『Osaka Music DAYS!!! THE LIVE in
大阪城ホール』関西の音楽業界全体
が心を一つにし、動き出した二日間

2020年8月9日(日)、大阪城ホールにて開催された『Osaka Music DAYS!!! THE LIVE in大阪城ホール』の2日目オフィシャルレポートが到着した。

この日の出演者は初日とはガラリと印象が変わり、若手からベテラン、シンガーソングライターにロックバンド、弾き語りなどジャンルやスタイルも様々。観客も世代を越えた約4000人が集まった。もちろん、昨日同様にマスク着用やこまめなアルコール消毒を実施し、ディスタンスを保ちながらのライブ鑑賞に。前日の盛り上がりはすでにSNSや大阪のラジオ3局の各番組でも話題になっていたこともあり、開幕のアナウンスが流れると歓声の代わりに大きな拍手が沸き起こった。
トップバッターの瑛人はこの日が関西での初めてのライブ。緊張した表情を見せつつも、SNSを中心に話題となった「香水」を披露。柔らかく包み込むような歌声であっという間に観客の心を癒していく。「これからも皆さんの耳に届く歌を作っていきたい」と意気込みを語り、「HIPHOPは歌えない」など3曲を披露。
続くマカロニえんぴつは「希望だけを見せるロックバンド」でありたいと、「ブルーベリー・ナイツ」からキーボードを活かした鮮麗なサウンドを響かせ、観客の心を強く揺さぶっていく。新曲「溶けない」をはじめ、端正に作りこまれたサウンドは広い会場にもぴったりとハマり、同会場でのライブが初めてとは思えないほどの余裕さえ感じる。「自分たちの特等席(ステージ)は譲れない。そして好きなアーティストのライブを観る、その客席から見える景色はあなたたちだけの特等席なんです」と、ステージに立てる喜びを大きく叫びステージを後にした。
アコースティックスタイルで登場した阿部真央は「制限はあるけど、こんなスペシャルなライブも今だけ!」と、逆境さえも楽しもうと「ロンリー」から凛とした歌声を響かせる。8月12日配信予定の新曲「Be My Love」で爽快な高音域の歌声を、「まだいけます」では体の奥底から湧き出る力強い歌声を聴かせるなど、楽曲毎に多彩な表情、歌声で魅了していく彼女。MCでは久しぶりのライブということもあってか、トークが止まらないという無邪気な一面も見せつつ、長い自粛期間を経ることで「自分らしさを考え、形成することができた」と、これからの活動に期待高まる言葉を残してくれた。
イベント前半を締めるのは山内総一郎。「みんなでライブを作り上げたい」と観客の手拍子とともに「LIFE」から真摯に音を届けていく。6月に配信されたシングル「光あれ」では先が見えない、見るのが辛い状況が続くなかで、ライブで音楽を届けることができたことを喜び、「音楽は行く先を照らす光じゃないといけない」と、音楽に懸ける思いがより強くなったと語った彼。歌詞にある“同じ魔法にかかった 会えて嬉しかった”、この言葉はきっとその場にいた誰もが思ったことに違いない。
ステージ毎の転換時には空気の入れ替えも兼ねて、たっぷりと時間が取られていた。グッズ販売やトイレも混雑することはほとんどなく、観客は入場時に配られたアルコールスプレーでこまめに消毒を行っている。昨日、今日の2日間の動きが今後のライブの指針となる。ミュージシャンやイベント主催者だけがライブをしたいのではない。集まった音楽ファンみんなが生のライブを体験したいという願い、その全てがこのイベントを作り上げているのがよくわかる
アコースティックの弾き語り「ひとり股旅」で登場した奥田民生。「人前に出るのは久々、緊張しております。……曲、覚えてるのか?」と苦笑いしつつも、「愛する人よ」へ。鳴りの強い歌声&いつものペースでライブが進んでいくが、さすがの彼も久しぶりのライブと歓声の聴こえない客席に戸惑う瞬間も。それでも“明日はきっといいぜ 未来はきっといいぜ”なんて歌われたら、マスクで観客の表情は見えずとも満面の笑みを浮かべているのがたやすく想像できてしまう。そして最後は「今やってはいけない曲です」と冗談を言いつつ、「さすらい」でステージを〆。いつもの調子、いつもの歌声、なんとも言えない安堵感にほっこりしてしまう。
スターダスト☆レビューは「年寄枠の出演」(平均年齢61歳)と自虐するも、今なお年間100本以上の公演を続けるベテランアーティスト。そんな彼らにとっても、半年近くライブができなかったのはデビュー以降初めてのこと。「自分たちの音楽を育ててくれたのは観客の拍手があってこそ」と感謝の気持ちを伝え、「夢伝説」「木蘭の涙」など名曲を披露。根本の美しいハスキーボイスとどこまでも伸びていく高音、抜群の演奏力はとにかく圧巻だ。もちろん、笑いの絶えないMCや演出も忘れていない。若い世代の観客さえも夢中にさせる、熟練のパフォーマンスで次のステージへバトンを繋ぐ。
リハーサルから楽しげに音を鳴らしていたSaucy Dog。1曲目「煙」から軽快なリズムと心地よい緩急をつけたサウンドで会場の熱量を高めていくと、アグレッシブなサウンドの「雀ノ欠伸」ではメンバー3人が嬉しそうに互いの表情を見て音を鳴らす姿に、見ているこちらもご機嫌に。それでも、「MCでみんなが応えてくるだけでも楽しい」と、これまで日常的だったライブの1シーンでさえも今は新鮮に見えると感慨深げな様子も。ラスト曲「結」で全身全霊のバンドサウンドを鳴らし、「ライブハウスでまた会いましょう」と約束を交わす。
2日間のイベントを締めるトリはgo!go!vanillas。まずは新曲「アメイジンググレース」で最新のバンドサウンドを鳴らすと、「思い切り夏を楽しんで!」と「SUMMER BREEZE」「エマ」とパワーチューンを連発。うれしくて楽しくて、でも歓声が出せない観客はたまらず地団駄を踏んだり、飛び跳ねたりと全身で音に応えていく。「ライブ最高!」、思わず叫んだメンバーの言葉に大きく頷く人もいる。マスク越しでも伝わる1人1人の最高の笑顔にメンバーも盛大な音で応えていく。「絶対音楽は必要だよ。生の音楽はここ(ライブ)にしかない。まだきっと賛否両論があると思う。それでも今日ここに来てくれた人に、普通のライブをするんじゃなく、心に何か残したい」と、集まってくれた観客へ感謝の気持ちを伝え、最終曲「マジック」でステージの幕は閉じられた。
ライブ終了直後、イベント実行委員会からのメッセージがオフィシャルサイトにアップされた。
メッセージにもあるように、ステージが終わった後もイベントは続いている。規制退場にゴミの持ち帰り、分散しての電車移動、帰路では混雑した飲食店に立ち寄らないなど、最後まで全員がルールを守って行動する。そうすることで感染拡大が起きることはないし、また次のライブやイベントへと道が続いていく。難しいことは何一つない。ガイドラインやルールを守って、ひとりひとりがしっかりと意識を持って行動すること。そうすれば、またライブハウスやコンサート会場で音楽が鳴り響き、バンドワゴンが全国各地、音楽を、ライブを愛するあなたの元へとやってくるはず。生のライブの楽しさを再確認した今、そんな日が少しでも早く戻ってくることを願ってやまない。
文=黒田奈保子 撮影=渡邉一生、ハヤシマコ

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