L→R 鈴木慶一、KERA

L→R 鈴木慶一、KERA

【No Lie-Sense インタビュー】
3rdアルバムで素晴らしいものを
作らないと本物じゃない

No Lie-Senseの自由度たるや、
非常に高い

No Lie-Senseは突発的に結成したと見られがちですけど、実はかなりしっかりとしたユニットであるということですね。

KERA
しっかりしてるかどうかは怪しいですけが(笑)、ふたりとも本気ではあるということです。有頂天やソロでは出しにくい、ある種のエッセンスがあって、それは慶一さんの中にも感じられる。そうした共通項を凝縮したのがNo Lie-Sense。ふたりとも有頂天やムーンライダーズでポロポロとは出していたんですけどね。今回の『駄々録〜Dadalogue』で「チョンボ ・ マンボ」をカバーした三木鶏郎的なものは“ある種のエッセンス”の分かりやすい例です。
鈴木
ポロポロっと出していたり、ライヴだけでやっていたりね。それをNo Lie-Senseでギュッと固めるわけ。
KERA
こういう曲は“アルバムに一曲だからいいんだよ”って人もいるでしょうけど、自分は『三木鶏郎全集』を買っちゃう人だし(笑)、慶一さんもそうだと分かってるから。

お互いの集合の共通部分がNo Lie-Senseということですね。

鈴木
そこの共通部分が相当大事でさ。やり甲斐があるし、楽しくもあり、すごくやる気を起こすエリアなんだよ。

一番濃い部分という感じでしょうか?

鈴木
そうだと思う。要するに普段の活動でのエッジの部分なのかもしれないけど、お互いのエッジが重なると非常に真っ黒になる(笑)。

そうしたお互いの共通部分って制作に入る前に刷り合わせたりするんですか?

KERA
いや、全然。それはないです。
鈴木
何も準備しない。

ホワイトボードに書いてまとめるようなことはないと。

KERA
ないですね。タバコ吸いながら話す(笑)。
鈴木
ふたりが会うのは偶然で時々なんだ。例えば、私はKERAの芝居は必ず観に行くから、そこの喫煙エリアでしゃべったり。“今度どうしようか? 何をやろうか?”というような雑談をする。で、スタジオを取って、何も用意しないでそこへ行く。

何も持って行かない?

KERA
持って行かない。
鈴木
何もない。デモもない。イメージは多少ある。
KERA
慶一さんはスタジオへ来る途中の電車の中で作る。
鈴木
あははは。
KERA
それを忘れないように、スタジオに着いたら慌てて歌って録音する。
鈴木
スタジオは常に同じところなので、私は地下鉄で行くんだけど、電車に乗っている時間が長いんだよね。だから、その間にいろいろとできちゃう。それを車内の轟音の中、スマホで録っておく。で、KERAはKERAで自分の作った断片を忘れないように弾いてきて…という感じ。
KERA
1stの頃はもうちょっと下手くそなりにも一応“こんなメロなんですけど”ってワンコーラスをMTRで録って持って行ってたけど、最近はほとんど頭の中だけですね(笑)。
鈴木
KERAはメロトロンで曲を作るんだよ。小さいメロトロンでね。メロトロンで作るって相当珍しいと思う(笑)。

お話をうかがった感じですと、No Lie-Senseは即興性を重要視していると思われるんですが、そうした曲の作り方をするのはどうしてなんでしょうか?

KERA
偶発性は大きいですよね。
鈴木
偶発的にできたものに対して“この先はどうしよう?”となって、“これはこうで、あれはこうだし〜”と。ふたりだから話は簡単で。
KERA
うん。僕には楽典的な素養がまったくないわけですよ。だから、もし慶一さんにデモをしっかり作って持ってこられちゃったりしたら、ほぼ9割9分、“この曲はこういうものだ”となってしまう。“デモが正解”と。そうじゃなくて、欠片だけを提出されると、そこから構築していく過程で“こっちがいい? それともこっち?”って訊かれて、“そっちじゃないですかね”と意見を言えるんですよ。僕自身、レコーディングでこうした作業は他ではないですね。本当に断片から作っていく。
鈴木
下手すると、断片から作っていくのって時間かかるんだよ。だから、レコード会社的には禁止になるんです。ちゃんとデモを作って、それで選曲してからレコーディングに入るというような流れがある。でも、No Lie-Senseの自由度たるや、非常に高いですね。できちゃえばいいんだから、その時間内に。実際、それで一日に一曲できちゃうんだから、これでいいだろうって。

断片からの曲作りというところで言うと、今作に「鳥巣田辛男ショウ」という楽曲がありまして、この中で短い曲が連なっていますが、あんな感じのフレーズでしょうか?

