THE NOVEMBERS『At The Beginning』
。混迷の時代に響くはじまりの歌
リスナーにとってアートワークとは、作品を聴く前に受け取る最初の情報であり、いわば音楽が「鳴る前」に聴く(見る)芸術である。曇天の海は不気味さを、完全な球体は人工物を、極彩色のカラーは混沌と多様性を想起させる。だとしたら、歌詞カードに描かれている円は調和だろうか。シューゲイズ・サウンド、インダストリアル、ニューウェイブ、エレクトロ…それらが苛烈さをもって渦になる『At The Beginning』は、いくつもの問題が噴出しているカオスな現実と、それでも捨てることのない未来への期待を記した、この社会の写し鏡のような作品である。
「Rainbow」は彫刻のような美しさを持つ1曲で、冒頭の近未来を思わせるシーケンスだけでもこの作品の価値を確信するだろう。<君はいつも/いまがはじまり>と歌う、いわばこのアルバムの根幹となる精神を示す楽曲だ。作品タイトルにも表れている通り、この作品はあくまでも「はじまり」を告げる作品である。