チャットモンチー、LoVendoЯ、tric
ot……独自のプレイが光る女性ギタリ
スト6選

 そして、日本にも多くの女性ギタリストが活躍している。

 アメリカでスコット・ヘンダーソンに学び、先述のオリアンティと共に「世界で二人しかいないPRSの女性モニター」として知られる安達久美、同じくアメリカの音楽学校・MI(Musicians Institute)出身、宇多田ヒカルを始め多くのサポートで知られる菅原潤子、KinKi Kidsのサポートやビリー・シーンとの共演も果たしたJikkiなどの実力派がいる。ロックバンドでは元ナンバーガールの田渕ひさ子などが人気だ。

 そんな中、独自のスタイルでJ-Rockシーンを切り開く女性ギタリストたちに注目してみたい。

(参考:シドShinji、ELT伊藤一朗UVERworld克哉 & 彰……実は凄腕なギタリストたち6選)

・みんなの爆裂先輩 キダ モティフォ(tricot)

 00年代のポストロック・オルタナティブの象徴ともいうべき、起爆要素たっぷりのギタリスト。歌に絡みついていくオブリガード、分散和音を巧みに利用したアルペジオとパッセージ、鋭くも痛すぎないカッティング。音色のバリエーションよりも、弾くフレーズで楽曲の世界観を作り上げている。変拍子や突発的な楽曲展開を自在に操るドラマチックな激情ギターはtricotの緻密な幾何学音楽を象徴するものだ。

 インストのバンド経験もあり、垣間見えるフュージョン的な“おしゃれコード”や、7th (#9th) の“ジミヘンコード”にスティーヴィー・レイヴォーンのブルース魂を感じてみたりと、さりげない引き出しの多さも魅力である。フロント+センターのみ、リアなしというピックアップ構成のオリジナルのストラトモデルにも強いこだわりと独自のセンスを感じる。

・実力派ツインギター LoVendoЯ(魚住有希&宮澤茉凜)

 ポップなルーツを持ちながら、男前なギタープレイが印象的な魚住と、典型的なハードロック指向の宮澤の滑らかなフィンガリングが織りなす実力派の2本のギター。

 2013年3月のステージデビューより、精力的なライブ活動を通し、バンドとして、そしてギタリストとして、元・モーニング娘。田中れいなに決して引けを取らない存在感を放っている。現在のシーンにおいて、ここまでハードロック様式美ツインギターというのも珍しく、総勢4000人からのオーディションで選ばれた定評のあるテクニックは、華のある雰囲気とともに新世代のギター・ヒロイン像を期待させる二人である。

・心地よすぎるオルタナ・ギター 橋本絵莉子(チャットモンチー

 二人編成になり、各楽器の持ち回りやサンプリング・ループを駆使した型にはまらない演奏形態で、その発想力と類い稀なる才能を開花させた。だが、チャットモンチーと言えば、最小編成のボーカル+ギターバンドとしての理想形とも言えるトリオ時代の飾らないギターが印象的である。

 派手さや特筆するようなテクニックがあるわけでもない。弾き語りに近い、シンプルな歌の伴奏である。だがそれはリズムや譜割りといった表面上収まることのない、歌と感情に合わせたエモーショナルな人間味溢れるもの。歪み過ぎず、適度に荒々しい極上のテレキャスタートーンは印象的な歌声と相まって、何より聴いていて心地よさを感じるのだ。

・美轟重音の咆哮 Wata(Boris)

 黒のレスポール・カスタムに極太ゲージ、積み上げられたオレンジアンプ。無表情にも見えるうつむき加減の静かな姿に反して、放たれる歪んだ重低音ギターは、その辺の轟音と呼ばれるサウンドですら霞んでしまうくらい、聴覚の奥にまで訴えかける音の洪水である。

 Borisはヘヴィロック、メタルからノイズ、インプロヴァイゼーションなど実験要素を含めたジャンルを自由に行き来し、世界を席巻するバンドだ。近年では映画『告白』サントラやDEAD ENDトリビュートへの参加など、その音楽性は多岐に渡るが、根底としてあるのはキャッチーでストレートなロックだったりもする。その機軸の一つとなるのが、サイケデリックなギター。往年のクラシックロックを彷彿とさせる骨太なリフであり、ダイナミックなフレーズの数々だ。

 身体はもちろん、空気とともに緊張感までも容赦なく震えさせる歪んだギターに、別世界を体感するだろう。

・虚無と写実が交錯するゴシック noah(101A

 「鋭利な轟音とセイレーンの歌声」は言い得て妙、ヨーロッパを始めとし、海外でも評価の高い、101A(ワンゼロワンエー)。無機質な冷たさを感じながらも心の隙間にすっと入り込み、サウンドから絵や情景が浮かぶ、そんな稀有な存在のバンドである。

 シューゲイザーといえば、モジュレーションや空間系エフェクトを多用し、音の壁を作るバンドが多い中、必要最低限の音数でその間(ま)さえも巻き込む渾然一体の世界。美しくも耳をつんざくようなグランジ・ギターサウンドから、今の日本の音楽シーンで忘れさられようとしている頽廃美を気付かせてくれる。

・麗しのハードロックギタリスト 五十嵐sun-go美貴(SHOW-YA

 最後は80年代のバンドブームはもちろんのこと、2005年のオリジナルメンバーでの再結成以来、今なお「NAONのYAON」を始めとし、ガールズバンドシーンを牽引するバンドだ。メンバー全員50歳を過ぎてますます進化を遂げている。

 中村美紀(Key)、角田美喜(Dr)に続いて3番目に加入した「3号"sun-go"」。女性ギタリストという枠で括るのが恐れ多いほどの研ぎ澄まされたテクニックの持ち主である。低音弦の刻みからライトハンド、マイナースケールを主としたギターソロ、アーミング、どれを取ってもハードロックの醍醐味が満載の絢爛たるプレイ、誰もが憧れるようなリフ、フレーズのオンパレード。特に開放弦を絡めたプリング・オフは彼女の十八番であり、リフでもソロでも、SHOW-YAサウンドに欠かせない顔にもなっている。テクニックだけにとどまらず、いかにギターを華麗にカッコよく弾くか、そのシルエットやアクション、定番の“ギター回し”、どのアメリカ人のギタリストよりも凄味のあるLAメタルっぷりを発揮している。

 男性に負けないパワフルさとアグレシッブなスタイルや、女性らしい繊細さと華々しいテクニック、はたまたギターを掻き鳴らしながら歌う椎名林檎のようなスタイルに憧れる同性も多いことだろう。それぞれのスタイルに魅力がある。そう、ギターを弾く女性の姿は何よりセクシーでカッコよく、美しいのである。(冬将軍)

リアルサウンド

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