東京藝術大学卒の長身ヴォーカルデュ
オSiriuS、デビューコンサートへの意
気込みを語る

2020年2月19日(水)にデビューアルバム『MY FAVORITE THINGS』をリリースしたSiriuSは、テノールの大田翔とバリトンの田中俊太郎によるユニット。共に東京藝術大学声楽科を卒業した長身の二人がコンビで聴かせるハーモニーで、NHKの音楽番組「うたコン」に出演するなど幅広い活動を始めている。そんな二人に、デビュー記念コンサートに向けての意気込みを聞いた。
なお、本コンサートはもともと2020年4月18日(土)に予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、延期に。振替公演を7月7日(火)にサントリーホール ブルーローズにて開催、さらに、当日来場できない方のためにイープラス・Streaming+にて配信されることが決定した。本インタビューは、当初開催予定だった4月のコンサートに向けて、3月中旬に取材・撮影が行われている。
――お二人の出会いからおうかがいできますか。
田中:同じ大学の先輩後輩なんですが、僕は独唱科、大田くんはオペラ科なので、授業で会うということはなくて、学内ですれ違っている感じで。
大田:お互い顔と名前は知っていて。学内公演で、藝大の先生がミュージカル作品を生徒たちで上演するときに、二人とも声がかかって共演することになったんですよね。
田中:奏楽堂という大きなホールで上演したんですが、学内でセリフ入りのミュージカルを上演するということがけっこう珍しいんですよ。僕自身にとっても初めてのミュージカル体験で、とても新鮮で。
田中俊太郎
大田:出演人数が多かったので、そのときは直接話す機会はなかったんですよね。それまでに俊太郎さんの歌を聞いたことはあったんですが、セリフを聞いたのはそれが初めてで、新たな一面を見たというか、「しゃべる声もいい声してるな」と思いました。背が高くてスタイルがいいので、田中先輩、舞台上で目立つんですよ。かっこいい先輩だなと。
田中:僕も大田くんを、オペラの舞台で見ていたんだけれど、シュッとしてるなと思ってた。学外の演奏会でも一度共演したことがあったよね。オペラの四重唱を披露して。
大田:今回、テノールとバリトン、声楽家のデュオを作りたいということで、レコード会社の方に声をかけていただいたんですが、俊太郎さんとはすでに共演していたということもあって、おもしろくなりそうだなと感じました。
田中:お声がけがあったころ、大田くんがすでにミュージカルの舞台にいろいろ出演していたのを知っていて。僕自身は長い大学院生活を終えたばかりで、社会に出て活躍しているという意味では大田くんの方が先輩。そういう人と一緒にできるのは楽しみだなと思った。
――お互いの歌手としての魅力はいかがですか。
大田:俊太郎さんはもともとスポーツマン気質で、姿勢として、何かを必ず勝ち取ろうとしていく感じなんですね。稽古のたびに何か新しいものを作り出す、新しい発見をしようとする。勉強家ということでもあるんだと思うんです。何か一つでも必ず形として収穫していこうとする姿勢を見習わなければと思って。僕はけっこう感覚人間なところがあって、何となくうまく行ったらそれでいいかなみたいなところがあるので(笑)。そのあたり、俊太郎さんは、これはいい、これはよくないというところを言葉にするのが上手なので、一緒にやって行く上で、僕の苦手なところ、うまく行っていないところを客観的に見てサポートしてくれるのが、相方としてはすごく頼りになりますね。
大田翔
田中:確かに大田くんは感覚の人なので(笑)、二人で一つのステージに立つとき、音楽を作り出すとき、大田くんの稽古での姿ややりとりを見ていると、完成形が非常に見えやすいところがあるんですよ。そういう方向で見せていきたいんだなというのを感じ取りやすい。僕はけっこう言葉にしたいタイプなので、じゃあそれどうやったらできるんだろう? って考えちゃったりするんですけど。オペラ作品で主人公、ヒーロー、王子様といった役どころを演じるところが多いテノールという声種であるということもあって、大田くんは、立ち姿や歌からして、一目、一声で主人公になれるという性格をもってるんですね。そういうところ、バリトンの僕からしたらうらやましいなと(笑)。
大田:バリトンだとちょっと曲者が多かったりしますもんね(笑)。
