本郷奏多「久々に“普通の男の子”を
演じてます(笑)」 『舞台 あおざ
くら 防衛大学校物語』インタビュー

2019年10月より、MBSドラマ特区枠で放送されたドラマ版に出演したキャストが続投しての『舞台 あおざくら 防衛大学校物語』は、“日本一厳しい学校”とも言われる防衛大学校で繰り広げられる群像劇。原作は週刊少年サンデーにて連載中の二階堂ヒカル原作の人気コミックだ。学生たちのリーダー的存在の主人公・近藤勇美を演じるのは、確かな演技力で個性的な役柄を次々にモノにしてきた本郷奏多。本作では“久しぶりの普通の男の子”として、同年代の役者たちと存分に青春を謳歌する。
ーードラマを終え、いよいよ舞台版が始動。今のお気持ちは?
最初からそういうプロジェクトとして始まった作品でしたので、「舞台化だ。やったー!」という感じではないです(笑)。でも舞台をやることがわかっていた分、ドラマの収録中から「みんなこのまま長くやっていく仲間なんだ」という気持ちで挑めたので、それは良かったなと思ってます。一緒にいる時間の長さは単純にプラスに働きますから。「みんなで一緒にアレ、頑張ったよなぁ」って、ドラマのエピソード5話分でやってきたことへの共通認識もありますし、キャラクターとして自分が体験して残っているものの積み重ねは大きいんじゃないかな。「はじめまして」の顔合わせからスタートして、本読みがあって、稽古が始まって……という初期段階での知らない同士感をすっ飛ばせるから、スタートダッシュできていいかなぁと思ってます。
本郷奏多
ーードラマの撮影中、特に意識していたことは……。
自分は基本的に共演の方とのコミュニケーションを必要以上に取るタイプではないですが、『あおざくら』のみんなとはなるべく合間の時間なんかでも一緒にお弁当食べたり、話をしたりってことは、自分の中でもしていたほうですね。男子校ってこういう感じかなって。僕、基本的にそういう裏での役者同士の関係性って作品とは独立しているものだと考えてるんです。でも今作ではそれがすごく活きそうだなって感じるので、積極的にその……“お仕事”じゃない部分でもみんなと仲良くできたらなって思っていました。
ーー共演者のみなさんの印象も教えてください。
みんな面白いですよ(笑)。防衛大学校の制服はちゃんと決まった着方があって、シャツのステッチとズボンの正面とベルトのバックル内側のラインを一直線に揃えるとかいろいろと細かいんですけど、それをみんなで揚げ足を取りまくる遊びがちょっと流行りました。ベルトがずれてたら「ベルト、不備」みたいな言い方をするんです(笑)。なので、よくみんなで不備を見つけあってましたね。だいたいいつも(原田忠役の結木)滉星とか(武井寅明役の)小園(凌央)くんとかは不備が多かったです(笑)。
ーー物語の舞台となる防衛大学校は幹部自衛官を養成する機関。一般的な大学と異なるちょっと特殊な環境ですね。
防衛大学校ならではの独特なルールってすごくいっぱいあって……。それがあるからこそ、そこから面白おかしいエピソードを抽出して物語が作られているんですけどね。ドラマでは実際の卒業生の方が監修についてくださって、リアルに学生生活のことをお話ししてもらいました。「敬礼の角度はこうだよ」とか、ほかにも「うわっ、そんなルールがあるんだ」って知らないことがたくさんあったので、それを事前の準備期間の中で聞けたのは良かったですね。実際やっているのは……例えば「気をつけ」の時に足を開く角度は60度にしなきゃいけないんですけど、僕らがやると「あー、君、それは違う。60度じゃなくて、65度だよ」「いや、それはもう一緒じゃないかな……」って(笑)。細かくも厳しい世界なんです。
本郷奏多
ーー人間関係に対しても、一般人としては理不尽を感じる場面も多いかと。
僕自身は完全に合理主義者なので、必要以上の理不尽は「古い。前時代的だな」って思ってしまうんですけども……。なんでしょうね……国民のみなさまの税金を基にしているという前提のある学校ですし、自分たちはそういう選ばれた人たちであるというプライドもあるでしょうし、伝統もあるでしょうし……うん、そういうのも全部含めて僕は「面白いな」って思います。見方によっては「今どきそんなのパワハラじゃん」とかもあるんですけど(笑)、この作品に関してはそれらを「正義」とする世界を面白おかしく描いているんだなっていう理解ですね。
ーー時代に関係なく貫かれる“無駄だけど大事なこと”が描かれている。
“無駄だけど大事なこと”……矛盾してますけど、そういうことです。この作品に関しては単純にそれを「防衛大学校という場所がありますよ。そこではこういう変わったことが起きてますよ。面白いよね」って語っているところが魅力なんだと思います。そういう視点の“コメディ作品”として楽しんでもらえるように、僕らもこの世界観を楽しく提示していきたいです。
ーー本郷さん演じる主人公の近藤勇美は、学費に困っていたところ給料も出る防衛大の存在を知り、見事試験を突破した青年。
