坂本真綾 デビュー25周年の今語る「
様々な色に染まれる満足感」 4年半ぶ
りのインタビュー公開

声優・歌手として活躍中の坂本真綾が、デビュー25周年を迎えた彼女が記念アルバムとして『シングルコレクション+ アチコチ』をリリースする。2013年以降に発表されたタイアップ曲が収録されているDisc1と、カバー曲やセルフカバーを収録したDisc2の二枚組には坂本真綾の豊かさと魅力が詰まっている。四半世紀の間音楽と表現の世界でその立ち位置を確立してきた坂本真綾にSPICEは20周年ツアー後以来、実に4年半ぶりとなるインタビューを実施。このアルバムの制作について、そして彼女のこれまで、これから、今を聞いてみた。

誰かの色に染まっていかなかければいけないこともある
――SPICEとしては、実はちゃんとインタビューをさせていただくのが4年半ぶりになります。20周年記念の『LIVE TOUR 2015-2016“FOLLOW ME UP』が終わったときにお話を伺った以来です。
何か、ついこの間のような感覚ですけどね。ご無沙汰しておりました(笑)。
――まずはCDデビュー25周年おめでとうございます。25周年って数字だけ取るとすごい数な気がしますが、実際迎えてみていかがですか?
数字で見ると、かなりの年月だったんだなと改めて思うんですけど、感覚としてはついこの間20周年やったのにもう!? っていう感じですね。見た目の数字と自分の体感があんまり釣り合ってない感じがします(笑)。
――改めて、今回25周年記念アルバムということで、『シングルコレクション+ アチコチ』が発売されます。真綾さんって、シングルコレクション含めて、ベスト盤をけっこう出されてる印象がありますが。
わかりにくいかもしれないんですけど、私の中では、ベスト盤っていうのは、『everywhere』だけで、シングルコレクションっていうのはまたちょっと違う感じのイメージなんです。数年間に出したシングルを網羅しつつ、プラス、オリジナルアルバムとかになかなか入れられなかった、あちこちに散らばっていた曲を一堂に集めてるというか。節目節目でまとめておくと、みんな便利っていう(笑)。
――ああ、なるほど(笑)。
そもそも『ハチポチ』っていう最初のシングルコレクションを出したときは、菅野よう子さんにプロデュースして頂いていて、一人の人がプロデュースしているにも関わらず、サウンド的には多岐にわたる楽曲を歌わせていただいていたんです。オリジナルの坂本真綾のアルバムっていうものと、アニメのタイアップになっているような楽曲っていうのが、実はちょっと方向性が違ったりとかもしたので、オリジナルアルバムにシングルの曲を融合させるのがちょっと難しいっていう感じがあったので、何かある意味、やむをえず分けた、っていう感じだったんです(笑)。
――たしかに楽曲の色は多彩な印象があります。
現在は、シングル曲もアルバムに入れていることも増えてきたので、その頃とはまた違うんですけれども、どうしてもアニメのタイアップの曲が多いので、一曲一曲の圧がすごいんですよ。前作のアルバム『今日だけの音楽』はコンセプトアルバムだったんで、そういうところには中々入れにくいっていうのもあったりして。まあ、こんなタイミングでまとめておくと、自分としてもシングルでやってきた冒険を振り返れるし、いいタイミングだったなと思っています。
――確かになんというか、色味としてはパキっとしてますよね。
そうですね。どうしてもアニメ作品に寄り添うことを大事にしているので。命をかけて戦うようなヒーローものもあれば、女子高生がメインのほのぼの日常系もあれば、本当に様々なんですけれど。私自身のアルバムっていうときには、発想にも出てこないようなテーマで曲を作ってくださいってオーダーがくるので、それが面白いところでもありますよね。今回は世界征服というテーマで曲を作ってください、とか。
――「Be mine!(『世界征服〜謀略のズヴィズダー〜』OPテーマ曲)」ですかね?
