本格ライブをネット配信!『Streami
ng+ LIVING ROOM CONCERT』がスター
ト~宮田大(Vc.)&三浦一馬(Bn.)
に訊く聴きどころ

まずは無観客という形で一部のオーケストラが公演を再開するなど、徐々にステージに音楽が戻りはじめた2020年6月。緊急事態宣言が解除されたとはいえ、まだ先がみえない状況のなか、どうすればライブ演奏を待ち望む人々に音楽を届けられるのか? 多くのアーティストや制作サイドが頭を捻りながら公演の準備を進めるなか、ジャンルの垣根を超えた豪華メンバーによるライブストリーミングの公演が発表となった。
その名も【Streaming +】LIVING ROOM CONCERT(ストリーミングプラス リビングルームコンサート)。注目のアーティストが多数所属する日本コロムビアとテレビマンユニオンがタッグを組み、各々が得意とする録音と映像を活かして、非常に高いクオリティのコンサートを自宅にいながらにして楽しめるというもの。今回は、出演アーティストを代表して、チェロ奏者の宮田大と、バンドネオン奏者の三浦一馬にこのライブストリーミングの聴きどころをうかがった。あわせて、コロナ禍をどのような心持ちで過ごしてきたのか? 久々のコンサートにむかう心情も語ってくれた。
オンラインでインタビューをうける三浦一馬(上段右)と宮田大(下段)
――おふたりにとっても、久々の本番になるかと思うのですが、最後に人前で演奏されたのはいつ頃のことでしたか?
三浦:忘れもしない2月28日(火)。大阪のフェニックスホールでバンドネオンの無伴奏でバッハを弾くというプロジェクトが予定されていて、逃げ出したいぐらいのプレッシャーのなか、本番にむけてもの凄く練習を重ねる生活をしていたんですね。まだこの頃は、開催するのか? それとも中止・延期するのか?……の判断が主催ごとに分かれていたんですが、希望者には払い戻しに応じる形で開催されました。有り難いことに完売していたんですけれど、実際の客席は6~7割ぐらい……といった状況でしたね。
宮田:私は3月頭ですね。同じように、心配なお客様には払い戻しをさせていただき、来たい方だけ来てくださいという選べる形になっていました。でも、その後、選択肢はなくなってしまいましたよね……。
――3月に入ってからは無観客での配信が結構行われましたよね。三浦さんも、3月8日(日)のライブストリーミングに出演されています。
三浦:無観客の配信は初めての体験だったので、本番にむけて気持ちをどう持っていったらいいのか? 気持ちの作り方をどうしたらいいのか、戸惑いましたね。お客様がいないから気軽なのかというと、全くそんなことはなくて、むしろ変にあがっちゃって……。でも日に日に先が見えなくなっていくなか、我々アーティストにとっても希望がもてた一夜でもありました。この状況でもこんなに心をひとつに出来るんだ!っていうかけがえのない体験だったんです。
2020年3月8日に行った配信コンサートの様子
――ところが3月の後半になると無観客でも演奏が難しくなってしまったため、4月7日(火)に緊急事態宣言が出される前から演奏家の皆さまは早々に自粛期間に入ってしまったわけですよね……。ステイホーム中は、どのように過ごされていたのでしょう?
宮田:コンサートが中止や延期になるかどうかもなかなか分からなくて、練習はしないといけなかったので休暇になったような気もしなくて……。本番がないことが早めに分かっていれば、違う曲の練習をしたりも出来たのですが。
三浦:先々の予定を見据えて練習はしているんですけど、何かに向けて突き詰めていく感覚が持ちにくかったですね。モチベーションの保ち方が難しかったです。そのライブストリーミングの本番の後、3ヶ月も演奏会がなかったわけですから。
――そう考えると、コンサートを待ち遠しく思っているのはお客様だけではないんですよね!
