JUJU 歌でストーリーテリングしてき
た16年、厳選の52曲を“4つのシアタ
ー”で再構築したベストアルバム『Y
OUR STORY』から紐解く“歌うたい”
の心意気

4枚組52曲というボリュームに、思わずたじろいでしまったあなた。心配はご無用。JUJUの最新ベストアルバム『YOUR STORY』は、代表曲、シングル曲、リクエスト人気曲、新録曲などを“4つのシアター”に振り分けて再構築。短編映画を連作のように楽しめる仕掛けで、時の経つのを忘れて楽しめる作品であることを、一足先に“試写会”を楽しんだ者として保証しよう。大きな愛、ままならぬ想い、ピュアなときめき、そして働く大人の応援歌。あなたのために特等席を用意した、シアターJUJUへようこそ。
――普通のベストとは一味違う、コンセプチュアルな構成になってますね。
シングルベストとか、リクエストベストとか、いろんな出し方があるとは思ったんですが。まず1枚には収まらないし、8年前のベスト(2012年11月発売『BEST STORY~Love stories~』、『BEST STORY~Life stories~』)は、LOVEとLIFEにわかて2枚リリースしましたし、ただのベストではないベストにしたいなというのが、最初のきっかけになってます。デビューから8年で初ベスト、さらに8年後に2回目のベストをだせるとは思っていませんでしたが、“8年”というのが、私にとっていい数字に! 私のニューヨークの友達で、8年ごとに髪の毛を伸ばしては剃り、伸ばしては剃り、という人がいるんですけど、それは“8年ごとにシステムが入れ替わるから”という考え方なんですね。
――それは、8年周期で体の中の細胞が入れ替わるとか、そういうことで?
そうみたいですね。それで“JUJUも8年周期で生きていこう”という思いがあって、デビュー8年目の2012年に、「次は2020年にベストを出します!」と言ってたらしいんですけど、本当に偶然が重なって、今回ベストを出すことができたので。次は2028年に出します。絶対、何か出します(笑)。
――アハハ。今ここで宣言。
今回のベストは、去年開催した『YOUR REQUEST TOUR-15th ANNIVERSARY- JUJU HALL TOUR 2019「YOUR REQUEST」』でいただいたリクエストを見ながら選曲していったこともあって、シングルじゃなくても、アルバム曲の中で人気の曲も入ってるんですね。私は“歌を歌うことがストーリーテリングでありたい”とずっと思っていて。シンガーソングライターではなく歌うたいとして、歌を物語としてみなさんにお伝えする立場でありたいと思ってきたんです。何百曲という物語を歌ってきた中にいろんなタイプの曲があって、“これをどうやってベストにまとめよう?”と思った時に、“これはシネマ・コンプレックスJUJUです”と。
――はい。なるほど。
まず、“愛”とひとことで言っても、恋愛以上の大きな愛もあるし。それを【Theater RED】と名付けようと。家族の話とか、色恋ではない愛の物語を上映している【Theater RED】というものを作って、そこに13本(曲)を集めて上映します、ということですね。そして、ままならない想いを集めた作品を上映している【Theater PURPLE】があって、その次の【Theater PINK】というのは、PURPLEのままならない気持ちや、REDの大きな愛に至る前の最初の初期衝動で、きゅんとしたりうっとりしたり、その人だけのことを考えてしまうピンク色の世界です。恋愛も含めたすべての初期衝動を取り揃えたのが【Theater PINK】で。4枚目の【Theater BLUE】は、今そこで働いて頑張っている、すべての人に贈る応援歌の物語が集まっていて、“さあ、あなたは今日、どのシアターに行きますか?”と。“どのシアターに、あなたが主人公になれる物語がありますか?”というものをやりたくて、作ったのが、今回の『YOUR STORY』というベスト盤です。
――納得です。ちなみに、色で分けようという発想はどこから。
それが一番分けやすかったんですね。私は子供の頃から、見るものが色だったんですよ。たとえばスナックに連れて行かれて、大人たちが楽しんでる世界は“紫色だな”と思ったりしていたので。色ごとにシアターを分けたいという発想は、自然に出てきました。
――紫が大人の世界という感覚は、なんとなくわかります。
紫色って、本当は高貴な色なんですよね。でも“ままならない恋”は高貴なものですらあるかもしれないし、いろんなリスクを背負ってでもその人を愛し抜くことは、崇高で高貴なものであってほしいので。
――深いです。
その上で、ありものだけのベストではなく、4枚組の1枚に新録音を1曲ずつ入れようということになったんです。その時点で「Woman In Love」は配信限定リリースされ、「STAYIN’ ALIVE」(ドラマ『トップナイフ‐天才脳外科医の条件‐』)は、シングルリリースしたけれど盤にはしていなかったので、それを【Theater PURPLE】と【Theater BLUE】に入れて、足りないのはPINKとREDだなと。そこに、完全にアルバムでしか聴くことのできない新曲を収録しました! どちらもそれぞれのTheaterにぴったりな楽曲だと思います。

