3つの「日本沈没」を復活させた高音
質ライブCD「小松左京音楽祭」リリー
スへ~樋口真嗣監督が装丁・選曲に関
わり、トリプティークと金属恵比須が
初共演

2019年11月30日に開催された「小松左京音楽祭」をライブ収録した高音質CDが完成、2020年4月11日(土)に発売されることが決定した。
この音楽祭は映画監督の樋口真嗣が「私の悲願でもある」と熱望したTV版「日本沈没」の復元演奏を含む小松左京原作による映像音楽が特集されたもの。小学2年で「日本沈没」を観て人生が変わってしまったという樋口真嗣監督を中心に、小松左京の元マネージャー乙部順子、映画監督の樋口尚文、音楽プロデューサーの西耕一が結集、日本が世界に誇るSF作家 小松左京の生誕88を記念して行われた奇跡の音楽祭だった。ラジオ、テレビ、映画、3つの「日本沈没」を彩ったサウンドが復活したほか、松井慶太指揮のオーケストラ・トリプティークとプログレバンド金属恵比須の初コラボも注目を集めた。
小松左京音楽祭の模様
1964年から9年かけて執筆された小松左京のSF小説『日本沈没』は、1973年に刊行され、大ブームとなった。同年10月からラジオドラマが放送され、年末に映画公開、翌年にはテレビシリーズに展開された。大迫力のオーケストラサウンドが災害の恐ろしさ、自然の厳しさを描きつつ、危機に瀕してもあきらめない人類を、愛と希望のメロディーが歌い、支える。愛のため、家族のために生きるものたちを勇気づけた音楽だ。それらは、今聴いても色褪せることなく、心に響き渡る。音楽を作った作曲家は、日本映画界に欠かせない3人の作曲家たち=佐藤勝、田中正史、広瀬健次郎である。
グルーミーなスコアによる映画版「日本沈没」は佐藤勝(黒澤映画、岡本喜八映画、ゴジラや特撮映画でも知られる)の音楽。ラジオドラマ版「日本沈没」の音楽は「黄金バット」「サスケ」「妖怪人間ベム」といったジャジーな名曲を生みだした田中正史 。テレビ版「日本沈没」は広瀬健次郎(ガメラ、若大将シリーズなどの音楽だけでなくアニメ「ど根性ガエル」の音楽でも知られる)によるもので、ダイナミックなリズム感とセンチメンタルなメロディラインが特徴的だ。
日本の名だたる映画監督が認めた映像音楽の巨匠たち=佐藤勝、田中正史、広瀬健次郎のサウンドが“復活の日”をむかえた「小松左京音楽祭」では、シンセ&ジャズサウンドのラジオ版、交響曲「日本沈没」とも形容できそうな重厚なる映画版、70年代の最新のサウンドも取り入れたミクスチャーサウンドのTV版など幅広い音楽ジャンルを横断した。特に、マスターテープが劣化して崩壊してしまったというTV版「日本沈没」の音楽は意義深い復元演奏となった。
CD裏ジャケ
他方、音楽祭は「日本沈没」以外の楽曲も充実していた。テレビドラマ「宇宙人ピピ」(作曲:冨田勲)では、金属恵比須の髙木大地によるモーグ・シンセサイザーの音色が際立つ。オーケストラとシンセの共演とも言うべきキュートでスペイシーなサウンドに引き寄せられる。
映画「エスパイ」では、70年代の輝かしいストリングスサウンドや、クラシック、ロック、ラテン、ボサノヴァなど、様々なジャンルの音楽を統合した平尾昌晃と京建輔の音楽が冴え渡る。まるで「ボレロ」のごとくオーケストラとバンドが盛り上がる、「見知らぬ国へ」は圧巻。
そして、小松左京が製作総指揮を行った「さよならジュピター」の羽田健太郎によるオーケストラサウンドは、爽快にして壮麗。宇宙空間を彩るきらびやかなサウンドストリームを味わえる。
さらに、若き日の小松左京が作詩・作曲した男声合唱曲「ロスマリコスの奴隷」と小松左京が実際に演奏していた「ヴィオラ」(オリジナル楽器)を使って演奏した小松左京お気に入りの曲「炭坑節」が今回お蔵出しとなったことは驚嘆に値する。原作による音楽だけでなく、実際に作詩・作曲、所有楽器までを収録したのは 「小松左京」の名前を冠した音楽祭のCDとしてこれ以上のものはないこだわりといえるものだった。
また、番外として演奏された、オーケストラ・トリプティークの最も得意とするレパートリーである、「ゴジラ」のテーマもCDに収録された。使用されたピアノは、メイソン・アンド・ハムリンという、ニューヨーク・スタインウェイに次ぐアメリカの名器と呼ばれ、日本には数台しか存在しないと言われる貴重なもの。東宝スタジオ録音センター(現ポスト・プロダクション・センターII)で、映画音楽のために長年使用されてきたもので、1957年の同センター開設直後、作曲家の伊福部昭が指定して東宝が購入した由緒ある楽器の音だけに、これは正座をするくらいの気持ちで聴いて欲しい。
音楽祭で演奏を担当したオーケストラ・トリプティーク(指揮:松井慶太)は、樋口真嗣監督が「メロディーが刺さり音圧に感情をぐわんぐわん揺さぶられます」と絶賛するエネルギッシュな演奏が人気で、テレビ、ラジオなどでも頻繁に紹介されてきた楽団である。アニメ、特撮、映画音楽、現代音楽まで、通常のクラシックだけでなくジャズ、ロック、テクノなどにも対応する、柔軟な音楽性が評価されている。また、金属恵比須は頭脳警察や髙嶋政宏と共演を重ねつつ、音楽界だけでなく、文学界にも幅広いファンを持つ、新世代プログレッシヴグループ。通常のクラシックコンサートとは異なり、エレキギター、エレキベース、ドラム、シンセサイザーなどが繰り出され、オーケストラサウンドとロック&プログレサウンドが融合・炸裂したことも、この音楽祭ならではの収穫といえるものだった。
なお、今回のCD、ジャケットは、生頼範義の原画を使いつつ樋口真嗣監督が自ら装丁を手掛けた。さらに樋口監督は選曲にも携わった。小松左京の果てしなき魅力を元に生まれたサウンドたちを聴いて、音楽の力で明日への夢と希望を湧きたたせていただきたい。
【動画】CD「小松左京音楽祭」完成報告(乙部順子、樋口真嗣、樋口尚文と金属恵比須・髙木大地)

【動画】「小松左京音楽祭」について(実行委員:西耕一)

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着