかない例もあるだろうが、ここはそう解釈したくなる前段がある。
来るアルバム『ABRACADABRA』がどのようなものになるのか、既発のシングル曲からはなかなか想像できないだろう。明らかにされた収録曲のタイトルだけでも惹きつけられるものが多く、これまで同様に驚かされる要素がさまざまに内包されているはずである。ただ、ひとまず今回の「MOONLIGHT ESCAPE」と「凍える」に関して言えば、一枚のシングルに収められた連曲のような構成で聴かせたのは、それがバンド側の明確な意図だったとすれば、頷かされる選択だ。これをライヴの場で実際に耳にした時には、また異なる感情も込み上げてくるかもしれない。
CADABRA』には“Crystal CUBE ver.”を収録)。スローテンポでじっくりと聴かせる楽曲で、シンセアレンジも含めて、1980年代初頭のニューロマンチック系アーティストによるバラードに通じるテイストも感じ取れる。寂寥感を湛えた旋律と音像がジワジワと染み入ってくる。もし、この曲のMVも制作されるのであれば、また興味深い映像になりそうだ。
偶然かもしれないが、「凍える」の歌詞の物語も「MOONLIGHT ESCAPE」とそう遠くない内容と受け止めた。《死んでいる》という歌い出しは衝撃的だったが、《生きてもいるか》という返しに複雑な心境を突きつけられる。自分は何者であるのか? 自己同一性というよりも、家庭のような極めて身近な環境における存在価値を問いかける、言わば救いを求めるような歌に思えてくる。
《子守唄を聴かせて》とせめてもの希望を嘆願し、《罪だとは言わないで》というかすかな願いもある。“凍える月”は“青白く震えて”もいる。このレトリックが表すものに想いを巡らせてみれば、絶望的な状況に置かれた幼少期の少年・少女の姿が重なってくるだろう。“沈みたい”“眠りたい”“ただそれだけ”というフレーズが悲哀に満ちている。
終盤に出てくる“ララ ラララ”というリフレインにも寂しい描写が感じられる。「MOONLIGHT ESCAPE」にも《ララ反射》という言葉が登場するが、櫻井が音としての“LaLa”を歌詞に用いる時、どちらかと言えば、享楽的な空気を生み出すのではなく、ネガティブな感情を浄化させるような役割を担わせているケースが多い気がするのだ。もちろん、音とリズムを意識した配列でしかない例もあるだろうが、ここはそう解釈したくなる前段がある。
来るアルバム『ABRACADABRA』がどのようなものになるのか、既発のシングル曲からはなかなか想像できないだろう。明らかにされた収録曲のタイトルだけでも惹きつけられるものが多く、これまで同様に驚かされる要素がさまざまに内包されているはずである。ただ、ひとまず今回の「MOONLIGHT ESCAPE」と「凍える」に関して言えば、一枚のシングルに収められた連曲のような構成で聴かせたのは、それがバンド側の明確な意図だったとすれば、頷かされる選択だ。これをライヴの場で実際に耳にした時には、また異なる感情も込み上げてくるかもしれない。
文:土屋京輔
「MOONLIGHT ESCAPE」MV
関連ニュース