『FM802弾き語り部 リモート編♪』テ
レン松本大、SHE’S井上竜馬、ビッケ
ブランカが挑んだ前代未聞のオンライ
ンライブをレポート

『FM802弾き語り部 リモート編♪-at #オンラインライブハウス_仮-』2020.5.13(WED)オンライン_心斎橋BIGCAT
アコースティックライブイベント『FM802弾き語り部 リモート編♪-at #オンラインライブハウス_仮-』が、5月13日(水)にオンライン_心斎橋BIGCATにて開催された。
LAMP IN TERREN・松本大(Vo.Gt)がFM802にゲスト出演した際、「弾き語り部を作って部長になりたい!」と発言したことがキッカケに生まれた『FM802弾き語り部』。昨年は、もりのみやキューズモールBASEでの公開収録や、『New Acoustic Camp』、『Chillin‘ Vibes』などのフェスでの出張公演にも挑戦した『FM802弾き語り部』が、2020年に新たな試みとしてトライしたのが、「リモート編♪」と題した前代未聞のオンライン公演だ。
未曽有の新型コロナウイルス禍を受け、ライブを自粛せざるを得ない現状を打開すべく立ち上げられた画期的なプロジェクト、「#オンラインライブハウス_仮」とコラボレーションし、今年第一回目の公演をオンライン上の仮想空間であるオンライン_心斎橋BIGCATにて開催。自宅にいながらライブを楽しめるという実験的な取り組みをレポートする。
チケットを手に入れた限定80名の幸運なオーディエンスが、開場と同時に次々とログインしていく。もちろん、電車に乗って移動しなくてもいいし、立ったまま開演を待つこともない。いつもならそんな時間もライブがもたらす非日常と言えるが、オンラインライブはまさに日常と地続きの感覚。今まさに新しい音楽体験をしていると、ライブが始まる前からヒシヒシと感じる。
この独特の高揚感はとても新鮮だ。また、軽快なBGMをバックに、BIGCATでのライブの際に会場前に設置されている手書きの看板に、いつもと同じようにこの日の日付やイベントタイトル、出演者が描かれた画像が映し出されるという粋な演出に続いて、投げ銭方式で購入できる『FM802弾き語り部』特製のバーチャル背景の販売や、システムに関する問い合わせ方法のインフォ等が次々と映し出されるなど、開場中も手持ちぶさたになることはない。
ここで、まずはFM802のDJ・樋口大喜が画面上に現れ、テレビ中継を繋ぐかのように、普段はBIGCATほか多数のライブハウスを運営するアームエンタープライズの岸本優二氏を呼び出し、オープニングトークを展開。「#オンラインライブハウス_仮」の仕組みや使用するシステム=Zoomウェビナーの操作説明に加え、チャットではオーディエンスに出演者も入り乱れフライングでコール&レスポンスが巻き起こるなど(笑)、通常のライブではまず見ることのない光景が繰り広げられる。そして、ドリンクやお菓子を各自用意し待機中のオーディエンスの前に部長の松本大が満を持して登場し、いつもSNSにて配信を行っているという自宅の部屋から開演を宣言。本日のトップバッターであるSHE’ Sの井上竜馬(Vo.Key)にバトンを渡す。
井上竜馬(SHE'S)
「弾き語りは久しぶりで初リモート」と、日頃、楽曲制作を行っているという自宅の一室からレア過ぎる歌声を届けた井上の1曲目は、「月は美しく」。焦がれる恋心を歌うこの曲の<あなたに会えない わかっているから 余計に僕は寂しいのです>という歌詞が、まるでオンラインで繋がるオーディエンスとの関係性をも表しているかのようで胸に沁みる。とは言え、「独特の緊張感がありますね……」と、オンラインのオムニバスイベントという未体験のライブに、井上も思わず武者震いの様相。
井上竜馬(SHE'S)
「Say Ho!! (チャットを見て)すぐにレスポンスがある!(笑) すごいな。こういう挑戦はなかなか見たことがないし、歳を重ねると腰が重くなることがほとんどなのかなと思うんですけど、こうやって音楽を愛してる大人たちが先頭に立ってチャレンジしてくれたのがすごく嬉しくて。それが例え成功でも失敗でも、我々ミュージシャンにとっても、それを応援してくれる人たちにとっても、糧になると思うんで。何かターニングポイントを迎えたとき、始まりのときに聴いてほしい歌を歌います」
