L→R AKAHIGE(Dr)、MJM(Vo&Gu)、†NANCY†(Syn&Ba&Vo)、NIKE(Gu)

L→R AKAHIGE(Dr)、MJM(Vo&Gu)、†NANCY†(Syn&Ba&Vo)、NIKE(Gu)

【BALLOND'OR インタビュー】
2020年だからこそ
やれるロックを作りたかった

「C.R.E.A.M」で歌っている気持ちが
BALLOND'ORの正体だと思った

あえて“DINER”を“DIE-NER”と綴っているところがらしいです(笑)。この曲ではどんなことを言いたかったのですか?

MJM
今って映画も音楽もネットで手軽に観たり聴いたりできる便利な世の中になってきているじゃないですか。もちろん、自分も便利に使うんですけど、一方では何かひとつのものに対する情熱が失われているような気もしていて。いろいろなものをちょこっと食べて、全部知った気になって、また次に行くっていう、そのスピードがすごく上がっている。僕が中学生の頃はお小遣いもそんなにないから1枚のCDを半年お金を貯めてやっと買ったり、国内盤よりも安い輸入盤を買って歌詞は自分で訳したりしてた。そういうことを通して自分が成長した部分もあるから、いろいろなことを知ることができるのはいいことだと思いながら、そういう情熱も忘れられないしって。これは2020年じゃないと言えないというところで出てきた感情なんですけど、バイキングに行って、食べ放題だからひと口食べて残してる…みたいな光景が自分の中では重なって。

それで“DINER”なんですね。

MJM
ええ。いろいろなものをちょこっと食べるっていうのは、もしかしたら流行や周囲に話を合わさなきゃいけないという強迫観念があるのかもしれない。それは自分が小中学生だった頃、クラスにいる38人全員が好きなものがあって、ふたりだけが好きじゃないとなると、そのふたりが悪い奴になる経験をしているから分かるんですけど。SNSが登場してから僕はそのクラスっていうのが、無限に膨らんでいるというか、SNSの中にそのクラスの延長が存在しているような気がしているんです。「DIENER」では“それでも自分が本当に好きなものは諦めないぞ”っていう情熱は大事にしていきたいと言っているんです。

いわゆる同調圧力には屈しないぞと。そこですよ! かつて、MJMさんが感じていたような同調圧力や疎外感に苦しんでいる人たちは、MJMさんがおっしゃるように昔よりもいっぱいいると思うのですが、そういう人たちにとってBALLOND’ORはMJMさんが勇気をもらったBLANKEY JET CITYやTHE DAMNEDのような存在になれるんじゃないかと僕は考えているのですが。

MJM
バンドを始めた時、クラスの全員にウケける音楽ではないけど、クラスの中にひとりくらいは同じような奴がいるだろうとは思っていました。そのあと、メンバーや現在のレーベルのスタッフと出会ったことで、そういう人たちはまだまだたくさんいると思えるようになって、各地にいるまだ出会えていないメイトたちに会いに行きたいという気持ちはあります。

そのメイトたちを増やしていきたいという気持ちは?

MJM
増やしていきたいというよりは、感覚で分かり合いたいです。それって最高のことじゃないですか。ロックって感覚で分かり合うっていう。言葉だけじゃないし、音だけじゃないし、アートワークとか、ライヴハウスの匂いとか、そういう全部の感覚を使って楽しめる最高の行為だと思っているんです。その行為を中3で発見した時、誰かとこの感覚を共有したいと死ぬほど思ったんですけど誰もいなくて、こんなに最高なことを誰とも分かり合えないなんて寂しすぎると思ったんです。だから、同じ感覚の人たちに死ぬほど会いたい。日本にもまだまだいるだろうし、世界にもいるだろうし、目標なのか何なのか分からないですけど、そういう人たちに会ってみたいという欲はすごくあります。ただ、これはいつも思っているんですけど、自分たちの音楽で誰か救いたいわけじゃないんです。社会を変えようなんて気持ちも全然ない。でも、僕らみたいにこんなクソな人生を毎日送っている人間でも、こういう音楽を作れるんだって胸を張って言えるものを出しているとは思っています。だから、どんな酷い状況だったとしても“BALLOND’ORを聴いたら何かやれる”と思ってもらえるようなものになってくれたらめちゃめちゃいいなと思っています。

