浦井健治、柿澤勇人、桜井玲香、伊原
六花らが織りなす『ウエスト・サイド
・ストーリー』Season3の世界 大期
待の稽古場に潜入

東京・豊洲のIHIステージアラウンド東京にて、キャストを代えて連続上演中の『ウエスト・サイド・ストーリー』。そのラストを締めくくるSeason3が、4月1日(水)に幕を開ける。初日まで三週間となった日の公開稽古を観た。
まず披露されたのは、ジェッツとシャークス、二つの不良グループの対立が踊りのうちにあざやかに示される「Prologue」。ポスター等で名高い、ベルナルドの足上げの瞬間も含まれたナンバーだ。シャークスのリーダー、ベルナルド役のOguriは、ぴんと伸ばした背中に緊張感を漂わせ、回転の際にキレ味あり。同じくベルナルド役の有澤樟太郎は、甘いルックスで伸びやかなダンスを見せる。シャークスと対峙するジェッツのリーダー、リフ役の加藤和樹は、ド迫力のニヒルな怖さ。同じくリフ役の木村達成は、やんちゃな感じがかわいらしい。
(c)WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
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(c)WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
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続いては、リフが芯となっての「Jet Song」。『自分たちの縄張りを守り抜く!』というセリフに、舞台人としての骨太な決意をにじませる加藤リフ。ジェッツの仲間たちと見せる何気ない仕草に、男同士のハードボイルドな友情を感じさせる。壮絶に乾いたかっこよさが光るリフである。一方、木村リフは、大人ぶっていきがる様がキュート。ジェッツのメンバーと、仲間として同じライン上に立ちつつ、確実にリーダーを務めているといった印象がある。ジェッツのメンバーたちによる歌唱もチームワークのよさを感じさせ、本番の舞台で名曲「Cool」を聴くのが楽しみだ。
(c)WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
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プエルトリコ系女子たちによる楽しいナンバー「America」。ベルナルドの恋人アニータ役のソニンは、歌声と存在感にさすがの迫力を感じさせる。同じくアニータ役の夢咲ねねは、長身で繰り出すダンスがダイナミック。リーダーの女たる堂々とした振る舞いで、大輪の花がぱっと開いたよう。バックの女子たちも気迫みなぎる踊りを見せる。
(c)WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
(c)WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
そして、トニーとマリアが二人だけの結婚式を挙げる「One Hand One Heart」。まずは、トニー=浦井健治✕マリア=桜井玲香のコンビ。浦井トニーは、マリアの存在に彼自身が大いに救われていることを感じさせる深い役作りで、その歌は涙を誘う。そんな浦井トニーにけなげについていく桜井マリア。続いては、トニー=柿澤勇人✕マリア=伊原六花による歌唱。柿澤トニーは、『この世にただ二人だけでいい……』と感じさせるような、恋への壮絶な思いがあり、そんな柿澤トニーを一心に見つめて歌う伊原マリアは、ひたむきさと、トニーを支えるしっかりとしたところを感じさせる。
(c)WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
(c)WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
ラストは、二人のトニーと二人のマリアによる「Tonight」スペシャル・バージョン。二人のトニーとも幸せそうな表情が印象的だったが、浦井トニーは恋を知って空高く舞い上がる感じ、柿澤トニーは恋によって世界から切り離されてしまった感じと、それぞれ恋の描写に異なっていたのが興味深い。初日が大いに楽しみになる公開稽古だった。
(c)WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
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キャスト意気込みコメント
■トニー役(Wキャスト) 浦井健治
『ウエスト・サイド・ストーリー』は世界中で愛されているミュージカルの金字塔。戯曲のメッセージも普遍的です。楽曲も世界中の人が知っている名曲中の名曲。愛の素晴らしさをダイレクトに感じる作品だと思います。IHIステージアラウンド東京でのウエストサイドはこれでラスト。1、2の想いもしっかり受け継ぎ、3ならではの座組にしていけたら。貧困、人種差別といった厳しい状況で生き抜いていくためには、自分たちの生活は自らの手で守るしかないのが現実だった若者たち。だけど、トニーは、そこからは何も生まれないと感じグループから抜けた。争いからは何も生まれない。このメッセージを、いまの日本で上演することの意味として、とても強く感じます。柿澤勇人くんと一緒に、お互いのトニーを作りつつ、しっかり完走したいと思います。