ままならないとしても、心は揺れたほうがいいなと思います。今年は、ちょっとは揺れたいですね(笑)。
――実は僕も、勝手にテーマを想像して、キーワードを書いてたんですよ。【Theater RED】は情熱、家族、感謝、前向き、とかで。【Theater PURPLE】は、せつなさ、痛み、傷とか。
ぴったりです。
――【Theater PINK】は甘さ、ロマンチック、誘惑とか。【Theater BLUE】は都会、孤独、やさぐれ、でも“意外と楽しそう”だなと(笑)。
そうなんです(笑)。意外と楽しそうなんです。人によって幸せの形はさまざまだし、私も含めて、大人で仕事を頑張ってる人は、仕事がどんどん楽しくなると、それに反比例するように、プライベートが不幸せになっていくじゃないですか。
――そんなことはないでしょう(笑)。
それを不幸せと呼ぶかどうかは、人それぞれですけど(笑)。少なくとも、経済的に自立していって、自分が楽しめる仕事を手に入れた人は、特に女性は、結婚というところからはどんどん遠のいていく。だって、一人が楽なんですもん。
――なるほど(笑)。
昔の結婚適齢期が23、24歳と言われていたのは、何も知らないうちに、何も見てないうちに結婚したほうが確実に幸せだということだったと思うので。それは確かに理にかなっているとは思うけど、でも今のご時世、自分で地に足をつけて頑張って仕事をしてると、しんどいことやせつないことがあったとして、はっちゃけられるし、楽しいこともあるじゃんという、そういう思いに至りたいのが【Theater BLUE】です。
――個人的には、【Theater BLUE】が一番ぐっとくるんですよね。一番身近にストーリーが浮かぶので。それに対して、【Theater RED】の主人公はもっと堅実というか、家族的というか。
そう。守りたいものがちゃんとあるんです。でも、【Theater BLUE】の人も、REDの気持ちは持ち得てるんですよ。BLUEが基本だけど、その中にREDがあったり、たまにPURPLEの気持ちになったり、また誰かに恋をしてPINKの気持ちになったり。だから、基本軸はBLUEですね。それは私も含めて、女性でも男性でも、REDになったりPINKになったり、人であればそう思うだろうなと。たとえばBLUE一色の人が、たまたま仕事帰りに昔好きだった人を見て、ままならない気持ちを感じて、“今日はTheater PURPLEに行こうかな”みたいな。あるいは、お父さんお母さんと久しぶりに電話で長いこと話したし、“ちょっとTheater REDに行ってみようか”とか。
――ああー。
でも、どこに行ったとしても、結局行きついてほしいのはREDなんです。BLUEを軸に生きていて、恋をして、ままならないことがあっても、最終的には、世の中には一人に対して必ず一人のソウルメイトがいると私は信じていて。かけがえのない“あなた”を見つけることが、人生の中の一番大きなテーマだと思うので。どんなことがあっても、最終的にはREDに行きついてほしい。たぶんこの4枚をずっと聴いてると、BLUEから始まって、REDに戻っていくと思うんですね。という意味での【RED】【PURPLE】【PINK】【BLUE】なんです。
――素晴らしい流れです。
今はそういうふうに聴くことは少ないかもしれないですけど、私たちレコード/CD世代からすると、この4枚を続いて聴いていってもらえるといいなと思います。

