おすすめ書籍:死ぬこと以外かすり傷/箕輪厚介(マガジンハウス刊)

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ロマン優光のさよなら、くまさん
連載第161回 箕輪厚介セクハラ 文春オンラインが報じた、幻冬舎の有名編集者・箕輪厚介さんが女性ライターに対して行ったとされるセクハラ疑惑及び不払い問題。
 この件が報道されることになった発端は、同ウェブサイトのエイベックス会長・松浦勝人氏の大麻使用を告発する記事にある。その告発者である元エイベックス社員で現在はライターのA子さんなのだが、16年に松浦氏と親しかったA子さんに箕輪さんが氏の自伝本(本人が書かないのに自伝とはおかしな話だが、本人へのインタビューを元にライターが再構成する文筆業でない人の「自伝」にはよくあるやつ)の取材・執筆を依頼。松浦氏も了承し作業は進行していったわけだが、内容に相続税逃れのために偽装離婚をしたと解釈されかねない部分があったために、それを恐れた松浦氏側からの申し入れで出版は中止になったという。
 その後、19年末に彼女と松浦氏との間に何らかの軋轢が生じ、松浦氏告発という流れになるわけだが、その件に関する取材過程で副産物として出てきたのが箕輪さんのセクハラ案件・不払い案件ということになる。
 編集者とライターという関係性の中で、強者が弱い立場の人間に性的関係を持ちかけることの問題。実際に出版されるまで正式な契約書がないまま作業が行われるという出版界の慣習の問題。これらについては既に多くの人によって語られているが、箕輪さん自体はその問題に関して全くの無自覚だったのかもしれない。それは無自覚だからいいという話ではなく、無自覚だからこそ根深いという話ではある。対等な立場で交渉していると思っていても、実際は対等に交渉できない関係性の中でそれが行われている場合は多い。そして、そこに悪気なく無自覚である人は多いのだ。立場を意図的に利用しようとしている人よりも、そういう無自覚な人の方が多いのだろう。
 この報道の後に箕輪氏は「トラップ。よろしくお願いします。」とTwitter上に投稿し削除している。この件について触れたものかは、はっきりと語られてはいないが、この状況でわざわざその件についてとしか思われないような投稿をして、何の説明もなしに消していることから、限りなく疑わしく思われている。もし、本当に関係ないなら、何に対してのものか説明すればいいし、こんな状況で紛らわしい投稿をして誤解を招いているとしたら脇が甘すぎる。まあ、この件について触れたものであっても、わざわざ世間の怒りを買うようなまねをしているわけで、何の得にもなってないし、どっちにしろ脇が甘いのだが。
 掲載されているLINEを見る限り、A子さんは相手の不興を買わないような上手い言い回しで断っているようにしか見えないのだが、箕輪さんはしつこく挑み続けている。あれを女性側の恋の駆け引きだと本気で思っていたとしたら、そうとう無神経な人間なのではないだろうか。経験則から、多少相手が嫌がっていても強引に押していけば何割かは落ちるみたいなのがあったのかも知れないが、さすがに強引すぎて驚いてしまう。
 この件がおこった16年末から17年頭にかけてというのは、出版業界の一部では注目を集めていたものの、世間的には今のようには有名ではなかった時期。こういう形で自分の行動が報道されることなど想像もしてなかっただろう。箕輪さんにしてみれば、松浦氏の大麻疑惑のとばっちりで昔のことが蒸し返されてしまい、いい迷惑ぐらいに思ってるかもしれない。それが単なる個人的な恋愛トラブルだったりするのなら、当事者同士の問題でしかない。しかし、この件は編集者とライターという関係の非対称が関わってくる話であり、社会的な問題が底に横たわっているために、単なるゴシップに終わらず、批判を集めることになってしまった。そこが箕輪さんには読めてないのではないか?
 そこら辺とは関係ない話なのだが、松浦氏の自伝本に対する関わり方に関しても疑問を感じた部分がある。A子さんの渡した原稿を読みすすめている段階で、内容に関して社会的に問題があることに気づかなかったのだろうかということだ。松浦氏自身が脱税のための偽装離婚の告白に成りかねないと気づいたために出版は中止になったわけだが、ライターとしては駆け出しであり実績もなかったA子さんはともかく、箕輪さんがそこに気づかなかったのは非常に疑問だ。犯罪者の告白本ならともかく、有名人の自伝本としたら色々と差し障りがあるわけで、そんなものを出版したら松浦氏のダメージも大きいし、そういう行為を肯定的に捉えているとして出版社にも批判が来る恐れはあるわけで、そこを軌道修正しようと話し合ったりせずに進めていったことは単純に疑問である。松浦氏の離婚という話題性に乗っかった企画であり、話題性が高い時期に出版することが目標であり、内容はなんであれかまわないという感じだったのだろうか? 記事中の見城氏の登場するエピソードも含めて、箕輪氏の編集者としての姿勢、方向性が伝わってくるような記事でもあるのかもしれない。
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