新国立劇場バレエ団、巣ごもりシアタ
ー3作目は、5/29から小野&福岡『ロ
メオとジュリエット』~若き恋人の情
熱が疾走! 

【動画】3分でわかるバレエ「ロメオとジュリエット」
新国立劇場がオペラやバレエなど、過去の上演作品をオンラインで配信する「巣ごもりシアター」では、2020年5月29日(金)15時から6月5日(金)14:00まで、ケネス・マクミラン振付によるバレエ『ロメオとジュリエット』(2016年11月4日収録)を上映する。バレエとしては先に配信された『マノン』、『ドン・キホーテ』に次ぐ3作品目で、ジュリエット役は小野絢子、ロメオ役は福岡雄大。上演当時、絶賛の声が止まなかった舞台である。
■若い2人の恋人が全力で駆け抜ける、疾走感あふれる物語世界
「ドラマティックバレエの名作」「傑作」と称されるマクミラン振付『ロメオとジュリエット』は1965年、英国ロイヤルバレエ団で初演されて以来、世界各国の著名なバレエ団で上演されている。新国立劇場バレエ団ではこの作品を2001年にレパートリーとして取り入れ、初演時から2016年に至るまで、ヴィヴィアナ・デュランテやロバート・テューズリー、デニス・マトヴィエンコ、「マクミランのミューズ」と称されたアレッサンドラ・フェリ、アンヘル・コレーラ、ワディム・ムンタギロフ等々、海外の錚々たるダンサーをゲストに迎えながら上演を重ね、育ててきた。「ドラマティックバレエ」を柱に掲げる大原永子芸術監督の、最終シーズンとなる2019/2020年シーズンの開幕演目としても上演されているので、直近でご覧になった方々もいるだろう。
撮影:鹿摩隆司
今回配信される映像は2016年11月の公演。主演を務める小野と福岡は2011年にそれぞれの役のデビューを果たしているが、その時のパートナーは、小野はマトヴィエンコ、福岡はバレエ団の本島美和。この2016年の舞台は二人がこの演目で初めてペアを組んだ公演であるという点も、見どころのひとつといえよう。
そうした二人の舞台で非常に印象的であったのは、13歳のジュリエット、17歳のロメオの、恋に落ちた若い二人が情熱のままに疾走するスピード感だ。小野演じるジュリエットの、あどけない少女が恋を知りあれよあれよと成長していく様、ロメオが去った後にパリスとの結婚を迫られ乳母に裏切られた時の絶望感、ロメオへの愛を貫くという孤独な戦いの決意など、一つひとつのシーンが名場面である。無論、福岡との息の合ったバルコニーのパ・ド・ドゥは恋の喜びと幸福感が弾け、寝室のパ・ド・ドゥはもう会えないかもしれないという悲しみで胸が張り裂けそうになる思いがヒシヒシと伝わるなど、このペアならではの情感世界も存分に表現され、見応え満点だ。
撮影:鹿摩隆司
■キャピュレット夫人やティボルトなど、脇を固めるダンサー達にも注目
主人公を取り巻く人物たちもぜひ注目していただきたい。マキューシオはこの時が初役となる木下嘉人。奥村康祐が踊る世渡りの上手そうなベンヴォーリオともども、福岡と息の合った三人組を演じている。菅野英男演じるティボルトは品行方正そうな中にも不遜な雰囲気を漂わせ、独特な存在感を放つのが魅力。入念なリハーサルを繰り返すという男性陣のソードファイトも見どころの一つである。
撮影:鹿摩隆司
今では名キャピュレット夫人の本島美和も2016年のこの公演が初役で、2幕の最後を締めるシーンは圧巻の一言に尽きる。パリス役で出演する渡邊峻郁は、これがバレエ団入団後の本公演初舞台。この3年後の2019年公演でロメオを演じ、プリンシパルに昇格したことはファンの記憶にも新しいところだ。
また新型コロナウィルスによる自粛期間中に行われていた福岡雄大instagramライヴトーク(いつしか「雄大の部屋」と呼ばれている)で、「実はロザラインの友人は、ロザラインが好き」という衝撃的な裏設定が飛び出している。果たして収録映像がどこまでフォローしているかは定かではないが、そうした細かいところも興味のある方はぜひチェックを。
ライヴトークで小柴富久修が思い出に残る役として挙げたマンドリンソリストもこの日のキャストだ。ちなみに1幕のバルコニーのパ・ド・ドゥでの福岡は「お客様に背を向けているが、とても幸せそうな表情だった」というバレエ団員の証言もあったので、その背中も注視してみたい。「舞台上に無駄な人物はひとりもいない」というマクミラン作品では、ダンサー達もそれぞれに役の人物を生きている。何度も観返すことができるのも、配信の醍醐味なので、ぜひ隅々まで味わい尽くしてみてはいかがだろう。
撮影:鹿摩隆司
なお、配信の始まる5月29日(金)14時45分から10分間、先のインスタグラムによるライブで、主演の小野と福岡が見どころについてのライヴトークを行う。10分間という短い時間だが、時間の取れる方はぜひ、こちらも聞いてみていただきたい。ダンサーが直接作品について語る、またとない機会だ。

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