そうです(笑)。例えば「CLEAR」は『カードキャプターさくら クリアカード編』の主題歌ですが、やっぱりピュアな女の子像を求められるし、自分の等身大とは違った視点から曲を作っていかなきゃいけないので。タイアップがあることで開かれる自分の扉っていうのもありますね。
――先ほど言われた、「世界征服みたいな曲お願いします」とか聞いた時って、どうしようかな?と思ったりすることもご自身の中では。
そうですね、自分からは出てこない発想なので、「ああ、世界征服のこと歌っていいんだ、そんなお題もらえるんだ!」みたいな(笑)。 なんか面白いなとか、腕が鳴るぜとか、そういう感じに近いですね。自分の思ってる自分とはぜんぜん違う方向にあるワードなんですけど、それを与えられるっていうのが、ある意味役柄を与えられて演じるときの喜びと似ているんです。「こんな役もらっちゃった! どんな役作りしようかな?」というか。
――やっぱり自分自身の中で生まれてくる音楽と比べると、また違う難しさって言うのもあるんでしょうか。
アニメだけじゃなくて、映画でもドラマでも、主題歌っていうものが担う役割っていうのがあると思うんです。その作品のカラーを作る大事な部分だと思うし。アーティストとしてだけじゃなくて、作品を見ている人にとってフィットするものでなくてはいけないし。
――そうですね。
自分がどうしたいかっていうことも大事だけど、誰かの色に染まっていかなければいけないことでもあると思うんですよね。何か、自分の為だけに歌うときとはちょっと違うスイッチが入るんです。単純に言えば、華やかであった方がいいとか、ワンコーラスでも満足できる内容になっていた方がいいとか、そういう物理的なことも含めて、ハードルがあるんですよね。それを超えるのが面白いって感じです。
――Disc1の方には12曲収録されています。「はじまりの海」から「宇宙の記憶」まで入っていますが、ご自身の中で思い出ある曲などはあるんですか?
ひとつは、今となっては代表曲的なポジションになった「色彩」っていう曲なんですけど。
――はい、『Fate/Grand Order(以下FGO)』の第1部主題歌ですね。
スマートフォン向けゲームの主題歌なんですが、スマホでゲームやってる方って、主題歌は聴いても一回だけなんじゃないかって思ってたんです(笑)。
――ああ、スキップする事が多いんじゃないかと。
だからこんなに浸透すると思わなかったんです(笑)。 本当に長い期間、ゲームのストーリーに合わせて、聴いてくれる人がどんどん共感していってくれるような、なんか不思議な展開だったので。歌詞を書いたときとか歌ったとき以上に、大きく成長していくのを、ちょっと、他人事のように眺めてた曲で。今では、「色彩」から私を知ったみたいな人もいっぱいいるんです。
――そうかもしれませんね。
いつの間にかすごく大きい曲になっていましたね。ある意味、こうやって25年もやってきて、その時々に代表曲と呼んでもいいような作品って言うのは生まれてきましたけど、『FGO』の主題歌というのを通して、また新しいリスナーの方にも出会えたきっかけになったというか。時代に合わせて私を知ってもらえる機会を得ているのは、アニメとかゲームの世界に携わっているおかげというのを改めて実感しましたね。
――ユーザーからすると、真綾さんのファンも世代が移り変わっていってるんだな、という感覚を感じました。25年の月日というか。
そうですね。ありがたいことに、自分と同じぐらいの年代の方が一緒に年取ってきて、今はもうパパやママになったり、会社でもちょっと偉い人になっている方々もいれば、そのお子さんがスマホゲームをやっていて、親子で同じ曲を聴いているみたいな現象が起きたりしていて。そのうち親子そろってライブに来てくれたりとかっていうこともありえるだろうし(笑)。長くやっていく面白さっていうのも感じますね。
――そういう風になってきたんですね。
ぶっちゃけて言うと、「色彩」ってサウンドで言うと、あまりやったことがないラインだったんです。だから自分としてはちょっと冒険だったし、ある意味普段と違うことをやってみる、自分を試す、ぐらいの気楽さで挑んだ曲だったんですね。『FGO』の主題歌はその後もいくつか歌うことになるんですけど、「色彩」が人気になったことで、こういう路線っていう、ひとつ道ができてしまって。そこから「逆光」とか「空白」っていう曲が生まれるに至ったという。
――なんか、レパートリーの中でスパイスとして、胡椒をふりかけたら。
メイン料理になっちゃった(笑)。 意外な展開でした。
――そういうのは刺激にはなりますよね。
ずっと変わらない部分を持つことも大事ですけど、どこかでやり尽してしまわないように、自分を追い込む場も必要なので。このラインを開拓したことが私にとっては、自分に飽きない、いいポイントになった気がしますね。
――Disc2のお話も伺っていきたいと思ってます。こちらはいかがでしょうか。
単純に『シングルコレクション+ ミツバチ』以降にあちこちで歌ったものをまとめたものではあるんですけど、そのカテゴリに入ってないのが「cloud 9」と、「Tell me what the rain knows」っていう曲で、これはずいぶん前の曲なんです。アニメ『WOLF'S RAIN』のサウンドトラックにだけ収録されていて、そういった意味ではコアなファンしか持っていない楽曲だったかもしれないんです。
――そうですね。
でもすごく人気があって、ライブでもたまに歌っていて。私もすごく好きな曲なんですけど。私てっきり『シングルコレクション+ ニコパチ』かなんかに入ってたと思い込んでたんです。
――そうなんですか?
