ゆず最新作『YUZUTAWN』オフィシャル
インタビュー到着 「楽曲の中で自分
たちらしさを見つけていくことができ
た」

ゆずが2020年3月4日にリリースするアルバム『YUZUTAWN』について北川悠仁、岩沢厚治が語ったオフィシャルインタビューが到着。以下、その内容をお届けする。
――アルバム『YUZUTOWN』、まずはどのように制作がスタートしたのでしょうか?
北川:「公園通り」が2018年の5月リリースで、言ってしまえばそこからスタートしてるんですけど、いきなりアルバムを〝さあ作ろう〟っていうよりは、活動を続けながらシングルをだんだん積み上げていってアルバムというものの姿が見え始めたというか。それでじゃあアルバムを作ろうかってなったときに今ある曲を眺めながら、どういうアルバムにしたらいいのかなっていうのをそこで考え始めたんですよね。
――そういう意味では、アルバムの成り立ちとしては自然というか。そこからどのようにコンセプトが生まれて、各曲とリンクしていったんでしょうか?
北川:シングル曲を制作しながらもアルバムに向けての曲作りを同時に進めていく中で、出来上がっていく曲が、前作の『BIG YELL』でやった応援歌とか、20周年からあった〝国民的アーティスト・ゆず〟みたいなものではない、より身近な曲がポロポロと出来始めていったんですよね。そういう曲ってシングルとアルバム収録曲で分けていたようなイメージだったんですよ。つまり、アルバムの中では個人的なものや身近な曲っていうのもあるんですけど、シングルは割と背負うものが大きいという感じだった。でもだんだんその隔たりがなくなっていって、ナチュラルな曲というのかな――もちろん簡単に作っているという意味ではなく――より自然に出てくる言葉みたいなものがあったので、そういった感覚からコンセプトを探し始めました。で、そのときにプロデューサーと話していく中で、『YUZUTOWN』というものが出てきたんです。大きな「国」や「世界」ではなくて、街の中で暮らす人たちの息遣いとか葛藤とか、出会い別れ、そういうものを表現している曲が多かったということが「TOWN」というコンセプトに結びついていったんです。それが固まって、ジャケットのアートワークのイメージが並行して出来上がり、レコーディングも同時に進んでいったという感じですね。
――制作作業はドームツアーと平行して行われたんですか?
岩沢:ドームツアーがありがたいことにというか、毎週末あるようなものではなくて比較的間が空くスケジュールだったので、合間合間で進めていったという感じですね。
――先ほどアートワークのお話が出ましたが、ピクセルアートで懐かしさと今っぽさが共存するワクワクするようなものが出来上がりましたね。
北川:『YUZUTOWN』というコンセプトからアートワークに広げて話をしていく中で、絶対面白いものが出来上がるなっていう手応えを、最初の時点から感じていました。今回はピクセルアートのeBoyと全面的にコラボレーションしたのですが、彼らから上がってくるラフが、もうブッチギリで良くて(笑)、安心して作品作りができましたね。特に今回は早いスタートが切れたというか。レコーディングって大抵追い詰められてガガガってやらなきゃいけなくなるんですけど、そうするとアートワークとか、コンセプトの伝え方みたいなこととか、本来じっくりやりたいことも時間切れになっちゃう、みたいなことがなくもなかったので、かなり早い段階から曲を仕上げていって、全体が見えるようにっていうのは心がけながら作っていきましたね。そうすると楽曲制作のペースに合わせてアートワークの進行も早くできるので、すごくリンクしながら作れていった感じがありました。だから例えば収録曲の「チャイナタウン」で描いた中華街だったり、「イマサラ」のカレー屋さんだったり、それから「SEIMEI」の木もあるんですけど、曲の世界観とアートワークががっちりリンクしてできましたね。逆にビジュアルが形になっていくのを見ていると曲もどんどん色づけしやすかったですしね。