田中:ヒーローに憧れる役とかね(笑)。SiriuSでは、三人や四人でのアンサンブルと違って、お互いにソロとしてそれぞれの魅力を出しつつ、一つの音楽を作っていくということに取り組んできているので、二人ならではの新しいアンサンブルの魅力を作っていきたいと思いますね。
大田:二人いると一人より二倍の幅が広がりますよね。それぞれが自分の引き出し、声の音色を駆使して、さまざまな組み合わせを今作り出していっているところです。デビューアルバムも、選曲、編曲していただき、自分たちで練習しながら、作曲家の方に、ここはこう変えて歌いたいと提案したりして、試行錯誤していって。そのとき、無限の可能性があるなと感じたので、これからも、さまざまなジャンルの曲に挑戦していきたいですね。
田中:一人が新しい発見を二つ、三つしたとすると、二倍、三倍とふくらんでいくけれども、それが二人だと、二乗、三乗とふくらんでいくわけだから。
大田:さっき俊太郎さんがおっしゃっていましたけど、クラシックの場合、声種で、ある程度、歌の性格というか、歌手としての役割というものが決まってきてしまうんですけれども、この二人の組み合わせになったとき、そんな枠組みを超えた何かができそうだなというのがチームでの楽しみですよね。
田中俊太郎(バリトン)、大田翔(テノール)
――デビューアルバムの選曲についておうかがいできますか。
大田:全曲ミュージカルや映画の曲で、多くの方が、タイトルを見ただけであの曲、とわかるようなものを取り入れました。まずはクラシック音楽ファン以外の方にも手に取っていただき、身近に感じていただけるような選曲にしたいなという思いがあって。
田中:戦前の作品から最近の作品まで、幅広い時代の作品からの選曲になっています。ミュージカルの中にもさまざまな作品があり、さまざまな楽曲、その魅力があると思うんです。
大田:クラシックやオペラは、マイクを使わない演奏が前提なので、テノールならテノール、バリトンならバリトン、その声種の人が一番よく鳴る音域、その幅で作曲されていて。ミュージカルの場合はそういう枠がないので、テノールの人間からすると、こんな低い音まで使うんだなと思う曲もありますし、クラシックではあまり使わない裏声を使うときもあります。ここ数年、ミュージカル作品に出演していて、それまで使ってこなかった声の種類をたくさん要求されて、そこも試行錯誤しながらやってきていて、今後、さらに追求していきたいなと。いろいろな声の種類、理想的だと思っていた声とは異なる、わざと出す汚い声や変な声も使ってみるようにすると、では、きれいな声とは? ということを改めて考える機会にもなる。クラシックだときれいな音色だけを追い求めている感じなので、さまざまな角度から考えられるようになったという意味では発見があったなと思います。
田中:バリトンの自分からすると、ミュージカル曲は、普段クラシックでは要求されない高い音が多かったりするんですね。例えば『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャンにしても、バリトンの音域からするとはるかに上を行っている。ただ、欧米で活躍されている方の中には、バリトンでありながらもジャン・バルジャンを演じていらっしゃる方もいるんですよね。バリトンの音色の魅力というものもあると思うんですが、音域やジャンルは技術を身につけて行くことで超えていけたらいいなと思います。バリトンとして追求すべき音色であるやわらかさやあたたかさを大切にしつつ、さまざまな役柄の中でさらに追求していきたいですね。
田中俊太郎
大田:僕としても意外だったんですが、今回のアルバムのアレンジの中で、普通だったら俊太郎さんが下のパートを、僕が上のパートを歌うところ、敢えてその逆にチャレンジしたところがあって。その中で違う種類の魅力が出ているんじゃないかなという発見もありましたね。
――デビュー記念コンサートでは、第一部はクラシック曲、第二部ではアルバム収録のミュージカル曲を歌われます。
大田:クラシックの歌手として修業してきたので、その軸の部分をお見せするということで、第一部は生声、マイクを使わない状態で、僕たちの声を楽しんでいただきます。第二部では、デビューアルバムに収録したものを中心に、CDだけでは伝えきれなかった魅力をお届けしたいなと。視覚的なことや、ライブ感も含め、CD以上に楽しんでいただけるコンサートになると思っています。歌えるだけ歌おうということでけっこう詰め込みました。第一部のソロ曲は、得意なものを持ち寄ろうと今悩み中です。