井上竜馬(SHE'S)
続く「Your Song」でも、楽曲に込められたメッセージを切々と歌い上げる井上。それに対するリアクションやオーディエンスの心の声=感想が、チャットにより同時進行で可視化されるのはオンラインならではで、オフラインでは見えない感情が浮かび上がってくる特性は非常に興味深い。「これ、一番難しいのMCやな……(笑)」とそんな初の試みに戸惑いながらも、「人と出会ったときの距離感の測り方って難しいなと、こんな歳になっても思います。愛おしいからこそ、ずっとずっとその人との距離を探していくんだろうなと思って書いた曲を聴いてください」と「Letter」を披露。物理的な距離は遠いはずなのに、画面に映る彼の部屋に招かれたような身近さで聴こえてくる歌声は、オーディエンスとしても新たな発見であり体験かもしれない。人数が限定されているからこそ生まれるであろう密室感が、こういったところでも絶妙に作用している。
井上竜馬(SHE'S)
「また面と向かって、顔を見合わせながら、音楽の鳴る場所でお会いできたら何よりだなと。それだけですね、僕らの願いは。普通ではない生活の中で得られたこともいっぱいあるけど、何でもない生活に、何でもないライブハウスという場所に、ただただ音楽が好きな人が集まって、泣いたり笑ったりできる場所を取り返せたらいいね。僕がまだ大阪にいたときに、そんな何でもない生活が愛おしいなと思って書いた曲を歌って終わりにしたいと思います」
井上竜馬(SHE'S)
最後の「aru hikari」まで、歌詞の世界観✕オンラインのシチュエーションが抜群に機能したセットリストで魅せた井上が、歌い終えた途端にホッと肩の荷を下ろす。実際は1人きりの空間で演奏しているため、いつものライブとはまるで違うプレッシャーもあったことだろう。ミニマムな演奏環境/視聴環境だったからこそ、SHE’ Sのメロディの美しさが改めて感じられた井上のパフォーマンスだった。
そして、二番手のビッケブランカは、最新アルバム『Devil』のジャケットさながらのパープルの照明に彩られた、要塞のような機材部屋からお届け(※後にこの日のために模様替えしたことが判明(笑))。「退屈ですね、毎日毎日。暇ではないけど退屈です(笑)。そんなときに何かしらの存在意義を確認できる場をもらえたことが非常に嬉しいです。短い時間ですけどよろしくお願いします!」との挨拶の後は、アップテンポでノレる「Winter Beat」で、チャットの反応を見ながら音量をチェックするフレキシブルさも見せながらグイグイ盛り上げていく。
かと思えば、「ライブができないのでいろんな曲を作る時間がいっぱいあるんですけど、これ見て! かわいいでしょ」と、自粛要請期間の間に手に入れたアナログシンセを画面越しに嬉々として解説するビッケ(笑)。そして、「今やれることがこれ(=曲作り)しかないんですけど、それを届けられるタイミングがきっと来るので。こういうシステムを作ってくれた、見つけてくれた、呼んでくれた皆さんに感謝したいと思います」と、今日という日を手探りで作り上げたチームをねぎらうのも忘れない。
ビッケブランカ
一転、「弾き語りだとやりたくなる曲があるんですけど……」と、感情が降り積もるように1つ1つ言葉を重ねていった「Your Days」はとても感動的で、チャットに次々と上がっていく感想を見ては頷き、親指を立てるビッケ(笑)。「ライブでやったことがあんまりないんですよね。人前に出たらテンションが上がって落ち着いていられないので(笑)。ここでやれてよかったです。こうやって皆さんがリアルタイムで反応してくれるとタイムラグもないし、歌ってる人間の気持ちが届くんだなという証明にもなるし。皆さんの反応がよければ、今は「#オンラインライブハウス_仮」ですけど、ちゃんと銘打ってやれると思うので」と語ったMCでは、6月17日(水)にリリースされる新曲「ミラージュ」の告知もさらりと織り交ぜながら、「一番最近作った曲、ちょっと聴きます?」と未発表のデモを聴かせる大盤振る舞いも。その様子は映像の画角もあってまるでラジオのブースからリスナーとやりとりしているようにも見え、『FM802弾き語り部』と「#オンラインライブハウス_仮」の相性の良さを感じさせる。
ビッケブランカ
