上野耕平(サクソフォン)が語る オ
ンラインコンサート『配信小屋 Vol.
1』~ネットと音楽の現在と未来~

クラシックからジャズまで多彩な音楽を自在に演奏し、圧巻のパフォーマンスを繰り広げてきた気鋭のサクソフォン奏者、上野 耕平(うえの・こうへい)。ソロ活動のみならず、サクソフォン四重奏団・The Rev Saxophone Quartet(ザ・レヴ・サクソフォン・クヮルテット/以下、レヴ)を率いて、既存の表現にとらわれない瑞々しいセンスとサクソフォンの新境地を魅せてきた。2018年には「情熱大陸」に出演するなど、熱い眼差しが向けられている。その上野が、2020年6月10日(水)19時からイープラスの新サービス【streaming+】にて、ストリーミング・コンサート『配信小屋 Vol.1上野耕平✕山中惇史』を開催する。
新型コロナウイルスの影響でコンサートや公演が軒並み中止・延期になるなか、多くの音楽家がインターネット上での演奏配信を始め、それは新しいムーブメントとなりつつある。上野は、コロナ禍が深刻な影を落とし始めた早い段階からインターネットを利用した複数のプロジェクトを始めてきた。ネット上での活動に確かな手応えを感じているという上野に、活動の経緯と『配信小屋 Vol.1』にむけた意気込みを訊いた。
『テレワーク合奏プロジェクト』:新しい合奏の形でつくる人の「輪」
―――SNSでコラボを募り、テレワーク合奏として一つにまとめた合奏動画『テレワーク合奏プロジェクト』をいち早く公開されましたね。こうした取り組みを始めたきっかけはなんだったのでしょうか。
3月初旬あたりから、演奏会などは軒並みなくなってしまいました。本来であれば、アマチュアの方や高校生と一緒に吹く予定があり、僕自身も楽しみにしていたわけです。今、全国的に見て、多くの方が「合奏」の機会を失っています。アマチュア演奏家や、吹奏楽部の生徒さんにとって、音を合わせる機会がなくなってしまったんです。吹奏楽であっても、オーケストラであっても、合唱であってもです。そこで、「上野合奏団」という名前を付けて(テレワーク合奏を)始めました。
――第一弾では、『宝島』を選曲されましたね。
『宝島』は、吹奏楽をやったことがある人なら良く知っている曲。この曲なら、みんな、楽譜がなくても吹けるかなと思って選びました。
【テレワーク合奏】宝島 with 上野合奏団!!!
―――実際にやってみて、いかがでしたか?
会ったことない方と音を重ねるというのが嬉しかったですね。頂いた動画から、皆さんそれぞれの想いが伝わってきました。僕と同じパートを演奏してくださる方、ハモってくれたり、合いの手をいれてくれたりする方、さらには、泡立て器の音で参加してくれる方もいました! 合奏=同じ場所、空間にいないとできないと思っていたことが、その場にいかずとも、会わなくても出来るということに、感動というか…新たな楽しみがあると思いました。
――オンラインだからこその繋がりが生まれた?
僕のことを知らなかった方や、演奏会に来たことがない方と接点が生まれたのは、ありがたいことです。SNSならではですね。
――第二弾の曲はバッハの『主よ、人の望みの喜びよ』ですね。
誰にでもすっと入ってきて、これなら知っていると思える曲です。広がっていって欲しいという想いで選びました。どんなバッハになるのでしょうね。今回は、前回を超える85名の方から応募いただきました。前回とは、曲想が全然違いますが、泡立て器の方にも参加していただいています(笑)。何よりも大切なのは、「楽しむこと」です。それぞれの楽しみ方が一緒になるという楽しさを目指していて、「上手くやろう」とかいうことは目標ではない。いろんな方に参加いただけて嬉しいですね。
ネット配信がもつ可能性
――YouTubeの公式チャンネルに『上野の部屋』を開設し、トークの生配信もされていますね。こちらを始めたきっかけは何だったのでしょうか。
サクソフォンに関する質問を多く頂いてきたのですが、なかなか全てに答えるという訳にはいきませんでした。コンサートホールで皆さんと会う機会も失われてしまいましたが、時間ができたので、「インスタライブをやろう」と思ったのがきっかけです。当初はインスタライブ(Instagramのライブ機能を使った配信)でしたが、アーカイブが残せないので、YouTubeへと移行しました。始めは毎日でしたが、今は水曜日と日曜日の週2回。水曜日は僕の回、日曜日はレヴの回でしばらく続けていく予定です。Stay homeで皆さん、家にいるので、少しでも日常の楽しみになればいいなという想いもあります。
ライブ配信「上野の部屋」の様子/チャットに寄せられた質問に答える場面も
――撮影は上野さんのご自宅ですね。ご自宅で、リラックスした素顔を拝見すると、上野さんとの距離が凄く近くなった気がします。
やっているうちに、毎晩21時にそこに人が集まるというのが日課のようになってきました。友達ができた気分です。そこで、『上野の部屋』というタイトルにしました。