そうなんです、昨年のツアーでセットリストに「cloud 9」をなんとなく入れていたんですけど、ちょうどそのとき私の楽曲がサブスク解禁になって。丁度いいのでツアーのセットリストを自分でプレイリストにして聴こうと思ったら「cloud 9」が見つからなくって。どういったことでこうなってるんだ!? って。
――解禁になったはずなのに(笑)。
そう、全曲入ってるはずなのに! と思って。確かめたらサウンドトラックにだけ入ってたってことに気が付いて、ちょっと、「次のシンコレに入れて! その方が、私が便利だから!」ってことで(笑)。
――私が便利(笑)。
それなら「Tell me what the rain knows」も入れとこう、みたいな感じで。だからこの2曲だけ、時代的にはずいぶん前なんです。
――「cloud 9」は僕も大好きですし、二曲ともいい曲ですよね。
あんまり古さがないというか、ここに入れてもぜんぜん幼さも感じないので。良かったなと思います。
――Disc2に関しては、改めていろいろな所に出してきた楽曲が多いんだなっていう印象がありました。この8年間本当に豊かな活動をされてきたんだなと。
ありがたいですね。今回のアルバムを作ったときに、改めて振り返って全部聴いてみたんです。その時思わず笑ってしまって。
――それはなぜ?
こんなにいろんなことやってきたのか、っていうのと、改めて聴くと、たった8年の間にも、良い意味で守りに入らずに、自分を甘やかさずに頑張ってきて、「偉かったな自分」っていう気持ちが(笑)。
――ちょっと自分を褒める感じでしょうか。
そうですね。長くやればやるほど失敗が怖くなるものだと思いますし、皆さんの期待に応えなきゃっていうプレッシャーも大きくなるんですけど、そこで敢えて「この人とやったらどうなるんだろう?」っていうのを、果敢にトライしたのは、自分にとってはすごくいい経験だったと思います。
――そういう欲求と言うか、もっとこういう人とやってみたいっていう思いは、尽きなく湧いてくるんでしょうか?
もちろん、よく知ってる人とやった方が安心できるし、ある程度楽な部分もあります。そういった場面も必要なんですけど、単純に私、普段からお気に入りのレストランやお店はあるけど、できれば一生のうちに、できるだけたくさんのお店で食べてみたいっていうタイプなんです。
――行きつけるより新規開拓したいタイプですか。
私はいろんなところのいろんな味を試してみたいっていう好奇心が勝っちゃうタイプなので、音楽に関してもその感じに近いのかなあっていう。まだご一緒していない方の作品に触れることで、何かまだ見つけてない自分が出てくるかもしれないっていう好奇心で色々と広げていってる感じというか。
――観てる方からすると、それが無理がないと言うか。こういうことをこの人とやります、というのが流れの中で生まれてきて、それを受け入れられる形にする力がすごいなと思いますね。
誰と組むかを、一番には考えていないからだと思います。今どういう歌が歌いたいかとか、この作品にどんな曲を求められているかっていう中で、じゃあこんな作曲家やミュージシャンとご一緒するっていうのはどうだろう、っていうアイディアが生まれてくるだけなので、次に誰とやりたいかってことを考えてるわけじゃないんですよね。
今楽しまなかったら本当に後悔すると思う
――初回限定盤にはBlu-ray Discも付属します。MVが10本分と、2017年にWOWOWで放送された『第34回世界遺産劇場-嚴島神社- 平清盛公生誕九百年 前年祭 坂本真綾 Open Air Museum 2017』、そして昨年開催された『犬フェス!』のライブビューイング映像と…とんでもないボリュームですよね。
そうですよねえ。嚴島のライブをぜんぶ入れちゃったんで。
――これは、なぜここまでの大容量にしようと……?