田中:バリトンとテノールの二重唱は、オペラの中でもそんなには多くないんですが、その中から、共に名曲である『ラ・ボエーム』の「もう帰らないミミ」と『ドン・カルロ』の「われらの胸に友情を」を取り上げます。マイクを用いての歌唱については鋭意研究中ですね。もちろん、生声とマイク歌唱とで違うところもあるんですが、共通している部分も必ずある。軸としてぶれないところと、パフォーマンスとして幅を広げる部分と、勉強しながら準備している感じですね。ただ、表現の幅としては、両方に取り組むことで広がってくる部分もあって。マイクでのパフォーマンスでは、ささやくような声や日常的な会話に近い音を出すことができますし。
大田:幹の部分は一緒だけれども、つける花の種類が違ってくる感じですよね。クラシックだと、その人のもっている一番いいところを生声で伝える感じですが、マイクや音響の助けがあると、生声では届かないような小さい音量など、別の色のものが届けられる感じで。第一部、第二部で、それぞれの特色を出せていけたらいいですよね。
大田翔
田中:オペラやクラシックの曲だと距離感があるという認識をされている方もいらっしゃると思うんですよね。デビューアルバムはミュージカル曲メインでしたが、今後はクラシック曲を取り上げていくことも多くなっていくと思うんです。その場合、皆さんにより伝わっていくような形でのパフォーマンス、表現を追求していけたらと思っていて。今回のコンサートの第一部も、皆さんに楽しんでいただけるような形でお届けできたらと。オペラ『ラ・ボエーム』はミュージカル『RENT』の元になった作品だったりするし。
大田:物語がわかればおもしろいオペラもたくさんあると思うんですが、わかりにくい印象があるのかもしれないですよね。あらすじを知った上で観ると今の時代の方たちにも楽しめる作品がいっぱいあると思うんですが、第一歩が難しいのかなと。イタリア語やドイツ語だったりして、難しい印象があったりして。その上では、僕たちがコンサートで歌っていくことで、皆さんがオペラやクラシック音楽になじむきっかけになっていったらと思いますよね。
――今後の活動の方向性についておうかがいできますか。
田中:まずはデュオとしての魅力、そこから生まれる音楽の幅の広さを探求していきたいです。もともと持ち声もパートも違うので、それぞれの表現が違う。そこをお互いに追求していった上で、高い次元でアンサンブルをしていくことで、僕たちにしかできない音楽が生まれていったらいいなと。
大田:組み合わせとしてのチームワーク、相性を高めていきつつ、それぞれが個人として違う方向にとがっていけたらいいなと思いますね。ある意味クセが強くなっていくというか、それぞれの得意な部分や強い部分を磨いて、それが組み合わさり、かみ合ったときにどうなるのか、そこを作っていきたいですよね。
田中:性格的に真反対なところがあるんですよ。大田くんは天才肌で、絵を描くのも上手くて、創作の才能、創造力がすごくある。僕はどちらかというと分析したり言葉にしたいタイプなんですよね。そのあたりの個性の違いも、音楽だけではなくステージングやその他諸々で表現できていったらいいなと思いますね。
大田翔(テノール)、田中俊太郎(バリトン)
――個々として取り組んでいきたい活動は?
大田:もともと演劇やお芝居が好きだったのもあって、オペラに加え、ミュージカルにも出演するようになってきたので、そちらの分野でもどんどんチャレンジしていきたいですね。
田中:僕は大学院で日本の歌曲の研究や演奏をしてきていて。その歴史をたどるうち、山田耕筰や滝廉太郎のようには有名ではない作曲家たちの中にも非常に魅力的な創作をしている方たちがいることを知って。今後、そういった歌曲も発信していくような活動にも取り組んでいきたいですね。
――コンサートへの意気込みをお願いします。
田中:生声&マイク歌唱と、声の魅力の幅の広い、さまざまな声を聞いていただけるコンサートになると思います。ステージングとパフォーマンスも今までと違う感じでお届けするので、新しい僕たちを観てもらえると思います。
大田:そのあたり、当日までちょっとシークレットですよね(笑)。CDだけでは楽しめない僕たちを、目と耳で楽しんでいただけたらと思っています。
取材・文=藤本真由(舞台評論家) 撮影=池上夢貢

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