長い時間をかけて制作された
グレッグ・オールマン
初のソロアルバム『レイド・バック』

本作『レイド・バック』について

73年、長い時間をかけてようやくグレッグのソロアルバムが完成する。本家のオールマンズは『アット・フィルモア・イースト』(‘71)、デュアンの死(71年11月)、『イート・ア・ピーチ』(’72)、ベリー・オークリーの死(72年11月)、『ブラザーズ&シスターズ』(‘73)をリリースしているのだから、グレッグのアルバム作りは、かなりの時間を要したことが分かる。

参加しているミュージシャンは多く、チャック・リーヴェル、ジェイモ、ブッチ・トラックスのオールマン組、ギターにはバジー・フェイトンとジミー・ノールズが参加、スコット・ボイヤーとトミー・タールトンのカウボーイ組、ポール・ホーンズビー、ジョニー・サンドリン、チャーリー・ヘイワード、デビッド・ブラウンらサザンロック常連組などをはじめ、10人にも及びバックヴォーカルやストリングス勢など、かなり豪華なメンバーである。

収録曲は全部で8曲。「ミッドナイト・ライダー」「プリーズ・コール・ホーム」の2曲はオールマンズのナンバーで、グレッグの代表曲でもある。名バラード「ハートのクイーン(原題:QUEEN OF HEARTS)」はバジー・フェイトンのギターが冴え渡っている。フェイトンにしてもノールズにしても、当時グレッグと仲の悪かったディッキー・ベッツへの当てつけかと思うぐらい素晴らしいギターワークを聴かせている。「ドント・メス・アップ・ア・グッド・シング」ではリーヴェルのピアノが最高のプレイを見せる。ジャクソン・ブラウン作の「青春の日々(原題:THESE DAYS)」はグレッグの十八番のひとつで、ここでも彼の歌は素晴らしい。グレッグは他にも「ソング・フォー・アダム」などのジャクソン・ブラウンの暗めの曲を取り上げているが、ひょっとしたら内省的なシンガーソングライターになりたかったのかもしれない。

このアルバムで一番の名曲だと思うのは、スコット・ボイヤー作の「オール・マイ・フレンズ」。カウボーイのオリジナルも良いが、本作でのゆったり(レイド・バック)した泥臭さはとても味わい深い。ラストの「永遠の絆(原題:WILL THE CIRCLE BE UNBROKEN)」はカントリーやブルーグラスでよく歌われるトラッド。ここではデラニー&ボニーやドン・ニックスを意識したようなゴスペル風のスタイルとなっている。

なお、本作は昨年(2019)にデラックス・エディションがリリースされた。2枚組でデモや別ミックスなど未発表テイクが満載となっている。

最後に、ジャケットのイラストはマイルス・デイビスの『ビッチェズ・ブリュー』でお馴染みのマティ・クラーワインが手がけている。

本作が気に入ったら、サザンロックだけれどサザンロック臭の少ないカウボーイの『ボイヤー&タールトン』(‘74)やタールトン/スチュワート/サンドリンの『ハッピー・トゥ・ビー・アライブ』(’76)を聴いてみてください。

TEXT:河崎直人

アルバム『Laid Back』1973年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. ミッドナイト・ライダー/MIDNIGHT RIDER
    • 2. ハートのクイーン/QUEEN OF HEARTS
    • 3. プリーズ・コール・ホーム/PLEASE CALL HOME
    • 4. ドント・メス・アップ・ア・グッド・シング/DON'T MESS UP A GOOD THING
    • 5. 青春の日々/THESE DAYS
    • 6. マルチ・カラード・レイディ/MULTI COLORED LADY
    • 7. オール・マイ・フレンズ/ALL MY FRIENDS
    • 8. 永遠の絆/WILL THE CIRCLE BE UNBROKEN
『Laid Back』(’73)/Gregg Allman

OKMusic編集部

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