KERA
そうです。
鈴木
「鳥巣田辛男ショウ」に関して言えば、KERAのアイディアがちゃんとあって、“架空のミュージシャンのライヴにしましょう”ということで、それ用に曲を作っていくから、作曲のやり方としてはああいう断片を拡大していくと他の曲になるということだね。テーマは違うけどね。「鳥巣田辛男ショウ」は“鳥巣田辛男”という架空の人に合わせてある(笑)。
KERA
メドレーなんで、曲の美味しいところだけがあればいいと(笑)。
鈴木
でも、作る労力はそれぞれ一曲作るようなもんだったよ(苦笑)。
KERA
曲調がどんどん変わっていきますからね(笑)。

「鳥巣田辛男ショウ」は全体的にはスネークマンショーっぽい感じですね。笑わせてもらいました。あと、先ほど三木鶏郎の名前が出ましたけど、前作の「君も出世が出来る」に引き続いて、今回もカバーが収録されてまして。

KERA
「君も出世が出来る」の作曲は黛敏郎でしたけどね。

カバーの選曲はKERAさんですか?

鈴木
そう。No Lie-Senseにおいてカバーの選曲はKERA。
KERA
「ケンタウロスの子守唄」は緒川たまきですけどね。ふたりに歌ってほしいということで。

そうでしたか。まず、三木鶏郎から話を訊かせてください。私、不勉強で三木鶏郎を知らなくてGoogleで調べてみたんですけど、三木鶏郎作曲のCMソングはどれもこれも、今も耳馴染みのあるものばかりで驚きでした。三木鶏郎の曲をカバーしようと思った経緯を教えてください。

KERA
三木鶏郎は“冗談音楽”の第一人者で、自分の名前を冠にした『三木鶏郎ショウ』というラジオ番組をやっていたような大先生ですから、手がけた曲は無数にあるんですね。で、「君も出世が出来る」も良かったんですけど、あれはフランキー堺がソロで歌ったものを無理やりふたりで歌い分けたので、もともとかけ合いで作られた曲がないかなと思っていて、“あっ、エノケン(榎本健一)が歌ってた曲があるな”と。「チョンボ・マンボ」はエノケンがいろんな方と歌った録音があるんですけど、慶一さんに“どうですかね?”って。

「チョンボ・マンボ」もポップですけど、三木鶏郎が手がけた曲ってポップなものばかりで、本当に分かりやすい。キャッチーさの極みみたいな印象です。その辺はKERAさんのルーツになっている感じでしょうか?

KERA
確実に大きなルーツのひとつです。慶一さんもそうということは、これまでの作品を聴いていれば分かる。細野晴臣さんや直枝政広さんもそうなんじゃないですかね。だけども、たいていの人は鶏郎的な要素ってガンガン打ち出すんじゃなくて、置き場所としてはボーナストラックに「とんかつの唄」が入っていたりとかさ、そういう位置付けなんでしょうね(※註:「とんかつの唄」は映画『喜劇 とんかつ一代』の主題歌で、オリジナルは森繁久彌が歌っている。直枝政広と鈴木惣一朗のユニット、Soggy Cheeriosのアルバム『1959』でカバーされており、そこでは鈴木慶一と細野晴臣がヴォーカルを務めている)。No Lie-Senseはそうした世界観をメインに位置づけている。

他のアーティストがボーナストラックに置くようなものでも、おふたりにとってはメインディッシュであるという?

KERA
うん。自分たちの曲と同じように考えて並べてます。

慶一さんとしては、「チョンボ・マンボ」のカバーの話があった時は“面白そうだな”という感じでしたか?

鈴木
うん。ただ、KERAが選んでくる曲は非常にアレンジが難しいんだよ(苦笑)。信じられないコード進行だったり、アレンジだったりするんで。オリジナルは。

「ケンタウロスの子守唄」に話を移しますと、これもまた独特の歌詞で。“子守歌として適切なのだろうか?”と考えてしまう内容ですよね。

KERA
絶望的ですよね。
鈴木
残酷だよね。
鈴木
歌詞もすごいし…最初はどのバージョンを聴いたんだっけ?
KERA
オリジナルですよ。2番を男の人が歌ってるの。
鈴木
あぁ、あの朗々と歌ってるのね。“これはKing Crimsonか!?”ってちょっと思ったけどね(笑)。あと、互いに1番、2番を歌ってみて、その様子を見てから一回歌い直した。ちょっと気真面目に歌ってみようと。

OKMusic編集部

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