【ビッケブランカ インタビュー】
ビッケブランカはどんどん
我が儘になってきている
「Avalanche」はアルバムの中で
一番価値あるメッセージになった
配信シングルの「白熊」も収録されていますが、ここまで音数を厳選したアレンジは珍しくないですか?
めちゃめちゃ引きました。最近、そのムーブメントが自分の中にあって、実は「Ca Va?」もかなり削いでいるんですよ。音数を減らして1個1個の厚みを出すっていうJ-POPとは逆行しちゃうんですけど、そういう作りが最近好きですね。そういう作り方のほうがバーン! と来るんじゃないかと思うんですよ。
歌詞が切なくて、《she’s my gal》の“she”は誰か他の人が好きなんですよね?
そう。フラれたのかどうか分からないけど、他の誰かに酷いことをされたんです。でも、僕はその人が好きなんです。その人が誰かに悲しい思いをさせられたんですけど、“大丈夫? 慰めるよ”ではなく、“誰にやられた⁉ 俺が言ってやる! 許さん!”っていう。小学生の頃ってみんなそうだと思うんですよ。僕はヨシミちゃんが好きだったんですけど、ヨシミちゃんをカズトがいじめるわけですよ。そしたら“カズト! てめぇー”ってなるじゃないですか、普通の小学生って。その頃の人を好きって気持ちが純度100パーセントだと思っているんで、その時の気持ちに戻って書きました。大人になると、いろいろな要素が入り混じるじゃないですか、好きとか一緒にいるという感覚に。その頃の僕だったら、絶対に“カズト、許さん!”ってことですね(笑)。大人になってもそうありたいと思います。
そんなところも自然体に感じられますね。
ストイックになることで、余計なものを飾り付けないビッケブランカ化が進みますよね。思っていることを、“これって一般的にどうなんだ?”みたいなフィルターを通さなくなっているというか、“自分はこう思うんです。お願いします!”ってスタンスで曲を書き始めているかもしれないです。
ところで、なぜ“白熊”なんですか?
強くて、やさしくて…やさしさの下、強さを発揮するわけじゃないですか。ただ乱暴なだけじゃない。その象徴として、白熊がぴったりだったんです。地上最強の生き物だけど、無駄な捕食はしない。でも、戦ったら最強っていう。そんな存在だったらいいなと。
そして、「Avalanche」。これはもう『FEARLESS』の「THUNDERBOLT」、『wizard』の「Great Squall」同様、アルバムの最後を締め括る自然の神秘シリーズの…
はい、第三弾! 今回は雪崩です。さすがに今回はシリーズとして書きましたけど(笑)、改めて冬とか雪が好きなんだと思いました。「白熊」もそうだし、「まっしろ」もそうだし。冬とか雪に根付いていくんだろうなっていう中で、それの最強のものって言ったら、吹雪か雪崩なんで、雪崩を選びました。「Great Squall」ができた時から、次は何にしようかとずっと頭の片隅にあったんですよ。
《最低の人間として》という歌詞は音楽シーンの一番下、つまり新人も新人ということなのですか?
いえ、言葉通り“最低の人間”ですよ(笑)。自覚をし始めたわけですよ。デビル化が進む中、ふと我に返った時に“最低なんだろうな”って思ったんです。でも、それは昔からいろいろな人に言われ続けてきたんです。言われるたび、“いや、そんなことないから”って言い続けて、当たり前に“そんなにことはない!”と思っていたんですけど、ある角度から見たら、最低と言われても仕方ないと許容したんです(笑)。そこに気付くと、誰しもが自分のことを最低と思っているんじゃないかって。そういう気持ちになっていくんですよ。この自然の神秘シリーズを作る時って、全人類を代表するつもりで歌うんです。その中で、「THUNDERBOLT」は初めて“I”ではなく“We”という主語で歌えたし、「Great Squall」は動物も含め、生きていくことの真理まで歌うことができた。だから、「Avalanche」も自分がふと思った“俺って最低だな”って感覚を、同じようにみんなが持っているんじゃないかという考えの下、そんな俺たちがどうやって生きていくのか…みたいな順序で書いていったんです。
そういう曲だったのですね!?