――ちなみに、選曲の参考にしたというファンからのリクエストって、意外なものもあったんですか?
ありました。もちろん「やさしさで溢れるように」とか、「この夜を止めてよ」とか、上位に来るんですけど、「If」という曲が4位ぐらいにきたりとか。みんな、ままならないんですよ、きっと。“あの時この人に会わなかったらこんなにしんどくなかったけど、こんなに激しい恋もなかった”とか、みんな絶対にあるんだと思う。ろくでなしって、いっぱいいますからね。
――それは男に言ってますか(笑)。
いえ、女性も男性も(笑)。たとえば、あなたの都合で別れたのにという人と、どこかで偶然に会って、飲んだりする。そうすると、楽しいわけです。そりゃそうですよ、お互い好きだった同士だし。でも、その人がほかに好きな人ができて別れたのに、“なんで俺ら別れちゃったんだろうね”とか言われて、“はあ?”みたいな(笑)。喉元過ぎればすべてを忘れてしまう、そういう経験を持ったことがある人には、「If」とかが刺さるんだと思います。“もしあの日雨じゃなければ”“いつもの靴をはいてたら”……忘れたはずなのに、また揺れちゃってる私がいる、どうしよう、もう止められない、って。
――あらためて、深いです。
最近知り合った26歳の女の子が、「この夜を止めてよ」がすごい好きだと言うので、ほおーと思ったんですけど。【Theater PURPLE】が好きだという女性は、本当に多いです。私も、そうありたいと思ったりします。ままならないとしても、心は揺れたほうがいいなと思います。今年は、ちょっとは揺れたいですね(笑)。

歌でストーリーテリングすることを始めて、まさか16年続くとは思ってなかったですけど、こうなったら目指します。8年後のデビュー24年を。
――(笑)みなさんぜひ、お好きなシアターへ。
初回限定盤にはそれこそ短編映画のようなミュージックビデオ10曲と、今回のアルバムについての私の思いを語ったインタビュー映像も入るので、それも見ていただけたら。ちなみに、PINKの13曲目の新曲「Stop Motion」は、「PLAYBACK」の続編なんです。コマ送り映画みたいに思い出が残る、プレイバックしたい夏を再び、で「Stop Motion」なんです。そんな感じで、いろんな曲の続編をどんどん作れたら楽しいと思います。でも本当に、今回すごく言われるのが、なんで「光の中へ」が入ってないんですか? ということなんですけど。
――ああー。デビュー曲ですからね。
16年前にシングル1枚、2枚出したあとに、あてどもない制作の日々に入っていったんですね。そこで3枚目に「奇跡を望むなら...」を歌うことによって、聴いてくださる方がいることを初めてわかったんです。好きで歌うことよりも、聴いてくださる方がいて歌うということの幸せを初めて教えてくれたのが「奇跡を望むなら...」で。あの曲がなかったら、とっくに私は契約終了していたと思うので。歌で物語を紡ぐきっかけをくれたのが「奇跡を望むなら...」だから、今回のベストはそこから始めたいなという思いがありました。あれがきっかけで、歌でストーリーテリングすることを始めて、まさか16年続くとは思ってなかったですけど、こうなったら目指します。8年後のデビュー24年を。

――楽しみです。次の予定は、今のところ、9月から始まるアリーナツアーですか。これはベストアルバムを引っ提げて?
そうですね。何をどうするかはまだ決めてないですけど、去年のツアーがあまりにも楽しすぎたので、今回のベストツアーもすごく楽しみです。
――たとえば、4幕のシアターとか、見てみたいですね。
私もそうなってほしいです。アリーナはいろんなものが使えるから、スクリーンを使うこともできるし、いろいろやってみたいですね。どんなことができるのか、私も今から楽しみです。
取材・文=宮本英夫

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