■トニー役(Wキャスト) 柿澤勇人
『ウエスト・サイド・ストーリー』はミュージカル史のなかで、ミュージカルの普及に一役買ったパイオニア作品だと思います。年代が変わっても国が違っても十分心に突き刺さるテーマを含んでいます。このSeason3ではそれを体現できる役者が揃っています。とにかくみんなエネルギーを持っていて「やってやるぜ!」という気持ちが伝わってきます。稽古ではすでに全幕通したのですが、自分の弱いところや「もっとこうしたい」というところが見つかりました。まだ時間があるので、あとは回数を重ねてマリアやリフたちとディスカッションをして、ひとつひとつ丁寧に、さらに深めていければと思っています。新感覚のアトラクション的な要素のある劇場で不朽の名作を体感できるというのは今後もうないかもしれないので、遊びに来る感覚で劇場に足を運んでいただければと思います。
■マリア役(Wキャスト) 桜井玲香
日々稽古を重ね改めて、時代が移り変わっても色褪せること無い『ウエスト・サイド・ストーリー』が持つ魅力の深さを痛感し、マリアを演じられる喜びを感じています。
来日版、Season1、2と多くの人が繋げてくれた、『ウエスト・サイド・ストーリー』を全力で走り切りたいと思います。
■マリア役(Wキャスト) 伊原六花
世界中で愛され、必要とされてきた名作にマリア役で参加させていただけること、本当に幸せです。
稽古で皆さんの熱量と作品の深さに発見と勉強の毎日です。知れば知るほど、どの時代にも共通する愛の形が詰まっている気がして、演じる側も観る側も心の深いところに突き刺さる作品だと思います。
私が感じた全てを観てくださる方に伝えられるように全力で頑張ります!
■アニータ役(Wキャスト) ソニン
このミュージカルの名作である『ウエスト・サイド・ストーリー』の一員である事が光栄ですし、キャスト1人1人の労力がこの大作を作り上げていることを強く感じる稽古の毎日です。まだまだ稽古で埋めなくてはいけない所が沢山ありますので、1ミリも気を抜かず最後まで精進して自分らしい深いアニータにしたいと思います! シーズンの最終だからこそ作り上げられる世界をお届けできるように一丸となって残りも頑張ります。
■アニータ役(Wキャスト) 夢咲ねね
昨年から続きます、この「ウエスト・サイド・ストーリー」という沢山の方に愛され、歴史のある作品にファイナルシーズンとして参加させて頂いていることに毎日心も身体も震えています。
Season1、2と経験されている方も多く、毎回の稽古で支え導いていただいています。
まだまだ日数が経っておらず身体に馴染むまで歯がゆい思いをしておりますが、初日の幕が開くことを待って下さっているお客様に楽しんでいただけるよう、日々稽古に励みたいと思っています。どうか、温かくお見守りください。
■リフ役(Wキャスト) 加藤和樹
稽古を重ねてきて、ますますこの『ウエスト・サイド・ストーリー』の世界観に惹かれています。演出のフリオが「ダンスも言葉なんだ」と我々に伝えてくれました。ただみんなで合わせて踊るのではなく、作品で伝えたい想い、役それぞれが抱えている想いをダンスに乗せて伝えなければならないと改めて強く感じました。まだまだ未完成ですが、進むべき道は見えているので、皆で一丸となって今よりももっと、もっと前に進んで行きたいと思います。
■リフ役(Wキャスト) 木村達成
リフとして舞台上で生きていることや、ジェッツのメンバーと過ごす時間が今では当たり前になっています。そんな中でお芝居を一緒にできること、一緒にシャークスと戦える事、この作品を作れる事がとても幸せです。感謝の気持ちを『ウエスト・サイド・ストーリー』で爆発させたいと思います。
そしてこの世界観に触れた事で役者として成長し、またこのメンバーに会ったときに尊敬されるような人としていられるように、毎日精進していきたいと思います。劇場でお待ちしております。
■ベルナルド役(Wキャスト) Oguri
何も知らずに映画を見ていた時はなんとなく「トニーとマリアの愛を阻む人」とうイメージだったベルナルド。でも稽古を通してベルナルドなりの強い正義と愛がちゃんと存在しているんだと知りました。そしてダンスの一つ一つに込められた強いメッセージ。こんなにも細部までこだわり抜かれた素晴らしい作品だからこそ大事に大事に向き合って、自分にしか作れないベルナルドを演じたいと思っております!
■ベルナルド役(Wキャスト) 有澤樟太郎
ベルナルド役を演じます有澤樟太郎です。今絶賛稽古中なのですが、エネルギッシュで画期的なとてもいい現場です。稽古初日前の緊張が嘘のような日々新しい刺激をもらって臨んでいます。Season3でまた演者が変わることによって、違う良さ、化学反応が出せるよう日々研究し楽しんでいます。本番が近づくにつれて皆様に早く観ていただきたい気持ちでいっぱいです。作品が持つエネルギー、言葉の重み。僕たちが演じる全てを届けられるよう精一杯頑張ります。是非劇場でお会いしましょう。

取材・文=藤本真由(舞台評論家)

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