――なるほど。同時進行しているからこそ相互にインスパイアされるものがあると。特に「イマサラ」はハイパーな打ち込みが特徴的なインド・ポップとも言うべき曲で驚きました。
岩沢:長いことゆずでやってるんですけど、いよいよどうすればいいんだろうって状態になったんですよ、この曲は(笑)。で、紐解いていくと、我々がJ-POPと呼んでいる音楽では、コード内の3度の音をすごく大事にすることによって成立するんですけど、この曲では一切通じないということがわかったんです。そうなった時にいろんなチューニングを試して、あるオープン・チューニングを開発したんですよ、これだ!っていう。そこでようやく居場所が見つけられましたね(笑)。シタールにも負けないアコギができました。
――音楽的にもいろんな要素が入っているのが、まさに『YUZUTOWN』というコンセプトを表現していますよね。
北川:そうですね。
――例えば、和音階を駆使した「花咲ク街」では、「雨のち晴レルヤ」などで追及してきた楽曲の世界観をさらに推し進め、また、「GreenGreen」では90年代バンドサウンドへのアプローチという、実はこれまであまりなかったタイプの楽曲にもチャレンジされていて、深化と進化の両方のベクトルが同じ街の中に存在しています。
北川:確かに。そういうことも含めて、フラットな状態で臨めたアルバムだと思います。「花咲ク街」に関しては、和音階って特別に意識しているわけではないんですけど、やっぱりDNAの中にあるんでしょうね。それはもう、「夏色」も「栄光の架橋」もそうですからね。ただ今回はそこの部分をより意識して作ったんですけど、それはより和モノポップスにしようということではなくて、そこにオルタナティブな要素をハイブリッドした形で新しいものにチャレンジしたかったからなんです。歌詞の内容も、エールではないんですよね。もうちょっとそっと見守る感じで、そこがこのアルバムでの存在証明というか、今僕らがやりたいことが詰まってる曲になったと思います。そして「GreenGreen」は、80年代が歌謡曲の時代だったとしたら、90年代ってバンドサウンドが全盛になった時代だと思うんですよね。そこに僕らがパッと、カウンターのように出てきた(笑)。もちろん僕も聴いてはいたんだけど、ゆずとしてそういった90年代バンドサウンドみたいなものは、もしかしたらあえて避けていたのかもしれないですね。巡り巡ってこういったサウンドが僕らから出てきたと いうのは、意外と言えば意外かもしれない。ただ、大切なのは良いメロディーと良い歌詞、これに尽きるんです。
岩沢:どちらも僕らが若かったらできてない曲だと思いますね。 ポップだけどどっしりしてるんですよね。その微妙な加減はやっぱり自分たちの音楽を追求してきたからこそ出せるものなのかなという気がしています。
『YUZUTAWN』初回盤
――「フラットな状態」というお話がありましたが、そこの部分をもう少し詳しく教えてください。
北川:『BIG YELL』で、すごくいいアルバムができたという手応えを感じたのと同時に、いつもだったら例えば「代官山リフレイン」とか、そういう私小説的なものをアルバムの中に必ず置きたくなるんですけど、それを置く場所がなかったんです。本当に〝YELL〟に特化したアルバムが出来上がって、それはそれでもちろんやりきった充実感はあったんですけど、一方で満たされない部分というか、不完全燃焼の部分もあって、そこを「公園通り」というシングルで表現できたんです。実際にシングルとして出して、ファンやリスナーとの距離感みたいなものが『BIG YELL』でやった時とはまた違う形で届いた感じがあったんですよね。リスナーもこういう曲を待っていた、みたいなのがタイミング的にもすごくあったみたいで。自分の中で〝ゆず〟だったり〝リーダー〟だったり、なんか大きくなりすぎた存在をすごくフラットに戻して曲を書くことが出来始めたんですよ。そういう意味で、フラットな状態で臨めたアルバムです。そしてそこはすごく大きかった気がしますね。
――それはある意味で、ゆずらしさの再確認ということだったんでしょうか?
