おすすめ書籍:「100日後に死ぬワニ」きくちゆうき著 小学館・ゲッサン少年サンデーコミックスより2020/4/8発売(電子版も同時刊行)

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ロマン優光のさよなら、くまさん
連載第157回 ワニ炎上 編集氏から「今回は『100日後に死ぬワニ』でお願いします」というメールが来たわけですが、この原稿がUPされてるころといえば、ワニくんの初七日も終わってるころなわけで、初七日と言いましたがワニくんが仏教徒かどうかもわからないのですが、ようするに、Web媒体では色んなことが様々な人によって言い尽くされてるころだと思うのですよね。
 自分はアイドルオタクなんで、Twitterでアイドルだけ入れたリストとか作ってるのですが、ワニくんについてのツイートを度々見かけていたんですが、最終話ですごく増えた後、パッタリと見かけなくなりました。いきなりの怒涛の商業展開に興醒めした人もいるでしょうが、リスト内で別に文句言ってる人も見かけないので、最終回迎えて感動して満足して飽きた人が多いような気がします。
 普通に作品に満足して飽きた人。作品としてずっと愛していく人。祭り気分で盛り上がってる人。自分たちの祭りだと思ってたのが、色んな大人が出てて商売を初めたので騙された気分になって醒めた人。商売は別にいいけど、やり方のデリカシーのなさに怒りを覚えた人。金を儲けて何が悪いという人。ステマという言葉を拡大解釈して使って非難している人。ネット探偵がやりたい人。嘘か本当かはっきりしないが電通案件という話を信じて、電通に対する悪感情から怒りを増してる人。電通案件だという噂を聞き付けて電通叩きをしたくて乗っかる人。炎上気味になってから大喜利を始めてしまう人。終了後に公開されたワニくんのプレイリストを見て、ああいう音楽の趣味の奴とは友達にはなれないと思う人。そういう騒ぎ全体を眺めて楽しんでる人。色んな人がいたと思いますが、一週間もたつと騒がしさも落ち着いてきますよね。本気で好きな人と電通を許さない人たちだけが残って静かな感じになっているころでしょうか。
 最終回後の炎上騒ぎについては各論出尽くしていると思いますが、個人的な感想をいくつかあげていきますね。
 電通案件かどうかについては、法的に証拠として採用されるレベルの証拠は出てきてないわけで、そうだとも、そうでないとも断言できないわけです。ただ、ハードコアチョコレートのような、サブカル中年の自意識をくすぐるような元ネタをデザインに取り入れることで知られる、中年以上のサブカル好きにはメジャーでも、普通に考えたら世間的にはアングラ扱いされるであろう服飾ブランドとコラボさせるとか、電通はやらないと思うんですが。
 また、受け手の理解力のレベルをかなり低レベルに見積もったコンテンツ造りをすることで知られる電通が主導権を握った企画だとしたら、あんなに淡々と進まずに、わかりやすい感動エピソードをバンバン入れてくるのでは。もっとわかりやすくしないと電通の人とか怒りそう。
 あと、陰謀論レベルで電通の力を高く見積りすぎな人がいてビックリしました。普通に考えて、電通が関わってて話題にすらならないまま失敗したプロジェクトなんて数えきれないくらいあるわけで、今回想定されているようなレベルの力があるなら、失敗するにしろ話題にもならないまま終わるなんてことは起こらないのでは。
 最終話以降の流れの中で私が一番ビックリしたのが、あれですよ。あたまに天使の輪と背中に天使の羽がついたワニくんの絵ですよ。死んで魂となったワニくんを表現してるのはわかりますが、そいつが自分の追悼ショップの宣伝してるの、なんか凄くないですか。それも、死後すぐに。感動的な話として受け入れられていた作品なのに、死んだ本人が間抜けな絵面でグッズの宣伝いきなり始めるのはヤバいでしょ。
しかも、あの絵がテーマのレモネードがコラボカフェにあって「飲み物にまでするの……」とビックリしました。
 あれ、『あしたのジョー』の力石とか『鬼滅の刃』煉獄さんとかが死んだ次のコマで天使の羽と輪を着けてグッズの宣伝をはじめるのとあまり変わらないですよ。ある意味で面白すぎて笑ってしまうんですが、そんな悪趣味な感覚を読者は求めてないのに、なんであれをやっちゃうんですかね。そういえば、天使の羽と輪で死者を表現するというわかりやす過ぎる表現が電通っぽいと思われたのかもしれませんね、適当に言いましたけど。
 小出しに今後の商業展開を匂わしていけばよかったとか、読者が余韻に浸るということを考えて時間をあけて公開していけばよかったとか、色んな人が既に言ってると思いますし、特に付け加えるようなこともないですけど、天使の羽と輪付きのワニくんの絵面はどのタイミングでも出しにくいよなと思いました。それを一番破壊力があるタイミングで出したから凄い。ほんと、あれなんなんだろう……。
 作者のきくちゆうき先生自らが、作品の世界観を台無しにする目的であれを描いたとも思えないのですが、実はそうだったらどうしよう……。作品のビジネス展開をプロデュース(どっからどこまでかはわかりません。ハードコアチョコレートとか見てると、色んなとこが個別に先生とコンタクトしてコラボしてるような気もします。)している株式会社ベイシカの、文章が痛々しい人が提案したアイディアできくち先生が描いたという方がまだ安心できます。しかし、誰かあの絵をあのタイミングでああいう使い方をするのを止められたらよかったんだろうけど、チームで何かやってて一体感で最大限に盛り上がってる時に声がデカイ人が言い出したことに、わざわざ異論を唱えるようなことなんて言い出せなかったりしますもんねえ。意外にみんな薄々同じことを思ってたりするもんですが。
 個人的に忘れられないことがあって、ワニくんのプレイリストを見て「なんか趣味的にどうかと思うけど、事故で亡くなったお友達がモデルということなので、その人の実際の趣味だったらと思うと何も言えん」と知人が言っていたことで、めんどくさいけどいい奴だなと思いました。天使の羽と輪のついた死後のワニの絵面とこの話はずっと覚えているような気がなんとなくします。
(隔週金曜連載)
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ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz
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