Mrs. GREEN APPLE 留まることなく進
み続けるバンドが成し遂げた、“第1
章の集大成”

Mrs. GREEN APPLE ARENA TOUR / エデンの園 2020.2.15 国立代々木競技場 第一体育館
例えば、2017年夏に開催した野音ワンマン。メンバーが客席へ水鉄砲を発砲しながらキャッキャしていたほど夏まっしぐらなライブだったにもかかわらず、終盤で大森元貴(Vo/Gt)が重めのMCをするシーンがあった。2018年の幕張メッセワンマン、ブロードウェイを彷彿とさせるセット&衣装を用いた“ザ・エンターテインメント”みたいなテンションのライブだったにもかかわらず、途中で演奏されたバラード「They are」だけは重々しく異質な響きをしていた。その幕張ワンマンのあとには『ゼンジン未到のプロテスト~回帰編~』、『The ROOM TOUR』と異なるコンセプトのツアーを2本開催。時には観客にも受け手としての姿勢を求めながらライブ力の向上を図った。
Mrs. GREEN APPLE 撮影=上飯坂一
Mrs. GREEN APPLE 撮影=上飯坂一
そうして辿り着いたのが今回の全国アリーナツアー。結成当初からの目標を猛スピードで達成できた事実に、メンバー自身も驚いているようだ。急速に、しかし実直に進んできた日々の結実のようなライブに、大森、若井滉斗(Gt)、山中綾華(Dr)、藤澤涼架(Key)、髙野清宗(Ba)のバンドに懸ける想いの強さを見た。
Mrs. GREEN APPLE 撮影=上飯坂一
ステージの後方と両サイドには巨大なLEDが並び、天井には草花が飾られ、ステージから客席エリアに向けて花道が伸び……とアリーナ仕様のセッティングがされたステージに、定刻を過ぎてメンバーが登場。炎が上がり、赤色の照明で会場を染めた「インフェルノ」、対照的に青色の照明で染めた「藍(あお)」と新旧ロックチューンでライブはスタートした。最初のMCは大森が短く挨拶するのみ。すぐに演奏を再開する。
Mrs. GREEN APPLE 撮影=上飯坂一
次の3曲はインディーズ期~デビュー直後にリリースされた曲で、「VIP」と「アンゼンパイ」はライブで演奏される頻度もわりと高いが、それにしても<内容が薄すぎて反吐が出ちゃう>という歌詞をアリーナでコール&レスポンスする光景はなかなかインパクトがある。Mrs. GREEN APPLEの曲には、人の心の綺麗とは言えない部分を直視させる類の曲も多い。あらゆる感覚を麻痺させて、いっそアホなフリをして生きた方が人生楽かもしれないが、そうなれない寂しさ・虚しさが大森に曲を書かせている。だからこそ彼らの音楽は、人の涙や心の叫びに気づき、寄り添うことができる。
Mrs. GREEN APPLE 撮影=上飯坂一
Mrs. GREEN APPLE 撮影=上飯坂一
6曲目は最新アルバム『Attitude』より「ProPose」。『Attitude』収録曲にはデスクトップミュージック寄りの曲も多く、ライブでどう演奏されるのか想像しづらかったが、1番はボーカル+打ち込みで2番からバンドが入るアレンジで披露された。特にバンドが入ってからの展開が面白い。不規則なタイミングで鳴っていたキメが徐々に音数を増やし、やがてフレーズの断片になる。曲が進むにつれて、最初は大森のシルエットを浮き上がらせるのみだったピンク色のライトが、照らす範囲を広げていく。
Mrs. GREEN APPLE 撮影=上飯坂一
この曲もそうだったように、全体的に、照明・映像などの演出類が曲に呼ばれるような形で施されていたのが印象的だった。喩えるなら、裸をデフォルメするために衣服を着ていた状態から、私に似合うからという理由で衣服を選べるようになったような。およそ1年半前、「このぐらいやらないとエンターテインメントとして成立しない」と言いながらきらびやかなステージを作り上げた幕張の頃と比べると、それほどの違いがある。そしてその変化はバンド自体の成長ありきのものだということを、「Soup」における低音域を豊かに響かせるアンサンブル、初期曲「愛情と矛先」における一枚岩のバンドサウンドが物語っていた。
Mrs. GREEN APPLE 撮影=上飯坂一
Mrs. GREEN APPLE 撮影=上飯坂一
ライブ中盤でハイライトが訪れた。まずは「Viking」。異国情緒溢れるこの曲では若井がアコースティックギターを、髙野がチェロを演奏。LEDに甲板の映像が映り、クルーに扮したダンサーが登場して、ステージが海賊船のようになった。終盤ではLED内の雨風が激しくなり、ダンサーを従えた大森がステージセットごと上昇。その様子が人身供犠に見えてゾクっとする。
