記憶に語りかける歌。MIZが奏でる憩
いの音楽を紐解く

川のせせらぎ、鳥の鳴き声、子供の声ーー再生ボタンを押すと、都会の喧騒から離れた自然豊かな空気が耳へと流れ込んでくる。MONO NO AWAREの玉置周啓と加藤成順によるアコースティック・ユニットMIZが、初のアルバム『Ninh Binh Brother`s Homestay』をリリースした。全編ベトナムのニンビンでレコーディングした、情緒溢れる一作である。これまでアナログでしかリリースしてこなかった彼らだが、本作はストリーミングやCDでも聴くことができる。MIZの音楽に触れる機会がなかったリスナーも、是非耳を傾けてほしい。モデルにKings of Convenienceを挙げるのも頷ける。朴訥としていて、静かで、穏やかな時間を提供してくれる音楽だ。目を閉じれば、あなたの大事な古い記憶が呼び起こされるかもしれない。

日本情緒を感じる歌

ー ベトナムのニンビン、調べると凄く綺麗な風景が出てきますね。

インタビュイー画像

加藤成順:

僕も行ってみてびっくりしました。宿泊する予定だったハノイのホストさんが泊まる数日前に逮捕されちゃって、初日に予定を変更することになったんです。

ーそれは凄い(笑)。

インタビュイー画像

加藤成順:

ただ、バイクの音が凄いし、街が騒がしいからそもそもハノイはレコーディングに向かないんじゃないかって話しになって。それでもっと田舎へ行こうということになり、みんなで急遽調べてニンビンに向かいました。
インタビュイー画像

玉置周啓:

普通に牛が道を歩いていたよね。
インタビュイー画像

加藤成順:

うん、めちゃくちゃいた。

ー出来がったアルバムに対してどんな手応えを持ってますか。

加藤成順:
ベトナムの空気感を音でも写真でもミュージックビデオでもパッケージングできたのがよかったですね。全てあっちでレコーディングしたんですけど、地下のスタジオでやることの多いバンドでのレコーディングとは違って、今回は思い切って部屋の明かりの中で窓も開けて録ることに挑戦しました。行ったことない人でも、ベトナムの空気感を楽しめるアルバムになったんじゃないかなと思います。
ー何故ベトナムで録ろうと思ったんですか?
玉置周啓:
MIZは元々ライブハウスではなく、美容室や居酒屋等の生活空間で演奏するというコンセプトがあったので、その感じを音源にも落とし込みたいというのが第一の意思としてありました。それであれば自然の音を入れようという発想が第二にきて、それをエンジニアの奥田さんに相談したところ、海外の水の綺麗なところで録ったらいいんじゃなかという話になりました。そこで僕が5年前に旅行に行った、ベトナムが合いそうだなと思ったんですよね。
ー生活に密着したところで演奏するというコンセプトは、どういう発想からきたものですか?
加藤成順:
アコースティックで演奏しようと思ったら、ライブハウスでやることがすべてじゃないよなっていう気持ちがあって、リスニング系の音楽なら、空間が良い場所でやることによってより音楽として活きてくるんですよね。ふたりでやるのなら動きやすいし、最初に作った「パジャマでハイウェイ」と「君に会った日は」の空気感もあって、そういうコンセプトに決まっていきました。
ーその段階で音楽性としてのモデルはありましたか?
加藤成順:
僕と周啓の好きなアーティストにKings of Convenienceがいたので、僕達もアコギを弾くと自然とああいう感じになったかなと思います。僕らには激しいものより、落ち着いた感じがしっくりくるのかな。
ーなるほど。ただ、Kings of Convenienceと共通の音楽性は感じつつ、もっと朴訥としていて、日本の田園風景を思わせる土臭い楽曲だとも思います。
加藤成順:
そうですね。日本っぽさが出たら良いなって凄く思います。
ーおふたりにとっての「日本らしさ」とは?
加藤成順:
僕は八丈島出身なので、日本らしさを一番感じるのは湿気ですかね。じめじめとした雨上がりの気候の時に凄く感じます。
玉置周啓:
僕も同じですね。日本の風土で一番好きなものが湿度で、あの嫌なじめじめとしたところに日本っぽさを感じます。今回レコーディングの場所にベトナムを選んだ理由もそこにあって、同じ頃旅行に行ったタイやカンボジアと比べても、ベトナムが一番じめじめしているイメージだったんですよね。1月に行ったんですけど、ベトナムならその時期でも昼は暖かく夜は涼しく、湿気を帯びる気候だったので曲にマッチするだろうなって思いました。
ー確かにそのじめじめとした感覚は音楽にも表れていますね。
玉置周啓:
元々じめじめした音楽が好きで、Thom Yorke(トム・ヨーク)とか暗い感じがドンピシャなんです。MIZではKings of Convinienceに憧れて作っているところもあります。ただ、僕はコピーが上手じゃないので、Kings of Convinienceっぽく作ろうとしてもそうはならなくて、結果的に言語化できない日本っぽさが出てきているんじゃないかなと思います。
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