三浦:家でひとりで練習していても、「やっぱり音楽っていいなあ!」って思えて仕方ないんですよ。だから、音楽家たちが集まって一緒に演奏できたら、この上ない幸せだろうな!って、今から楽しみで仕方ないほどです。
三浦一馬
――ただし、まだしばらくは、ステージ上で演奏者同士がソーシャル・ディスタンスを確保しないといけない状況が続きそうですね。
宮田:一緒の空気を共有したり、呼吸を合わせたりすることで、こういう風に弾きたいというニュアンスを互いに感じとっていくんですけど、10~20センチ、ちょっと離れただけでその環境が大きく変わってしまうんです。だからソーシャル・ディスタンスをとるということは、音楽家にとって新たな挑戦になるのかなと。
――不安と楽しみ、半々というのが音楽家の皆さんの心持ちなんだろうなということが、伝わってきます。一方、聴衆側は、この自主期間中にオンラインコンテンツに課金する人が更に増えたんじゃないかと思います。もう定額配信はかなり根付きましたけど、きっと「新しい生活様式」へと移り変わっていくなかで、単発でも有料ライブ配信を楽しみたいという声が高まっていきそうな雰囲気を感じるんです。
宮田:観てくださる方は、好きなものを食べたり飲んだりしながら、好きな服装で、どんな風に楽しんでくださってもいいわけですよね。クラシックのコンサートに行かれたことない方もお気軽に楽しんでいただけると嬉しいです。
三浦:どんな楽しみ方でもいいわけですからね。
宮田:映画でいえば、映画館で観る時と、レンタルして自宅で好きな人と話しながら観たりする時では違う魅力がありますよね。生の代わりになるわけではないですが、また別の楽しみ方をしていただけるんじゃないでしょうか。
宮田大
――他にもライブストリーミングの利点は、普段の生活サイクルのなかで平日19時開演のコンサートに足を運ぶのが難しいという方でも参加しやすいということもありますよね。育児や介護、あるいは障害を抱えていらっしゃる方などにとっては、自宅で楽しめるライブの選択肢が増えることは、非常に喜ばしいことなんじゃないかと思うんです。
宮田:お年を召された方から、昼公演は行けるけど、夜公演は難しい……というお話を耳にすることもあります。今回は20時から21時半にかけての配信なのですが、実は翌日の20時まで観ていただけるんですよ。
三浦:以前、サイン会に並んでくださったお客様のなかに、介護で時間がとれず、1年に1回しか聴きにこれないけど、本当に楽しみにしていたんです!って声をかけてくださった方がいらっしゃいました。我々にとっては、求めてくださるってことが何より嬉しいし、大事だし、それこそが基本だと考えているんです。コロナ後も、聴いてもらいたい我々と、聴きたいと思ってくださるお客様さえいてくださるならば、コンサートの形態は変わっても、大事なところは変わらないと思います。
――ますます、ライブストリーミングが楽しみになってきました!まずは初日、6月24日(水)でおふたりが注目するポイントはありますか? 全公演にMCとして出演されるミュージカル俳優の岡幸二郎さんがこの日は歌も披露され、他にもコロンえりかさん、麻衣さん、SiriuS(シリウス)、そしてピアノの山中惇史さんが出演されます。
三浦:この回は出演者名を見ただけで、明らかな「歌祭り」ですよね(笑)。
宮田:麻衣さんは父である久石譲さんの作曲した、『風の谷のナウシカ』の“ランラン ララ~”を歌っているわけで、日本の全国民が彼女の歌声を聴いたことがあるんじゃないかという方です。プライベートでも仲良くさせていただいていますが、麻衣さんの声は女声でも男声でもないというか、色んな要素がミックスされた“麻衣さんの声”としか言えない魅力を持っている方だと思います。あと、私が今の事務所に所属したタイミングで、ヴォーカル・デュオのSiriuS(シリウス)がデビューしたので、一緒に頑張りたいなと思っているんです。そこにも注目していただければ!