過去を振り返った時、最低の人間だと逆に自分で思ってた時期があったことを思い出したんです。デビューが決まる前、曲ばかり書いている宙ぶらりんの時期があったんです。作っている曲がかたちになると信じながら、なんとか食いつないで、曲ばかり作っていたんですけど、とことんストイックに寝る間も惜しんでやっているのかと言ったら、そうでもなかった。そういう状況って誰にでも起こり得るんじゃないかって。特に指すものがあったり、やりたいことがあったりする人には。そういう時って、ほんとに自分のことが最低に思えるんですよ。今、そんな時期にいる人が「Avalanche」を聴いたとしたら、《夢を見る者たち 全てを飲み込んで》《あきらめぬ者たち 全てに幸あれ》という言葉で、ちょっとでも鼓舞できたら、雪崩みたいにバーン! と勢い良く背中を押せたらなっていう。言葉数が少ないからこそ、強い言葉をポンポンとはめることができた。アルバムの中で一番価値のあるメッセージになったと思います。
あと、未だにライヴでも歌っているインディーズ時代の「TARA」をミックスし直して収録したのはなぜですか?
すごく好きな曲であると同時に、リアリズムを持って歌詞を書くことができた初めての曲なんですよ。それともう1曲、「SPEECH」(2015年8月発表のミニアルバム『GOOD LUCK』収録曲)。その2曲が僕の歌詞の書き方を根本から変えたので、このタイミングでしっかり聴いてほしかった。ミニアルバム『Slave of Love』(2016年発表)に入っていた「Slave of Love」を『FEARLESS』に入れたように、僕はこういうことをよくやります。いい曲は何回も聴いてほしいんです。
今回のアルバムにぴったりだと思いました。ピアノの弾き語りの「かたうた」も“恥ずかしいから”という理由で歌詞を載せていないじゃないですか。今回のアルバムにしか入れられなかったんじゃないかな。
そうですね。『wizard』には絶対入らない。あのアルバムはかなり作り込んでいるから。そう考えると、ビッケブランカってこれまで作り込みすぎていたのかもしれない。もっと簡単なんですよ、曲作りって。そこに気付き始めている。だから、曲作りやライヴをやることはどんどん簡単に、どんどん楽になっているんですけど、それによって上がっていくステージには強者がたくさんいて、生半可なことじゃ勝てない。でも、それすらも楽しいという面白いことが起きているんです。
4月からは東名阪ホールツアーを含む全国ツアー『Tour de Devil 2020』が始まりますね。
それはすごく頑張りたい。ホールは椅子があるじゃないですか。お客さんがもみくちゃにならないから、丁寧なライヴができそうという感じはあります。もちろんステージでやることは変わらないんですけど、観せ方が根本的に変わるわけだから、面白いことになるはずです。僕自身、とても楽しみにしているんですよ。
取材:山口智男
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アルバム『Devil』2020年3月4日発売
avex trax
- 【CD+DVD】
- AVCD-96457/B
- ¥4,500(税抜)
- 【CD+Blu-ray】
- AVCD-96458/B
- ¥4,500(税抜)
- 【CD】
- AVCD-96459
- ¥3,000(税抜)
4/03(金) 宮城・仙台Rensa
4/12(日) 石川・金沢Eight Hall
4/18(土) 北海道・札幌PENNY LANE 24
4/29(水) 大阪・大阪オリックス劇場
5/01(金) 愛知・日本特殊陶業会館フォレストホール
5/03(日) 広島・CLUB QUATTRO
5/04(月) 福岡・福岡DRUM LOGOS
5/09(土) 東京・中野サンプラザ
ビッケブランカ:美麗なファルセットヴォイスと緻密なコーラスワークを独創性に富んだ楽曲に昇華させ、ポップとロックの間を自在に行き来する、新しいタイプのシンガーソングライター。2016年10月にミニアルバム『Slave of Love』でメジャーレーベルに移籍し、19年に発表したシングル「まっしろ」が日本テレビ系ドラマ『獣になれない私たち』の挿入歌に、同年6月に発表した3rdシングル「Ca Va?」がSpotifyのCMソングに抜擢されるなど幅広い世代から注目を集める。ビッケブランカ オフィシャルHP
「Black Catcher」MV
「Shekebon!」Audio Video