ミュージックビデオは他でぜんぜん出していないので、ここで見ておいてもらえるといいなというのがあって。『Open Air Museum 2017』は、最初代表して何曲か入れるっていうのも考えたんですけど、改めてみると、演奏だけでなくて、この特別な場所で、日没からだんだん夜になって、最後、星や月の下で歌っていくという景色が美しくって。なんか、どこか抽出して見てもらうよりも、この時の流れを感じて見てもらってこそ、ライブの良さが伝わるのかなあということで、全部入りにしちゃったんですね。で、『犬フェス!』に関してはぜんぜん入れるつもりなかったんですけど、なんか急に降って湧いた話……(笑)。
――降って湧いた話!(笑)
そもそも、ライブビューイングのためだけに撮ってた映像なので、どうかなと思ったんですけど、本当に見られた人があの日、会場に来てた人だけなんですよ。
――そうですね、現地とライブビューイングだけ。
だから、もう本当に一生誰にも見せないものになるだろうし、菅野よう子さんがインフルエンザになって、当日欠席っていう、なんか伝説の……(笑)。
――そうですね、あれは僕らの中でもちょっと……あれができるのは坂本真綾だけだろうって話が出たんですけれども。
(編集部注:犬フェス!での「プラチナ」歌唱時に、真綾さんはサビ部分の歌詞を菅野さんへのメッセージにアドリブで置き換えて歌唱されました、詳しくは初回盤付属のBlu-rayを御覧ください)
どれだけの人が菅野さんを目的にチケット買ったんだろうっていうのもありましたし、フライングドッグの佐々木社長含め、多くの人が、この『犬フェス!』のためにたくさんのエネルギーを費やしてきたのを、すぐそばで見てたので、いたたまれず(笑)。
――いたたまれずですか(笑)。
私としては、お客さんも、スタッフも、菅野さんも救ったつもりなんです(笑)。 でもあのときみんな、めっちゃくちゃ声出てたんですよね。
――出てましたね!
大トリを頂いていたんですけど、私のことを初めて見た人もいっぱいいる中で、あれだけ空間が一つになった感じが自分でも味わえたことは、すごく楽しくて、いい刺激になりましたね。
――すごく大盤振る舞いな、25周年を記念するものになっているなっていう印象はあります。
そうですね。
――改めて16歳から今も歌われている真綾さんから見て、”歌う”ってどういうものかというのもお聞きしたいと思うんです。
一つのことを続けるって、やっぱり大変なことでもあるし、好きじゃなきゃできないことも、好きだけじゃ続かないこともあって。運やいろんな要素が噛み合って続けられたと思います。最初のうちは、ただ単純に楽しい。その後、いろいろ考えるようになってきて、難しいとか悩みとかも出てきましたけど、それが何周かして、今はシンプルに楽しい! っていう感じですね。
――この時期にきて、また楽しいに戻ってきたと。
そうですね。なんかあんまり怖いものが無くなってきたと言うか。虚勢を張る必要も無いし、何かかっこいいところだけ見せようっていう感じもなく。今回コロナウィルスのこともありましたけど、日常の大切なものが、いつどんな形で奪われるかわからないじゃないですか。私にとって歌って日常であり、かけがえのないものですけど、25年続けてこられたから、30年40年も当たり前にあるとはとても思えないんですよね。
――ああ、実際こんな状況になるなんて誰も想像もしてませんでしたしね……。
だから、これが26年目や27年目でもしかして、手放さなきゃいけないような状況が仮にあったとしても、そのとき後悔しないように。今楽しまなかったら本当に後悔するっていう感じはありますね。
奇跡の瞬間を捕まえる感覚を忘れないでいたい
――前にお話しうかがった20周年の時は、『FOLLOW ME』だったじゃないですか、あのときに、本当に「FOLLOW ME」って言っていいのか。最初躊躇したけど言えるようになったって仰っていましたが、そこからの心境の変化ってありましたか?
んー、そうですねえ。まあでも、『FOLLOW ME』ってよく言ったもんだと今でも思いますけど(笑)。
――あはははは!
『FOLLOW ME』からの5年っていうのは、私も「いつどこでどういう風になるかわかんないけど、とにかく頑張るから付いてこい!」って感じだったんです(笑)。コロナの影響を受けてみて、次にお客さんの前で歌える機会が得られたときには、本当に心の底から嬉しいと思うんです。そのときにお客さんがどんな気持ちで来てくれるかわからないんですけど、そのときこそ『FOLLOW ME』と言って、ステージを作っているスタッフやミュージシャンのみんなをまとめて、全員楽しませることができたらいいなあっていう想像は、日々してますね。
――そして、どうしても今の時期訊かないといけないこととして、新型コロナウイルスの影響下での日々というのはあると思います。生活スタイルだったり、考え方って変わってきた部分ってありますか?
