L→R 悠介(Gu)、晁直(Dr)、葉月(Vo)、明徳(Ba)、玲央(Gu)

L→R 悠介(Gu)、晁直(Dr)、葉月(Vo)、明徳(Ba)、玲央(Gu)

【lynch. インタビュー】
各自が思い描くサイバーパンクの
要素が入っている

“サイバーパンク”や“近未来”という
ワードを共有して作っていった

なるほど。では、約1年8カ月振りとなるニューアルバム『ULTIMA』ですが、ロックバンドとしてのlynch.らしいエッジと激しさがありつつ、メロディアスな曲が増えた印象を受けました。スケールが大きい作品になりましたが、制作する前に共有したことはありましたか?

玲央
制作に入る時に葉月から“サイバーパンク”というワードだったり、近未来的な要素を取り入れたいという提案があって、そこから今回の写真やMVのアートワークにつながっていったんです。サウンドに関しても葉月が言ったことはメンバー全員が意識しているので、より一体感が生まれたと思っています。

なぜ“サイバーパンク”だったんですか?

葉月
単純に僕がそういうアニメや映画にはまってたんです。近未来的要素があるものって意外とlynch.はやったことがなかったけど合うんじゃないかなって。で、曲を作り出したんですが、いざコンセプトに据えたら狭まっちゃって全然できなかったんですよね。これは良くないと思い、僕は途中から意識しなくなっちゃったんですけど。
全員
(笑)。
葉月
アートワークや言葉の選び方とか、エッセンスとしては残ってるんですけどね。
玲央
そう、コンセプトじゃなくてエッセンス! 各自が思い描くサイバーパンクの要素が入っているんです。メタリックな音質だったりとか。例えば悠介のギターは華やかなんだけど、無機質なフレーズが入っていたりして、“これが悠介なりの解釈なんだ”って思いましたし。

悠介さんはどんな意識で取り組みました?

悠介
“ULTIMA”というタイトルは他のメンバーは“究極”という意味で解釈していると思うんですが、僕の中では“最後”というスペイン語の意味合いから、気持ち的には最後のアルバムでもいいかなっていう。

“最後の”という意味でとらえるとドキッとするタイトルですよね。

悠介
“え!?”って思うかもしれないですけど、それぐらいの気持ちで取り組んだアルバムですね。lynch.は短い期間で音源を制作することが多いので、どこかで区切りを付けなきゃいけない場面が出てくるんですけど、今回は少しでも納得できない部分があったら、ギリギリまで突き詰めたい気持ちが強かったんです。明日、自分が死ぬかもしれないと思ったら、後悔するようなものは作りたくないって。

悠介さん作曲の「ASTER」は広大な風景が浮かんできてとても印象的だったのですが、どんな想いがあって書いた曲になるのですが?

悠介
昨年、祖母が亡くなって…そういう想いから書いた曲です。タイトルはデモの段階で付けました。

“ASTER”は“星”という意味ですか?

悠介
ラテン語で“星”なんですけど、花の“紫苑”という意味もあって、紫苑の花言葉が“追憶”なんですよ。上手くリンクしたなって。サウンドは近未来の要素を取り入れつつ、宇宙をイメージして作りましたね。

この曲からラストの「EUREKA」に移行する流れがドラマチックで感動的でした。

葉月
「EUREKA」でチャレンジしたのは途中のシンガロングするパートですね。lynch.のライヴの最後を飾る曲ってたくさんあるんですけど、それら過去の曲全てを超えたかったんです。お客さんのパワーがドカーン!と伝わってくる時って一番感動するから、そこはもう思い切り丸投げしてみようって。

1曲目の「ULTIMA」と最後の「EUREKA」には女性コーラスが入っているので、何か関連性があるのかなと思ったのですが。

葉月
女性コーラスは新たなアプローチですけど、そこにつながりはないですね。
玲央
「ULTIMA」と「EUREKA」は曲調は全然違いますけど、僕の中では感覚が近いんですよ。2曲とも天井が高い360度の大きな会場で演奏しているイメージがあって。「EUREKA」はポップな曲だけど、それだけではないスケール感を出さなきゃと思って弾きましたね。前作『Xlll』(2018年7月発表)でもスケール感は意識したんですが、昨年のホールツアーの実体験から大きな会場を意識するようになったことがフィードバックされたアルバムなのかなと思います。だからと言って躍動感がなくなったわけではなく、ライヴハウスでも観たいし、もっと大きい会場でも観たいと感じてもらえる作品になったんじゃないかと。
晁直
特にギターは音色が多彩だし、全体的に鮮やかさが増したアルバムになったと思いますね。それぞれの楽曲の個性が濃いから今までのコンセプチュアルなアルバムと比べたらバラバラかもしれないですけど、強い作品になったなって。これまでのアルバムにはSEが必ず入っていたんですが、SEなしで12曲も収録されているのはlynch.では珍しいですしね。

確かに鮮やかさが増していますよね。リズムセクションとして心掛けたことはありますか?

明徳
5人組バンドならではの個性や面白さに磨きが掛かったんじゃないかと思います。それこそ15年やってきたからこそのバンドアンサンブルというか。誰かひとり超絶上手いメンバーがいるバンドとはまた違う5人のバランスですよね。今までのlynch.は構築美にこだわってやってきたんですが、音で遊ぶところは遊んでいるし、絶妙なバランスだからこその味や深みが出てきていると思うし。僕自身はオーソドックスに、リズム隊としてガチッと固めることを意識してベースを弾きました。その分、ギターが自由に動いている箇所があったり、歌やシャウトもいろいろなパターンがあるので、バッキングとして活かせたらいいなって。
晁直
バンドアンサンブルという点では音との兼ね合いがより繊細になっていますね。lynch.のようにチューニングが低いバンドだと音がぶつかることが増えるので、ドラムも以前より気を使っていこうと思いました。

歌詞ですが、“愛”“死”“欲望”がモチーフになっているように思ったのですが。

葉月
僕は唯一、歌いたいことがあるとしたら、“生まれてから死ぬまでどう生きるのか”っていうことだけなんですね。時間の中でどの部分に焦点を当てるか考えて書くので、そこは一貫しているんです。そういう意味では今作の歌詞で強いて言えば、「IDOL」が珍しいですね。
玲央
一番最初にデモが来た曲ですね。
葉月
歌詞はみなさんの中に“いろいろな僕”が存在していると思うんですが、“ありがたいです”っていう(笑)。

毒がある歌詞ですが、偶像崇拝がテーマですか?

葉月
“それぞれ妄想とかイメージを抱いてくれてありがとう。でも、それは僕じゃないからね”って言いたかったんです。イライラしてるとか、そういうことではなく、一応言っておきたかった(笑)。

OKMusic編集部

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