アートワークという言葉が出ましたが、今回は現代美術家のシモダヒカリさんの作品を使っていますね。

MJM
世界的に活躍している作家さんなんです。僕らが結成したばかりで、メンバーもまだ集まっていない時にNIKEくんとライヴのVJと3人でアート展巡りをしていたんですよ。そこでたまたま作品を見て、動けなくなっちゃうくらい衝撃を受けたんです。その時は現在のようなかたちで活動できるなんて全然分かっていなかったから、そんなことは考えもしませんでしたけど、こうやってCDをリリースできるようになって、ずっと憧れていたシモダさんのアートと交われたらすげぇカッコ良いと思ったんですよ。そしたらスタッフが尽力してくれて、実現したんです。
NIKE
シモダヒカリさんの作品と今作をマッチメイクしたいとMJMが思った時、漠然となんですけど、感性が通じ合う人なんじゃないかと思いました。だから、そういう気持ちは伝わるんじゃないかって。

さて、毎回聞かせていただいていますが、それぞれに今回のフェイバリットナンバーを1曲ずつ教えてください。

AKAHIGE
僕は「DAYDREAM」。曲として持ってきた時、メロディーが頭から離れなくなったのと、プレイも何度も作って直してっていうところで一番思い入れのある曲ですね。
NIKE
僕は「C.R.E.A.M」。
MJM
ほんとに? この間、「UNITED」って言ったよね(笑)。
NIKE
聴いていくうちに変わっていくのかもしれないけど(笑)、ある意味「C.R.E.A.M」は触りづらい。でも、触れてみると、すごく懐かしい。歌詞のある一節がきっかけで、僕はすごく好きになったんですけど。
MJM
どこ?
NIKE
いや、それはちょっと(笑)。聴いた人がそれぞれに感じてほしいです。一行一行の中にたくさんのエピソードが感じられて、これはひとつのことを歌っているわけではないなと思えたんです。だから、聴いた人それぞれの受け取り方が無限にある。BALLOND’ORにとって音楽とか、音楽を通してつながるとかって、「C.R.E.A.M」で歌っている気持ちみたいなことだと思うんですけど、同時にそれがBALLOND’ORの正体だと僕は思いました。
†NANCY†
2曲、言っていいですか?(笑) 「DIENER」と「STARPACKER」なんですけど…あっ、「PURPLE JUICE」も(笑)。時期によって変わるので、今答えるなら「DIENER」と「STARPACKER」です。「DIENER」は歌詞がすごくMJMっぽく、共感できる部分があります。「STARPACKER」はメロディーがいい。ずっと聴いていたい心地良さが好きです。

確かに。「STRAPACKER」と「LAST SMILE」。この最後の2曲はおっしゃるように、いつまでも聴いていたい心地良さがあります。

†NANCY†
MJMのピュアさがすごく出ていると思います。

そして、MJMさんは?

MJM
1曲だけって、ほんと難しい(笑)。「SCUM TRUCK」を作った時、すごく好きな曲ができたと思えたので、最初はそれを中心にアルバムを作りたいと思っていたんです。でも、それを超えてくる曲ができてきて。だから、全曲好きなんですけど、ふたつ言うと「DAYDREAM」と「HELL SCRATCH」。「DAYDREAM」はみんなで演奏していると、とても気持ち良いからです。「HELL SCRATCH」は僕自身の趣味嗜好が出ているからかな。さっきも言ったように中学生の頃ヤンキーに目をつけられていて、しょっちゅうボコボコにされていたんですけど、その帰り道にレンタルビデオ屋さんで、とりあえずホラー映画を借りまくっていたんですよ。ホラー映画とか、バイオレンス映画とか、SF映画とか見ると、自分が異世界に行ってちょっと強くなったような気がしたんです。そういう痛みを解放する儀式が映画から音楽に変わっていったんですけど、当時は歌詞にもある『チャイルドプレイ』や、『グーニーズ』や、『霊幻道士』をカッコ良いと思っていて。振り返ってみると、いろいろな感情を解放できるという意味で、ライヴに近いものだったんじゃないかと思うんです。僕はライヴをやるために曲を作っているところもあるんですけど、ライヴハウスってそれぞれが持っている感性、趣味、嗜好を全部曝け出せる空間だと思うんですよ。「HELL SCRATCH」ではそれを《いかれてる奴らのMAYDAY》と歌っているんです。そういう意味では、10代の頃の自分の気持ちと今の気持ちが混ざり合って出ている曲なんだと思います。

取材:山口智男

アルバム『R.I.P. CREAM』2020年4月29日発売 actwise
    • ACW-016
    • ¥2,000(税抜)
BALLOND'OR プロフィール

MJMとNIKEを中心に下北沢にて結成。2017年、夜の本気ダンスなどが所属するactwiseに加入。18年7月にミニアルバム『Blue Liberation』、同年10月にミニアルバム『BLOOD BERRY FIELDS』を2枚連続で発表。20年4月には3年振りのフルアルバム『R.I.P. CREAM』を完成させた。BALLOND'OR オフィシャルHP

「DIENER」MV

OKMusic編集部

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