Vol1
――Vol. 2は6月30日(火)で、神奈川フィルのコンマスがデュオを組んだDOS DEL FIDDLES(ドス・デル・フィドル/石田泰尚さん、﨑谷直人さん)、そしてNAOTOさんと松本圭司さん、伊藤ハルトシさん、山中惇史さんが出演されます。こちらは弦楽器が中心となる回ですね。
宮田:石田さんと初めてご一緒した時に、ピアソラのセンスがあまりに抜群過ぎて、ずっと見つめて勉強させてもらいました(笑)。音色も多彩ですし、間のとり方とか空間の作り方が本当に素晴らしいんです。
三浦:宮田さんもおっしゃったように、ピアソラを弾かせたら右に出るものはいないっていうぐらい、抜群のセンスと高音のきらびやかな伸びと……凄い絶妙なところをいつも攻めてくださるんです。そして石田さんは、実はもの凄く気を使ってくださる方で、誰よりも練習魔でもあるんです。楽屋でも、ずーーーっとさらってますからね! そういう背中をみて、憧れてきた方でもあります。
宮田:﨑谷君は大学の同級生で、これまでも神奈川フィルのコンマスとして、あるいはウェールズ弦楽四重奏団の第1ヴァイオリンとして、何度も共演しています。場面に応じて協和したり、あえてぶつかったりとマルチなところが聴けると個人的には嬉しいですね。NAOTOさんは、TVとかでもお馴染みでファンも多いですから、配信ではありますけど、色んなヴァイオリンのファンの方が入り交じる回になるのかなと(笑)。
Vol2
――Vol. 3は7月8日(水)で、いよいよ宮田さん、三浦さんがご登場ですね。他にも大萩康司さん、山中惇史さんが出演されます。
宮田:一馬君と一緒に共演する曲は、これまで1公演でしかやっていなかったりするんですよ。それを残念に思っていたので、沢山の方に聴いていただけるであろう今回演奏できるのがとっても楽しみです。イケメン過ぎる大萩さんとは、よく共演させていただいているんですけど、ギターとチェロの組み合わせの魅力をもっともっと知っていただけると嬉しいですね。チェロやバンドネオンの方が音量が大きいので、今回のライブストリーミングなら普段の生演奏よりもギターの繊細な音がお伝えできるんじゃないでしょうか。ピアノの山中さんとは初共演なんですけれど、編曲者としても素晴らしい方なので自分の人生でも初めて取り上げる曲を選びました。どうなるのか自分でも楽しみです。
三浦:ガーシュウィンですよね?(笑)。宮田さんが弾くのが意外で、全然イメージが湧かなくて。どんな演奏が聴けるのか、めちゃめちゃ楽しみなんですよ。僕としても、これまで経験したことのない編成でのコンサートになるたびに、その公演のためだけに編曲をすることが相当数あったんです。だから宮田さんとだけでなく、1回しか弾いていない曲がザラにあるわけですよ。そういう曲が日の目を見るのが、楽しみでもあります。
宮田:あと、実はMCの岡さんが歌ってくださることも既に決まっていて、チェロとピアノと3人で共演しますので楽しみにしていてください。曲目が沢山あるので、1時間半では終わらないかもしれません!

Vol3

――Vol. 4は7月10日(金)で、藤原道山さん、細川千尋さん、マシュー・ローさん、LEOさんが出演されます。
三浦:ピアノの細川千尋さんは、以前共演した時に大暴れしていて(笑)。アンコールでピアソラの『リベルタンゴ』を弾いたんですが、もう出だしからリハとは大違いの「え?そのテンポ?(笑)」っていう始まり方をして冷や汗をかいた記憶があります(笑)。良い意味でスリリングなステージになること間違いなしだと思います!
宮田:藤原道山さんとは、よく『題名のない音楽会』でご一緒させていただくんですが、ときにフルートのように聴こえたり、クラリネットのような雰囲気も醸し出したりと、音楽に合わせて尺八から多彩な音色を聴かせてくださるのが素晴らしいですよね。そしてマシュー・ロー君は、大学の後輩なので、食堂とかでお会いしていて、その頃からピアノも注目されていたんですけれど、歌もうたうんだってことを最近初めて知りまして! 聴いてみたら、日本のジャスティン・ビーバーじゃないかって思うぐらいでビックリしました。あと、LEO君も『題名のない音楽会』でお会いしたりするんですけど、筝でクラシックを弾いたりと、バンドネオンの一馬君と似ているところがあるなと。どんなプログラムになるのか楽しみですね。
Vol4
――そしてVol. 5は7月21日(火)で、この日は岡幸二郎さんを中心とするミュージカルナイトが予定されています。岡さんの他には、石井一孝さん、原田優一さん、そしてピアニストとして山中惇史さんが出演されます。皆さん、ミュージカルの第一線で活躍中の人気スターで、石井さんは吹替を担当されたディズニーの『アラジン』役としても知られていますね!
宮田:皆さん、ファンが世界中にいらっしゃるような方々ですから、自宅にいながらにして聴けるというのは本当に贅沢ですよね。私達が宣伝する必要もないぐらいだと思います(笑)。
Vol5
――お話を伺えば伺うほど、どの公演も聴き逃せない貴重な機会になりそうですね!
宮田:このような状況ではありますけれど、今回に関してはだからこそ集まれたメンバーでもあるんですよ! 生演奏を会場で聴いていただくのが一番だと思うんですけど、なるべく、すべてを良い方にとらえていきたいです。
三浦:同じく、生演奏が一番……ということに越したことはないんですけど、こんな状況でもなんとか、音楽や時間を共有してリアルタイムで繋がれることに重きをおいているからこそ、実現した企画だと思います。我々も模索している最中ですけれど、この先もこうしたライブストリーミングが演奏の道のひとつとして、新たな可能性を見いだせるような時間を、お客様とともに作っていこうという気持ちでおります!
取材・文=小室敬幸

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