――でも、トークがうまくないとできませんね。音楽家であれば出来るというわけではない。
視聴してくれる方がいてくれるからこそ、喋れるんです。皆さんからリアルタイムに寄せられたコメントを見ながら話しています。どういうことを聴きたいのかなとか・・・コメントと会話していると、あっという間に1時間たってしまう。最初は30分を目標に始めたんのですが、1時間超えるのが当たり前になってきました(笑)
ライブ配信「上野の部屋」の様子/”おうち時間”でプラモデル作りをしていることを話す上野
――『上野の部屋』がきっかけになって、コロナ収束後にコンサートに足を運んでくれる方もいるのではないでしょうか。
6月10日(水)のオンラインコンサートのことを生配信で話したときに、「聴くのはこれが初めてです」という方も結構いらっしゃいました。嬉しかったですね。YouTubeの生配信に来てくれるようになったけど、実はまだコンサートに来たことがないという方とは、もしかしたらこういう機会じゃないと出会えなかったかもしれないと、思ったりします。
アットホームながら、本気の演奏を聴いてほしい
――6月10日(水)に配信されるStreaming+での『配信小屋』について聞かせてください。
これまで、遠いところに住んでいるのでコンサートに行けないといった声を沢山いただいてきました。インターネットのコンサートには、コンサートに行ってみたいけれど、少し怖いなと思っていたり、クラシックコンサートにハードルを感じている方に、ちょっと見ていただくという気軽さもあると思います。本当は、コンサートホールに来てほしいけれど、その前段階として楽しんでいただけるのでないかなと期待しています。
――『配信小屋』は上野さんが名づけたのですか?
ええ、日本語がいいなあと思って。芝居小屋…みたいなニュアンスです。「劇場」ではなくて、もっとアットホームな感じを出したかったんです。今のこの状況を受けて、貴方のお家がコンサートホールになりますよという想いから『配信小屋』という名前にしました。
『配信小屋 Vol.1上野耕平×山中惇史』
――コンサートホールとは違った、ネット配信ならではの良さはどういったところにあるのでしょう。
ネット配信の一つのメリットは、カメラのアングルにも依りますが、普段見られない指の動きや口の動きをみられたりする点です。『配信小屋』では、皆さんからリアルタイムにコメントを投稿してもらって盛り上がりたいと思っています。演奏中に誰かが「ココがいい!」と思ってコメントを書いたら、「私も」、「僕も」と続く。コンサートホールだと、静かにしなきゃいけないのでそれは出来ませんね。ご自宅でどんな風に聞いていただいても構わないし、集まってくださった皆さんの中にインタラクションが生まれてほしいですね。
――演奏曲を教えてください。
コンサートで演奏する予定だった曲や、サクソフォンの音色で、そしてVol.1ゲストのピアニスト・山中惇史さんとの演奏で聴いてほしいものを並べました。また『上野の部屋』で頂いたコメントも参考にしました。皆さんご存知の「G線上のアリア」、ビゼーの「カルメン・ファンタジー」、そして家でぜひ聴いて欲しい作品として「バザンのロマンス」、シューマンの「3つのロマンス」を選びました。
――共演するピアニストの山中さんとは、長らく共演を続けてらっしゃいますね。彼の演奏の魅力はどんなところなのでしょうか。
最初に音を出したときに、僕に見えない世界が見えている人だなって思いました。ずっとデュオでやってきましたが、音楽性は全然違う。違うけれど、それぞれの良さを足し、掛け合わせながら二人で音楽をしているというフィーリングがあります。だからこそ、一緒にやりたいと思えるんです。
山中惇史
――『配信小屋』の今後を含めた活動の予定を教えてください。
『配信小屋』では、レヴによるコンサートが予定されています。ネット上での活動で「掴み」を提供できたらいいなと思っています。そして、奥に入ってきていただいて、音楽を知ってもらう。一番奥にはコンサートホールがあって欲しいですね。オンラインでのコンサートは、同じ空気を共有する前段階、あるいは、ちょっと違った楽しみ方だと思っています。いくら素晴らしくなったとしてもオンラインが生演奏に代わるとは思いません。コンサートホールで同じ空気を共有することに勝るものはないと思います。
――最後に楽しみにされているお客様へメッセージをよろしくお願いします。
まずは、「お待たせしました」と言いたいですね。3月以来、ずっと楽しみにしていただいてきた方が沢山いる中で、ようやく、ちゃんとフルで聴いていただける機会を設けることができました。そういった方には、是非、周りの人をこの音楽の沼に引きずり込んでほしいですね(笑)。コンサートホールには、なかなか引っ張っていけないとしても「こんな面白い世界があるよ」と広めて欲しい。皆さんに楽しんでいただくべく、頑張ります!
取材・文=大野 はな恵

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