【Bearwear インタビュー】
時代に対する悲観を
体感したからこそ、
“今そういう状況なんだよ”と
共有したかった
シンパシーのある身近なバンドから
影響を受けることはかなりある
今作を前後半に分け、先行配信で2作品のEP『:2222』『:P.S.』をリリースされています。どんな想いで計画をされたのでしょうか?
Kazma
ふたつのEPに分ける計画よりも前に、2本の映像作品を出したいという発想が先にありました。一曲ずつのMVではなく、アルバムのコンセプトや僕らのマインドがより伝わりやすいように短編映画のような『:LIVING IN THE ECHO CHAMBER (Episode 1)』と、Visualizerの『:LIVING IN THE ECHO CHAMBER (Episode 2)』の制作にとりかかり、その流れで配信も2部構成でのリリースすることになりましたね。サブスク普及へのカウンターなのか分からないですが、僕らの好きなバンドもコンセプト色が強いアルバムのリリースが2019年末と2020年初頭は多かったので、今回のアプローチはその時代の流れを汲み取った自然な構想でした。
アルバムを初めて通して聴いた時、「2222」から「The Door」のつながりがあまりに心地良すぎて、気付いたらトラック3になっていたので驚きました。この曲順は意図して配置されました?
Kou
曲順は最初から構想通りで、ひとつの長い曲を作るような気分で制作しました。「2222」と「The Door」では同じメロディーを使い、「The Door」と「Thoughts, Views, and Different Layers」では同じピアノシーケンスを使っています。この2曲に関してはテンポもキーも同じで、ギターアルペジオリフもリズムや音色こそ違えど同じフレーズを使っており、ヒップホップのサンプリングのようにコラージュしています。
アルバムに収録されている楽曲で、特に制作で大変だった曲や想いが強い曲はありますでしょうか?
Kazma
前半3曲が“夢と非現実世界”にフォーカスを当てた歌詞なのですが、この1年間自分の夢や精神世界と向き合ってきたことが反映されているので、思い入れはとても強いです。
Kou
最後の曲「I Think」は構想をパッケージングした作り方とは違い、Kazmaとふたりでスタジオに入って途中まで作りました。この作り方はBearwearとして初めての作り方で、今後も挑戦したい制作方法です。もともとはこの曲以外の5曲でアルバムを完結させたつもりでしたが、内省的なアルバムとの対比で外向きな曲が欲しくなり、最後のピースにしました。
特に「Thoughts, Views, and Different Layers Feat.miraco(揺らぎ)」を聴いた時にこれまでのBearwearとは違い、より一層楽曲表現の幅が広がったことで、すでに次回作が楽しみになりました。もともと表現したかったアプローチなのでしょうか?
Kou
今までよりも鋭い表現がしたく、シューゲイザー、ベッドルームポップ、インディーロック、ヒップホップ、エレクトロなど、ジャンルを限定せずに自分が好きなもの全てからインスピレーションを湧かせました。今はジャンルやスタイルに縛られないままエッジーな音楽を作っているアーティストは世界でも増えていて、そういうムード自体に影響を受けたというのが一番適切かもしれません。3曲を作った当時はFrank Ocean、Mura Masa、THE 1975、カニエ・ウェストあたりを聴いていて、制作途中に新たにリリースされた作品にも、その都度インスパイアされていました。
「P.S. Feat.明智マヤ(THEティバ)」「I Think」はライヴ経験を経てバンドアンサンブルに寄り添った楽曲だそうですが、ライヴから得たものはありましたか?
Kazma
「P.S.」はすでにライヴでやっているのですが、ライヴ会場に明智マヤが居合わせた時は、その曲だけステージに上げて歌ってもらっていて、そのラフに飛び込む雰囲気がハードコアのマイクジャックや、ヒップホップのクルーが全員ステージ上にいる状況と近いものを感じています。音源で評価されがちだったBearwearでやっとライヴならではの楽しみも増えてきて、ライヴ活動がかなり楽しくなりました。
Kou
『DREAMING IN.』を出した当初はライヴもあまりやっておらず、音楽の聴き方もライヴハウス、クラブで聴くよりも家や電車内など、ひとりでイヤホンを通して聴くことのほうが多かったんです。それが前作リリース以降、生活の中でライヴシーンにいる時間の割合が増え、現場で鳴る音楽が自分にとってリアルになってきました。ひとりで聴く人に向けて作るのと、ライヴハウスにいる友達の顔を想像しながら作るのでは、ビート感やテンションも変わってきますね。
miracoさんと明智マヤさんが参加している2曲については、Kazmaさんとふたりそれぞれの声が加わることでサウンドの広がり増し、より独自の世界観が生まれているように思いました。以前も女性ヴォーカルの参加はありましたが、今回はなぜふたりを選ばれたのですか?
Kou
「Thoughts, Views, and Different Layers」は最初からmiracoが所属するバンドの揺らぎから影響を受けて制作にとりかかりました。ドラムでサポートしてくれているゆうやにこの曲を聴かせた時、揺らぎの名前を出してもいないのに最初の数秒で“揺らぎっぽい!”って言われたのは今でも印象に残っているやり取りです。「P.S.」もTHEティバや明智マヤがソロで弾き語りしている音源を普段からたくさん聴いていて、自分が作ったメロディーや曲が放つ原風景っぽい雰囲気が自然とマヤのイメージにハマったのでお願いしました。普段からシンパシーのある身近なバンドから影響を受けることはかなりよくあります。