当然たくさん影響あって。音楽業界も、リモートでの楽曲制作をみなさん試していましたよね。でも久しぶりにこの間スタジオに集まって、せーので録ったんです。空気を読みながら、同時に音を鳴らして歌う感覚を取り戻したときに、これに代わるものは出てきようがないと思いました。
――やはり別ものでしたか。
リモートも配信も便利だし、技術もどんどん上がっていって、それはそれでその方向も模索するべきだけど、生で、この場で起きていることを捕まえようとする感覚っていうのは、特別なものだなって思いましたね。今は変化を受け入れざるを得ないけど、ライブだったり、舞台だったり、その場で起きる奇跡の瞬間を捕まえるっていう感覚を忘れないでいたいですね。
――真綾さんで言うと、9月には舞台『ダディ・ロング・レッグズ』も控えています。やはり舞台やライブに対する思い入れは強いのでしょうか。
そうですね。できれば同じ空間で空気が振動していくのを一緒に感じて欲しいという気持ちはあるので。ただ配信ができる時代だったから、キャパシティーを越えて多くの人が見ようと思えば見られる環境になって、ライブハウスで普段やっているような人たちも、そこに入りきらないぐらいの数の人が見れるっていう意味では、必ずしも悪いことではなかったと思うんです。
――それはそうだと思いますね。
どれだけリハーサルしても生まれなかったものが、本番でお客さんによって引き出されるっていう経験を死ぬほどしているので。お客さんがそこにいて完成するのがライブであり、舞台であると思うんです。ただ見せてるだけじゃなくて、コミュニケーションして生まれている。
――客席とのコミュニケーションも必要不可欠なものだと。
はい、それを一度でも味わった人は忘れられないものだと思います。この状況がどのくらいの期間続くかわかりませんけど、リモートや配信に慣れ過ぎちゃうと、その奇跡のコミュニケーションを味わう前に、多くの人に届ける場ができちゃうかもしれないから、早く生で見てもらえる機会が戻ってきたらいいなって思いますね。自分としては、9月の『ダディ・ロング・レッグズ』は、やるって信じて今準備してますし。
――その思いを持ってらっしゃる真綾さんだからこそ、次ライブを開催するときは、すごい大切なものになりそうですね。
お客さんもそうでしょうしね。みんなそうだと思いますけど、今まで当たり前だと思っていたことが、いちいち愛おしいでしょうね。
――真綾さんって、「当たり前の日常の一つにライブがあってほしい」っていうのをけっこうおっしゃてたじゃないですか。その日常が崩れてきているというか。
ほんとそうですね。何が起こるかわからない。だけど、ある意味すごくみんな感受性を豊かに研ぎ澄ましているようにも思えるって言うか。みんなも何か発信したいこと、この危機に感じたことを、なんとか言葉や歌にしようとしていて、そこから生まれてくるメッセージもたくさんあっただろうし。
――そうですね、アーティスト発信は凄く増えたと思います。
それを欲しがっている人たちは、受け取るためにアンテナをすごく張っていると思うんです。そういう感受性を研ぎ澄ましている中で行われるライブや舞台って、なんか今までとは違う受け取り方をきっとしてもらえる気がするし、何が起こるか楽しみですね。自分もいろんな人のパフォーマンスを見てみたいです。
――改めてこの時期を超えて、次に見えてくるのは30周年……。
まだいいです!それはまだいいかな(笑)。5年刻みなんてすぐなんで。
――それはそうですね(笑)。 簡単に5年ずつ齢を取っていっちゃいますから。
本当そうなんですよ! 次は45歳になっちゃうわけですから(笑)。25年の間には流行から文化から、何もかもが移り変わってきたわけで。その流れについていくのも、もしかしたら大変になっていくのかもしれないし。これまでの25年と、30周年までの5年っていうのが、どう違うのかはやってみないとわからないですね。
――まだ、あんまりそこを見据えてどうこうっていうのはご自身の中では。
そうですね。私元々あんまり先のこと考えないタイプで、多分、来年の春ぐらいのことまでしか考えてないっていう(笑)。
――改めてこの『シングルコレクション+ アチコチ』という25周年記念盤を待っているファンの方にメッセージをいただければ。
Disc1の方はここ8年くらいの間のシングル曲なので、最近、何か気になる曲あった人とか、これからとりあえず入門編で聴いてみようって方向けには一番わかりやすい内容になっていると思います。Disc2の方は、ずっと追っかけてきてくださってる方でも、もしかしたら見落としていたものも混じってるぐらいレア曲が混ざっているので、コアな方にもオススメです(笑)。
――コアな人から入門者まで(笑)。
私としては、Disc2に特に面白みを感じています。Disc1で時の流れを感じながら、Disc2で多くの人との出会いによってもたらされた、自分の様々な顔みたいなものを改めて感じたんです。自分を持ち続けるっていうことに並行して、いろんな色に染まれることに非常に満足感を得てこのアルバムを作りました。とりあえず、ライブがあるまではこれを聴いておいていただければ。
インタビュー・文:加東岳史

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