燐光群、下北沢ザ・スズナリで別役実
の戯曲『天神さまのほそみち』を上演

2020年7月3日(金)~19日(日)下北沢ザ・スズナリで燐光群『天神さまのほそみち』が上演される。
『天神さまのほそみち』は、3月3日に惜しまれつつ亡くなった別役実の戯曲の中で「もっとも不条理」と評されることのある、怒涛の対話劇。「孤独」な登場人物たちの群像劇は、ある意味で、別役戯曲・最大の難関といえるだろう。
別役と劇作家協会等の活動でも親交のあった燐光群主宰の坂手洋二が、この鮮烈な鎮魂歌を、現在に再生させる。さらに、作品の設定にあわせて、会場である下北沢ザ・スズナリの搬入口や出入口を、可能な限りオープンし、開放的なステージとする。
電信柱とベンチという空間設定で書かれ、1979年に文学座で初演された本作は、同時期の『赤色エレジー』同様、作者自身の青春を回想する生々しさが滲む芸術性の高い作品。作中の救いのないカタストロフは、大きく変わってしまった街と共同体の変容そのものであり、時代が別役作品の喚起するボーダーに達してしまったと言えるだろう。
本作の示すコミュニケーションの衝突は、SNSに象徴される現在の諸問題を予見したもの。別役作品の言語的強さを生かした演出により、初演時にはなかった現実社会の「内向」「排他」「分断」が鮮明にされる。「個」の情報がそぎ落とされた別役作品の対話のメカニズム、その閉鎖された関係性に陥ってゆくプロセスを演劇化すべきなのは、まさに今であると考えている。
本公演は、<別役実メモリアル>として上演されるが、これから一定の期間、過去にも別役作品を上演してきたカンパニー等が、別役作品を上演していくこととなった。詳細は少しずつ発表されるが、別役の作品を新たに見つめ直し、多くの人と共有することで、その魅力と本質が、次の世代へと受け継がれていくことだろう。

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