【遠藤正明 インタビュー】
歴史あるシリーズの主題歌を
担当させてもらえて光栄
人生は絶対に失敗するし、
悲しいこともいっぱいある
カップリングに収録されている「オレンジ -stay dreamer-」はハードな主題歌とはまた違うミドルテンポの温かい曲に仕上がっていますが、この曲にも《ウルトラマンにだってなれると信じてた》という歌詞が出てきますね。
はい。カップリングは挿入歌でもないので『ウルトラマンZ』に寄り添わなくても良かったんですが、せっかく「ご唱和ください 我の名を!」と一緒に収録されるから見合う曲がいいなって。曲調はゆったりしていますが、『ウルトラマン』シリーズを観ていろいろなことを思いながら育ってきた自分を振り返っているような世界観ですね。自分と同じようにヒーローものやアニメを観て育ってきた大人たちに向けて、“忘れたものをもう一回取り戻そうぜ”っていうメッセージを込めて作りました。
なるほど。遠藤さんが少年時代に思っていたことを振り返りつつ?
《宇宙飛行士にだって Jリーグの選手にだって ウルトラマンにだってなれると信じてた》っていう歌詞が出てくるんですけど、“もうJリーグも古いですよ。今はYouTuberですよ”って言われたりして(笑)。でも、YouTuberだと曲にうまくハマらないと思って、当時の自分に重ねて書きました。
タイトルの“オレンジ”は夕焼けのことなんですよね。
そうです。僕は宮城県の石巻市出身なんですけど、昔、見ていた夕焼けがずーっと焼きついていて、歌詞に夕焼けが出てくる曲が多いんですよ。夢ばっかり見ていたので、いろんなこと考えながら空を眺めていたんでしょうね。その頃の夕焼けをイメージして書かせてもらいました。
子供たちが聴いても《たとえ悲しい出来事が 訪れても大丈夫さ 明日はきっと 笑えるから》という歌詞に励まされると思います。特に今の時代はコロナ禍で思いきり騒いだりできないですものね。
そうですよね。人生は絶対に失敗するし、悲しいこともいっぱいある。でも、それは自分で克服していかなきゃならないですからね。このCDを今の子供たちが手にとって、何十年後に聴いた時にハッとしたり、何かを思い出してくれたら嬉しいですね。
今の遠藤さんのように“あの時、ウルトラマンの曲を聴いて頑張れたな”と思ったり。
子供たちって真っ直ぐに信じるし、うちらの仕事は影響力があるから責任重大だと思っているんですよね。
曲を作られる時にいつも頭の片隅に置いていることですか?
嘘は言いたくないですね。もちろんファンタジーというか、想像して書くこともありますが、自分がそうなりたいと思い描いて書いているから嘘ではないし、クリエイターは嘘をついちゃダメだと思いますよね。
長いキャリアの中で貫かれてきたポリシーなんですね。
そうですね。コロナ禍の時代だからこそウルトラマンゼットみたいに明るくて、アツくて、真っ直ぐヒーローが必要だとすごく思いますね。
ちなみに玉置成実さんが歌われているエンディングテーマ「Connect the Truth」にはどんな印象を持ちましたか?
オープニングテーマでもおかしくないぐらいにカッコ良いですよね。本編にバトルシーンがあって、その熱を急に冷ますのではなく、クールな中にアツさのある曲で締め括ってくれるので、お互いの曲がいいバランスだなと思いました。玉置ちゃんらしい、彼女に合った曲ですよね。
素晴らしいタッグですね。現在のこともお聞きしたいのですが、ライヴが難しい中、遠藤さんは『えんちゃんねるTV』で弾き語りで披露したり、配信も行なっていますよね。
YouTuberになろうかと思って(笑)。というか、こういう状況下で多くのミュージシャンが何か届けたいと思ってSNSに曲を上げたり、無料配信したと思うんですよ。阪神淡路大震災の時も東日本大震災の時も何かしら音楽で支援ができたけれど、今回ばかりは生で歌を届けられないですからね。
そうですよね。無観客ライヴとか、そういうものになってしまう。
とはいえ、腐ってばかりもいられないので、毎年開催している8月28日の誕生日ライヴも今年はみんなで模索して新しいライヴの在り方…今の時代だからこそしなきゃいけないスタイルを提示していきたいと思っています。俺は結構年上なので道を作っていかないとって思っています、悩んでいる後輩たちもいっぱいいるし。
例年と違うかたちで遠藤さんの生誕祭に触れられるんですね。
配信でやろうと思ってます。生誕祭は自分の歴史を振り返りながら、当時の自分が影響を受けた洋楽や邦楽をカバーするコーナーもあるんですよ。バンドのメンバーがコスプレしたりするお祭り騒ぎの特別なライヴなので、配信という特性を活かして初めて観る方や普段は遠くに住んでいて足を運べないという方にも観てほしいと思っています。
「ご唱和ください 我の名を!」も歌われるんですか?
もちろん。ほんとはみんなとご唱和したいですけどね。みんなで肩組んで歌いながらハイタッチしたり、握手したり、今まで当たり前だったことが特別だったんだって思いますけど、いつの日かコロナが終息して集まれる日が来たら、一緒にご唱和したいですね。
だって、みんなで歌える曲ですからね。
そうなんですよ。俺、嬉しすぎて、曲を作る前にウルトラマン向けの衣装を先に発注してたんですよ(笑)。作ったはいいけどイベントから何から中止になって着る機会がなく、衣装を見ながら酒を飲んでる毎日です(笑)。
取材:山本弘子
関連ニュース