Mrs. GREEN APPLE 撮影=上飯坂一
ここで暗転。曲が終わってもなお鳴りやまなかった波の音が聞こえなくなったところで照明が点き、花道の先端でアコギを弾く大森の姿が明らかになった。そうして始まったのは「クダリ」。この曲が今回のツアーの核心だろう。10代の頃に書いた歌詞による1番は大森による弾き語りアレンジ。そして現在になってから歌詞を書いたという2番に関しては、彼が花道を歩いてステージへ戻ったあと、5人で演奏された。あの頃は孤独だったが、今はバンドがあるのだということ。5人で鳴らせば、いつでもバンドになれるということ。戻れる場所があるからこそ、いつでもまた一人になれるということ。そんなことを示唆させる演奏・演出にこのバンドの物語を思わずにいられない。後に演奏された「僕のこと」でも同じ種類の感動に包まれた。<ああ なんて素敵な日だ>のフレーズとともにバンドサウンドが溢れ出すなか、LEDに咲いたモノクロの花が色づく様子が美しかった。
Mrs. GREEN APPLE 撮影=上飯坂一
サンプリングパッドから出る効果音を組み込んだ山中のソロにベース、キーボード、ギターが順に加わるセッションを経て始まった「REVERSE」は、音源よりもさらにヒップホップ色強めのアレンジ。ドラムの生きたビートを筆頭にバンドがグルーヴを高めていく。藤澤の奏でる連符、バンドの鳴らす不協和音がおどろおどろしい雰囲気を作り上げる「ア・プリオリ」では大森が屈みこんで唄う場面も。若井のギターソロが抜群だった「ナニヲナニヲ」、そこから曲間を空けずに始まった「Ke-Mo Sah-Bee」でさらに熱量が高まった。一方、「最後の曲です!嘘です!」とジョークを言ったり、ドラえもん、しずかちゃん、ジャイアンのモノマネをやったりと、MCはリラックスした雰囲気である。
Mrs. GREEN APPLE 撮影=上飯坂一
終盤戦はいわゆる定番曲がメイン。2番以降においてライブアレンジが加えられている曲も多く、場数を重ねてそれぞれの曲が変化・進化していったことを読み取ることができた。「WanteD! WanteD!」ではオーディエンスの歌声が全方位から飛んでくる。EDMに振り切ったサウンドの意外性からリリース当時は驚きの声もあったものの、今となってはこれほどまでに愛される曲になった。ここで放たれる「青と夏」の疾走感と開放感たるや。映画主題歌なのに<映画じゃない>と唄うこの曲には、作品を“自分事”として持ち帰ってほしいという願いが込められているが、彼ら自身MCでよく「後悔しないように楽しんでほしい」と言っているように、その願いはミセスのライブにも込められている。<主役は貴方だ>と告げてから始まる最後のサビでは、メンバーから見た客席の様子がリアルタイムでLEDに映っていた。
Mrs. GREEN APPLE 撮影=上飯坂一
Mrs. GREEN APPLE 撮影=上飯坂一
「Folktale」で本編を終えてからのアンコールでは、まず大森と藤澤の2人で「Circle」を披露。どの音域もたっぷり鳴らすことのできる大森のボーカルに藤澤の鍵盤がぴったりと寄り添う名演だった。そこから若井、山中、髙野が合流し、一人ずつ心境を語るMCへ。今回のツアーやこれまでの道のりを噛み締めるようにして演奏に臨んでいたことや、ライブが楽しかったというシンプルな実感、そして観客への感謝をそれぞれの言葉でファンに伝えた。今年でメジャーデビュー5周年を迎えることもあり、今回のツアーを第1章の集大成にすると公言していた5人。それにふさわしい、かけがえのないツアーになったのではないだろうか。
Mrs. GREEN APPLE 撮影=上飯坂一
その後、バンドの原点にあたる曲「我逢人(がほうじん)」を演奏し、ライブは終了。同曲にバンドの未来と期待を乗せ、5人はステージをあとにしたのだった。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=上飯坂一、makiko takada
Mrs. GREEN APPLE 撮影=上飯坂一
Mrs. GREEN APPLE 撮影=makiko takada

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