渡辺直美インタビュー キュートでポ
ップなミュージカル『ヘアスプレー』
に挑戦!

熱狂的な人気を誇る同名映画をもとにブロードウェイ・ミュージカル化されて大ヒットした『ヘアスプレー』。夢も身体もビッグサイズのヒロイン・トレイシーが恋や友情、そして差別との戦いに奮闘する様を、ポップな音楽にのせて描くこの作品は、ジョン・トラボルタ等が出演するリメイク版映画も製作され、こちらも大きな話題を呼んだ。そんな舞台の日本初演で、渡辺直美がトレイシー役を演じることに! 作品への意気込みを直撃した。
ーー『ヘアスプレー』にヒロイン・トレイシー役で主演されます。
まだまだ時間があると思っていたのに、公演が近づいてきたなとドキドキしています。『ヘアスプレー』は10代のときに映画を観ていて、すごく好きな作品なんです。もし日本で上演することがあるならやってみたいなとずっと思っていました。NSCという吉本の養成所で、一学年下の子たちの卒業式に、一期上の先輩たちが何かエンタメ的なことをやらなきゃいけないんです。そこで、卒業して一年目に、ジャングルポケットの斉藤慎二さんと一緒に『ヘアスプレー』を口パクでやりまして、最後は同期みんなで「You Can’ t Stop The Beat」を踊って。だから今、同期にはけっこう、「あのときの夢が現実になったんだね」なんて言われています。​

トレイシーに扮する渡辺直美

『ヘアスプレー』は物語もすばらしいし、歌もハッピーなので、ぜひやりたいなと。今回は口パクじゃなくて、ガチ歌ですけど(笑)。しかも、踊るじゃないですか。キャピキャピさとハッピーさと純粋さを身体いっぱいで表現するっていうところは、ちょっといろいろ頑張っていきたいなと。でも17歳くらいの高校生の役なので、大丈夫かなって(笑)。かわいらしさとかキャピキャピ感って、自分にはもともとあんまりなくて、クールを演じたいかっこつけな部分があるんですよね。友達の前だとちょっと出せるかな? くらいで、それ以外では、人前で見せるということがあんまりないので。今ニューヨークでそれをすごく練習してるんです。アメリカだとウーバー(※配車サービス)によく乗るんですが、乗る方、乗せる方、お互いに評価の星をつけられて、私それが今MAXの「5」なんですね。それをどうしても下げたくなくて、運転手にずっと「ハーイ。ワーオ、綺麗な車ね」とか言って、媚びを売りつつ練習してます(笑)。見ず知らずの人に自分のかわいさをアピールする練習をしつつ、星ももらえて一石二鳥で。 ​
ーー好きなシーンやナンバーはありますか。
トレイシーのお母さんがちょっと自信をなくしているときに、トレイシーが外に連れ出して、お洋服屋に一緒に行ってキラキラの服を着て踊る「Welcome to the 60's」が大好きなんです。作品の中で一番明るく勇気づけるような歌なので。それと、ダンスパーティーで黒人の子たちとトレイシーが一緒になって踊るシーンも大好きです。​
ーー映画版ではジョン・トラボルタが演じたお母さん役を演じるのは山口祐一郎さんです。
ミュージカル界の大ベテランですよね。山崎育三郎さんや城田優さんとお仕事をしたときに、「すごいね」と言われて。「すごく優しくていい方だよ」と言われて安心したんですが、そんな優しい方が私で初めて怒ったらどうしようって、不安が(苦笑)。ミュージカル自体は十年前に『FAME』で経験していて、そのとき前田美波里さんも出演されていたんですけれども、私はあまり絡みがなく、基本は同世代の子と絡むことが多くて。今回、山口さんはじめ大先輩の方たちがたくさんいらっしゃるので、どんな感じになるんだろうと。前回ミュージカルに出演したとき、ずっと歌って踊っていたので15キロくらい体重落ちちゃったんですよ。でも、この作品はそういうわけにはいかないので、稽古や本番中の体重管理、やせない方向でしっかりしなくちゃいけないなと思っています。​