「リモートでもまた会えたら嬉しいので。いずれ直接会えるだろうし、そのときを楽しみに。『FM802弾き語り部』と言えば、という曲があるので……部長が「この曲、大好きです!」と話しかけてくれたおかげで、今ではラーメン仲間になれたという思い出の曲を聴いてほしいと思います。「WALK」という曲です」
ビッケブランカ
アッパーでハイエナジーなライブが持ち味のビッケブランカだが、彼のソングライティング力が冴える必殺のバラードを多く聴けたのは、『FM802弾き語り部』ならでは、そして「#オンラインライブハウス_仮」ならではか。演奏後に「ハモってましたよ、こっちで(笑)」と茶々を入れた松本に、「入ってきてくれたらよかったのに!」と返したビッケブランカの、リモートでも個性と濃さが薄れない充実のライブだった。
ビッケブランカ
そして、トリを飾るのは当然、部長の松本大! 名曲「BABY STEP」でサウンドチェックするという贅沢な幕開けから、「heartbeat」をエモーショナルに熱唱する姿に呼応するかのように、チャットのタイムラインに手のマークが次々と上がる様は、通常のライブとは異なる新たなコミュニケーションがあることを実感する。続く「I aroused」でも、そのヒリヒリするような熱量がオンラインでもしっかりと伝わり、ゆえに「弾き語りって盛り上がりづらいんで、みんなが手を上げられるような歌も歌おうかな。コメントを見ながら歌ってるんで、がしがしリアクションください!」なんて懸念は取り越し苦労。「地球儀」では言わずもがなの盛り上がりを見せ、オーディエンスの歌声がチャットの文字からも聴こえてくるかのよう。
松本大(LAMP IN TERREN)
「楽しめてますか? 不安だわ、声が聞けないから。家にいる時間がものすごく長くて、何かできることがないかなと考えて、パッと作った曲のデモ音源をYouTubeに上げたので(=「宇宙船六畳間号」)、ぜひ聴いてみていただきたいなと。あと、今月中にレコーディング済みのバンドの音源をリリースするんですけど、「Enchanté」という曲です。フランス語で「はじまして」のときに使う言葉だそうです」と語った後は、特別にワンフレーズ歌ってみせる何とも嬉しいひと幕も。
松本大(LAMP IN TERREN)
「世の中が大変なことになってる中で、配信のライブができて本当にありがとうございますなんですけど、そうなる前に、何も変わらない日常を歌にして届けてすぐ、日常が様変わりして……。何だか不思議な状況の中に迷い込んでると思いますけど、だからこそ、次に会える楽しみを膨らませましょう。向き合うべき仕事、日常、つまんなさ、退屈……どこにいたって愚痴ってこぼれるもんだなと。うまくいかないことばっかりですけど、こういう時期だからこそ、愛を込めてお届けします、ありがとうございました」
松本大(LAMP IN TERREN)
音楽は時代で、環境で、感情で、響き方が変わる。そんな事実と愛おしさを噛みしめながら、ためらいの中で必死に放たれた「いつものこと」にじっと聴き入る。オンライン上でも、遠く離れた人たちと気持ちを通わせられることに、音楽という媒介の底力を感じる。それを証明するかのような、松本大のタフなステージだった。
松本大(LAMP IN TERREN)
最後には出演者が勢揃いし、「最近はなかなかしっかり歌うことがなかったので、ありがたかったですね。普通にファンとしてお酒を飲んで聴いてました(笑)」(井上)、「楽しかったです! (オフラインと)全く遜色なく2人のライブも見せてもらって」(ビッケブランカ)、「ステージドランカーみたいな感覚になりました。もう普通の人には戻れないんだなぁ、なんて(笑)」(松本)と、各々が感想を述べる。オーディエンスに向けた5秒限りのスクショタイムも設けられるなど、「ON/OFFも見え隠れするのがリモートならでは」とMCの樋口が語ったのも納得の、全員最前席のここだけの空間。そう遠くない未来での再会を約束しつつ、『FM802弾き語り部』にとっても「#オンラインライブハウス_仮」にとっても、ライブの新しい在り方を提示する記念すべき一夜となった。
『FM802弾き語り部 リモート編♪-at #オンラインライブハウス_仮-』
取材・文=奥“ボウイ”昌史 

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