北川:だと思います。それと期せずして弾き語りドームツアーがあって、それはもうアルバムツアーとかリリースに沿ったものではなかったから、自分たちで作ってきた310曲をかたっぱしから聴いたし、その中で自分が心揺れるものとか、当時はわからなかったけど逆に今の方が寄り添えるなぁみたいなものもあって、そこですごく再確認ができましたね。ああ、ゆずの良さってこういうところにあったなって。ただ弾き語りというスタイルの再確認ではなくて、楽曲の中で自分たちらしさを見つけていくことができた時間でしたね。
岩沢:弾き語りドームツアーはやっぱりやって良かったというか、なんだろうな、自分たちから発する音楽がちょっと自分たちに引き寄せられたというか、取り戻すような感じがすごくあって。ああ、そういえばこんな感じでやってたなっていう、これしかなかったなっていうのを再確認できましたね。だから結果論ですけど、今から振り返ると弾き語りドームツアーが良いきっかけになったと思いますね。
北川:だから、すごい日常に近いというか(笑)。夜中歌詞が浮かんで飛び起きて、「いいかも!」とか、すごく個人的に音楽を作っていましたね。もしかしたら作っている段階ではあんまりリスナーも意識してなかったかもしれないっていうくらい、作りたいメロディとか歌詞を日々考えながら音楽と一緒に生きているような感じでした。時代性っていうのも変な話あんまり意識してなかったと思いますね。やっぱりどんどん多様化してるじゃないですか。その中でむやみに時代を追うよりは、好きなことをすごく丁寧にやるってことが逆に今っぽいし、リアリティーがあると僕は思ったんですよね。だからそれをすごく素直にやりました。
――そこには初期衝動とはまた違う、熟練した手触りのようなものを感じますね。
北川:絶妙なところを狙ったような気がします。1曲1曲の曲のコンセプトをすごくしっかり持って作ってはいるんだけど、それでいてそれらがアルバムというまとまった形になったときも1曲1曲がバラつかないというか、主観と客観を用いながら作っていましたね。
岩沢:アルバムを作り続けてきているので、そこには当然こだわりがあるんですけど、後々未来の人が今僕らのやってることを見たら、何やってるんだよって言うかもしれない(笑)。でもアルバムとしてまとまったときに見える景色っていうのが確実にあるし、それによって成立するツアーというのが絶対にありますからね。そこは信じているんです。
――さて。様々な音楽的要素や過去や未来といった時間軸もフラットに盛り込んだ、アルバム『YUZUTOWN』。1曲目は「SEIMEI」で始まります。この曲から始めようと思ったのは?
北川:当初はアルバムをこの曲で締めくくろうと思ってたんですよ。まずは『YUZUTOWN』の世界に入ってきてもらって、最後にそのコンセプトごと包み込むようなイメージで「SEIMEI」を持って行こうかなって思ってました。そもそもドームツアーに向けて書いた曲で、大きなテーマを扱ってはいるんですけど、でもここで歌われているのはすごく身近なものだったりもするんですよね。そう考えたら、アルバムがこの曲から始まるのも面白いんじゃないかなって思ったんです。ドームツアーからの歩みも感じられるし。さらにアルバム用のアレンジを「栄光の架橋」でタッグを組んだ松任谷正隆さん、それに最近の僕らのことを一番知ってくれている蔦谷好位置くんの二人にお願いするという超豪華な布陣で臨みました (笑)。最終的なアレンジに落とし込むまで試行錯誤を繰り返してたんですが、そこである時、松任谷さんが SAKURA STUDIO(※ゆずが主にプリプロなどに使用するプライベートスタジオ)にわざわざ来てくれて、僕らがいつも使っているピアノで前奏を弾いてくれたんですよ。その瞬間一気に見えました。ピアノもそうですし、ドラムやストリングスなど「SEIMEI」は生の楽器にこだわって、その脈動を感じてもらえるような曲になったんじゃないかなと思いますね。だから1曲目というよりも、「M-0」といった感じで、2019からずっとやってきたものと、2020をつなぐ架橋のようなイメージで、アルバム『YUZUTOWN』は「SEIMEI」から始まります。
岩沢:弾き語りとして作って演奏もした曲を、さらにリアレンジして曲をグレードアップさせるっていうその過程に、ゆずが歩んできた道のりを感じてもらえると思うし、僕らとしても、曲がどうなっても根っこは変わらないなっていう強さの部分を再認識しましたね。
――そしてラスト「公園通り」。ここで表現されている、あの頃と現在の二重写しになった街の景色が、いろんな意味で今回のアルバムのいたるところに透けて見えるようです。
北川:僕は青春時代が良かったとは必ずしも思ってなくて(笑)。 初期の曲も青春時代が終わった後に書いたものが多いんです。もう戻れないなっていう感覚で。でもその時は心のどこかで戻りたいっていう気持ちがあったんでしょうね。前に進んでいく恐怖心みたいなものもあっただろうし。でも今はそういう恐怖心なんて まったくない。
岩沢:やっぱり年齢を重ねてくるとそれなりの膿も出ますし(笑)、まだまだ爽快な汗も出ますし、いろんなものが出ますよね。曲を作るってそういうことかなって思うから、膿が出てしまっても別に驚くことはなく、そりゃあ出るわって(笑)。そういうのを全部受け止めないとリアルにならないですよね。きれいごとばかりでは歌にならないのと同じように。そこはいつまでも自然体でありたいなと思います。

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