エドナ役の山口祐一郎

ミュージカルの座長としての居方もまだよくわからないのですが、みんなを一つにできるよう頑張りたいと思っています。昨年(2019)12月の『FNS歌謡祭』で「You Can’ t Stop The Beat」を歌って踊りましたが、稽古時間が少ない中、いいものにしようと試行錯誤する皆さんを見て、改めて本当のプロだなと感じて。そして私けっこう人見知りなんですけど、リンク役の三浦宏規くんがたくさん話しかけてくれて。本番が終わった後も、「さすがです」と言ってくれて、よく見てくれてるんだなと。私の方が歳上なのにすごく支えようとしてくれることに、愛を感じて。かわいくて明るい弟のようで、でもお兄ちゃんのようでな頼もしさもあって。本番は私が引っ張っていけるように頑張りたいですね。
リンク役の三浦宏規
ーー人種や容姿といったさまざまな差別を扱う深い作品でもあります。
歴史のある作品で、作られた当時の時代から、今に至るまでにさまざまな意識の変化があると思うんです。ここ5年、10年でもいろいろと変わってきていますし。例えば、10年前は”よし”とされていて、でも今は”無し”とされることがあったとして、今、10年前のそのことを掘り起こして「最低だ」と言うことは、私は違うと思っていて。その時代に生きていた人しかわからないことってあると思うんですよね。今、当たり前のことも、30年後にはありえないかもしれない。それに対して30年後、最低だと言うのも違うんじゃないかなって。
『ヘアスプレー』が描いているのは、本当に、差別がもっとひどかった時代の話なんですよね。それを、今の時代から知ることができる。そういったところは、ニューヨークに行ってすごく勉強したことでもあるんです。「こういうことで傷つくんだよ」と教えてもらって、「あ、そうなんだ、ごめん、これからはもうしないからね」と、一緒に手を取り合って前に進んでいく。アメリカでも、『ヘアスプレー』でも教えられた、みんなで変えていこうよというメッセージをちゃんと届けていきたいなと思っています。舞台装置や物語の展開も含めカラフルに見せていくところが魅力の、ポップで音楽もファッションもかわいい作品ですが、伝えたいと思う、大切なことがしっかり込められている作品だなと思います。​
ミュージカル『ヘアスプレー』ビジュアル
ーートレイシーをどんな女の子だととらえていらっしゃいますか。
彼女はすごく芯がある子なんだけど、自分自身で、「私、芯があるんで」と言うタイプとも違うと思っていて。そして自分の気持ちの伝え方がとっても素敵だな、って思います。相手に理解してもらう上では、自分の純粋な気持ちと、相手を理解しようとする気持ち、理解した上で気持ちを伝えるということが大切で、そういうところは、トレイシーはすごく上手だな、人間力が強いなと思いますね。感受性もすごく豊かで新しいことをどんどん受け入れていくところも魅力的だと思います。​
ーー共通点を感じるところは?
人をすぐ信頼しちゃうところかもしれないですね。ただ私の場合二面性があって、友達の前にいる、オンのテンションが上がった時の自分だったら、キャピキャピしていて、心を開いてみんなを受け入れて、歌も踊りも大好きでうわーい、ってまさにトレイシーな感じなんですけど、オフの時は人とあんまり会いたくなかったりするんです(笑)占いでも人見知りだけどすぐ心を開くとか、さみしがりやだけど一人の時間を大切にしたいとか、なぜか両極端の結果が一緒に出てくるぐらいで。だから半分の私と似ているかな、って感じですね。​
ーー音楽の魅力についてはいかがですか。
とめどない感じが魅力ですよね。ファンクやソウルも取り入れられていて、バラードもあったりする。最初から最後まで飽きずに聞いていただけると思います。ただ、最初の「Good Morning Baltimore」がね……。どうしようって、不安でたまに夢で見るんですよ。舞台の一発目の曲ってすごく大事じゃないですか。聞いている分にはおだやかな、いい歌なんですが、歌ってみるとこれが難しくて。音程もそうですし、笑いながらとか、トレイシーの魅力を演じながら歌う曲なので、稽古が始まるまでには歌を完璧にして、稽古に入ってからは、演出家の方、周りの皆さんとも合わせながらトレイシーを作っていきたいなと思っています。
ミュージカル『ヘアスプレー』キャスト
私、先頭に立って、「行くわよ~」みたいなのが割と苦手なんですが、今回、そこを克服したいなと。「私がいるから大丈夫だよ~」とみんなに言えるような、大きな船になりたいなと思っているんですね。今回の作品、人生の一番の山場だと思っているんです。リーダーになることが大事というか。座長があたふたしていたらいい作品はできないと思うので、意識して頑張りたいなと……最強の山場ですよね。いろいろエンタメがある中でも、ミュージカルは、演技、歌、踊りとすべてが入り込んでいる最強のエンタメ。そして、この愛されている作品の日本での初めての公演ということで、いろいろなプレッシャーがあるんです。私の人生の山場でもあり、もしかしたら観に来られた方も、そこで人生が変わるようなその方にとっての山場になるかもしれない。「史上最低だった」ではなく、「史上最高だった」と言ってもらえるよう、そのプレッシャーさえも力に変えて頑張りたいと思います。​
取材・文=藤本真由(舞台評論家)

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