【レポート】加藤登紀子がコロナ自粛
後初の大規模コンサートを開催し100
0人を動員

2020年6月28日に、東京・渋谷区のBunkamuraオーチャードホールで<加藤登紀子55th Anniversary Concert 2020 「未来への詩」with Yae>が開催された。

「誰かが先陣を切らないといけないのならば、私が勇気を持って足を一歩前へ踏み出したいですね」とは、6月5日に公開されたインタビュー(
)での加藤の言葉。新型コロナウイルスの影響で、音楽イベントの自粛が続く中、1000人規模の大型公演では初の開催となった。加藤自身も3ヶ月ぶりのコンサートだという。
開催にあたっては、政府が発表するイベント開催のガイドラインに従って対策を徹底。観客は、2150名収容の会場で半分以下の1000名に制限する他、マスク着用、手指の消毒、検温、入場・退場の際の距離の確保、連絡先と席番号を用紙に記入するなどの対策がなされた。
会場内では、左右前後を1席ずつ空けて着席。大きな声での会話を控えるように、というアナウンスも守り、皆静かに開演を待つという光景も異例だ。やがて客席の灯りが消え、明るく照らされたステージにバンドメンバーが登場。「Rising」のイントロで加藤がステージ奥から現れると、大きな拍手が贈られた。

「Rising」は、加藤が1982年に発表したアルバム『Rising』のタイトル曲でもある。『日が昇り 日が沈み』、『人は生まれ死んでいく』という歌詞の繰り返しが胸に刺さる。客席ではイントロから手拍子が起こり、間奏で加藤が嬉しそうに両手を上げると、いっそう拍手は大きくなった。
生の演奏と生の歌の迫力は、一曲で会場の空気を一変させた。ステージからも客席からも、久しぶりのコンサートという高揚感の高まりが感じられた。

続いて「Révolution」、「知床旅情」と人気ナンバーを歌唱。「知床旅情」のイントロで、「今日は本当にありがとう! 最後まで精一杯、楽しんでください!」と加藤。歌い終えると、「ここにいらっしゃるまでに、相当、覚悟も必要だったでしょう? 感謝の気持ちでいっぱいです」と思いを表し、裏話として、コンサートの開催は約1ヶ月前に決めたこと、もしダメなら無観客でもこの会場でやろうとしていたこと、会場側から1000人ならやってほしいと言われ、天から『おときさん、あなたでしょ?』と言われた気がして決意したことなどを明かした。

そして、「今日は一緒に歌ってねって言っちゃいけないって言われてるんですけど、歌なんて、声を出さなくても歌える。歌は心で歌うものですからね」と観客に語りかけ、歌手活動の55年を振り返ってのトークタイムに、会場は和やかな雰囲気となった。
ここからは、加藤もギターを抱え、「ひとり寝の子守唄」、「愛のくらし」、「この空を飛べたら」と、70年代の人気曲を披露。バイオリン・渡辺剛の名演奏も光り、歌の世界へと深く誘われる。

河島英五が加藤のために作詞・作曲した「生きてりゃいいさ」を歌い終えてからは、河島英五との全国ツアー(1979年)の話、河島と最後に会った時の話なども明かした。そこから、「今年も生きることが大きなテーマになりました」と加藤。続けて、新型コロナによる外出自粛中に作成した曲「この手に抱きしめたい」を紹介する。同曲は、『最もつらいのは感染してしまった人や医療現場の人たち。両者をどう応援できるかが今の私の最大の課題』という思いを綴った、加藤登紀子 with friendsによる楽曲。元々は、4月13日に加藤がギターの弾き語りで歌う動画をYouTubeにアップしたことから賛同者が増えていったという。

コンサート前半の終盤は、「この手に抱きしめたい」を、同企画の賛同者の一人・宮沢和史がハモニカのアレンジを加えた特別バージョンで披露。加藤は言葉の一つ一つを噛みしめるように歌い上げた。
ここで、コンサートのタイトルでもある楽曲「未来への詩」について紹介。同曲については、2019年の秋頃、NHKから『ラジオ深夜便』の“深夜便のうた”の依頼があり、加藤は、「半年も前から時間をいただいたのにもう七転八倒しちゃって(笑)、何曲も作っちゃって。皆さん、余裕あると、たくさんの男を好きになったりし過ぎるでしょ?」と言って笑いを誘う場面も。「私達も未来に歌を遺せるかもしれない、遺せなくても、せめて遠い時代から受け継いだ歌を未来に届けたい、そういう歌達への尊敬の気持ちを託した歌です」と明かすと、ここで、ゲストのYaeが登場。Yaeはデビュー20周年を迎える歌手で、加藤の次女でもある。前半の最後は、加藤とYaeによる息の合ったデュエットによる「未来への詩」で、会場を大いに盛り上げた。

約20分の休憩を挟んでの後半は、Yaeによるソロコーナー。「Amazing Grace」を透明感と温かみのある美声で聴かせ、続いて「褐色のサンバ」では、赤い衣装が映える軽快なダンスでも魅力した。サンバ演奏も躍動感が溢れ、心の中で踊った観客も多かったのではないだろうか。6月28日にリリースされたYaeの新曲「Smile」の後には、「蛍の光」の原曲に新しい日本語をつけた「懐かし友よ」と、様々なジャンルの曲で楽しませた。
再び登場した加藤は終盤、自身を代表する楽曲でもある、「愛の讃歌」と「百万本のバラ」を魂のこもった歌唱で歌い切った。最後、「蒼空」で興奮の熱気が高まる中、加藤は、「何が起こったとしても、その時その時を素晴らしく生きましょう。今日はありがとうございました」と感謝を述べ、観客と手を触れ合わせない「エアハイタッチ」で締めくくった。アンコールはなく、開演から終演まで約2時間のコンサートとなった。
一席ずつ空けての着席はゆったりとして余裕があり、とても快適にコンサートを堪能することができた。この公演は、音楽イベント再開のための一歩を踏み出す意義深いものとなり、令和の音楽史に刻まれる出来事となるだろう。
撮影◎山本倫子
取材・文◎仲村 瞳

この日の模様は、7月10日から8月10日まで、テイクアウトライブとして配信される。

【テイクアウトライブチケット】加藤登
紀子コンサート「未来への詩」with Ya
e

価格:3,000円(税込)

<加藤登紀子55th Anniversary Concer
t 2020 「未来への詩」with Yae>

2020年6月28日(日)@東京・Bunkamuraオーチャードホール
出演者:加藤登紀子
ゲスト:Yae
演奏:告井延隆(Gt) 、細井豊(Key)、鬼武みゆき(pf) 、早川哲也(b) 、渡辺剛(vln) 、はたけやま裕(perc)
[ セットリスト ]
Act1
M1. Rising
M2. Révolution
M3. 知床旅情
M4. ひとり寝の子守唄
M5. 愛のくらし
M6. この空を飛べたら
M7. 時には昔の話を
M8. 生きてりゃいいさ
M9. この手に抱きしめたい
M10. 未来への詩

Act2
M11. Amazing Grace
M12. 褐色のサンバ
M13. Smile
M14. 懐かし友よ
M15. MAMA
M16. 愛の讃歌
M17. 百万本のバラ
M18. 蒼空

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