「勉強がなによりも好き」っていうのがすでにあまりいないタイプですし、「お金が好き」って割り切って言っちゃうし……なんか、すごく変な子だと思う。でも根元には誰よりも仲間思いなところがありますし、完全に目的のためだけに動いているわけでもなくて。プロフィールだけ、特徴だけ見るとすごくバランスの悪い子かと思いきや、意外と人間味があるっていうところのギャップが面白く見せられるキャラクターだと思います。映画やドラマでは生きるか死ぬかの戦いをやっていたりと割と人間じゃないような役も多いので(笑)、個人的にはこの『あおざくら』が久々に普通の男の子を演じたかな、と(笑)。とはいえ普通ではあるけれど強いキャラクターでもあったので、結構振り切ってコミカルに、漫画っぽく演じてきたつもりです。
本郷奏多
ーー原作も研究されて。
はい。原作があるものは、原作が好きだからドラマや舞台を観てくださるファンの方もたくさんいらっしゃいますから、原作のイメージに近いお芝居をするのが最善かなって。ファンの方の思いも汲んだ作品にできるよう漫画を読んだりアニメを見たりをしっかりやって、原作を一番リスペクトして臨みます。今回も漫画の『あおざくら』を読んだ上で、原作の近藤勇美の持つ雰囲気で演じられたらいいなと思いました。また、この登場人物たちはくだらないことでもすごくムキになって、目をキラッキラさせて頑張ってるんです。そこは本当に大事にしたい。例えば襟につける校章が輝いてないと「ダメだ」「じゃあどうしたらいいんだ!?」って互いに試行錯誤して本気でガーッと磨いて、「これでもダメなのか。クソッ」とか(笑)。はたから見たらどうでもいいことを生き生きと、100%の表情、100%の感情で頑張って悔しがって……っていう姿、この面白さを伝えるのがいいんです。また、そういうのをみんなでやるのも楽しいんです!
ビジュアルもできるだけ原作に近づけたいと思っています。いくらいいお芝居をしても、いい脚本であっても、あまりにも原作から離れたビジュアルで演じていると原作ファンの方はそのことがストレスになってお話が入ってこなくなっちゃうので、なるべく近づけるのが親切だと思うし……ぜひそうしたい、と僕は考えます。『あおざくら』は髪型や格好は普通だけど、近藤勇美は「目の輝きがない男の子」って言われてるので(笑)、そこはもう「このまんまでいけばいいかな」ってところですけど(笑)。
ーー舞台版はドラマでのその先。「秋季定期訓練」中心にしたストーリーになるそうですね。
どこを一番見せたくてどういうテーマなのか、具体的なところはまだわからないんですけど、原作でもいろいろ面白いエピソードがあるのでなにを描いていくのか楽しみですね。ドラマにはいなかった土方も新しく加わって……彼は強烈に物語をかき乱してくれるキャラクターなので、それがまたいいエッセンスになって盛り上がっていくんじゃないかな。
本郷奏多
ーー座長としての意識は?
全くないです。僕は基本、役者はみんな横並びであるべきだと思っていますから。もちろん先輩・後輩、年齢や歴の違いなどはありますけど、本番が回ったらそこではもう「本郷奏多」ではなく「近藤勇美」なので、そういう意味でも役者の関係はフラットでなくては。そもそも役者って一番下の立場だと思うんです。企画をする人がいて、資金を集める人がいて、監督がいて、脚本が作られて、衣裳も作ってくれるしメイクもしてもらいますし、そのみなさんの熱量は本当に熱い。で、そこに一番最後に作品に参加するのが役者です。
ーーまさに全員がひとつのカンパニー、ですね。
スタッフさんも役者もみんなで同じ熱量で頑張っていると思うので、お芝居をひとりで「こうしたい」って思うのはそれは本当に「悪」でしかないと思います……エゴというか。僕はやっぱり監督の意見が一番だと思ってますし。だから監督が「こうしてほしい」ということに従う。どうしても「違うかな。こうした方がよくない?」って思ったときも、それはひとつの質問として伝えますが、押し通したくはない。暴走してしまうのが怖いので。基本はすべて「現場」。入ってみて、他のシーン、他の場面、みんなのバランスの中で監督が僕にして欲しいことを受け取ってカタチにする。僕は、僕が現場でできることを最善でやるだけだなといつも思っています。それでももし座長として僕がなにか言えるとしたら……「体力的にきつい舞台だとは思うので、みんな、体に気をつけて健康で頑張ろうね」ぐらいかな(笑)。
ーーではお客様にもぜひその「最善」を楽しんでいただいて。
はい。この作品は、僕らがわちゃわちゃと全力で頑張ってるところを観て楽しんでもらうっていうのが大前提。いい意味で頭を使って観るような作品ではないので、気軽に観て、気軽に楽しんでいただければ嬉しいです。僕らはみんなで体当たり、大きな声でやればいいんじゃないでしょうか(笑)。男子校のノリで、全力でわちゃわちゃします!
本郷奏多
ーー映像と舞台、ご自身の活動としては映像の割合が大きいですが、舞台に寄せる思いというと?
舞台には映像と違った魅力がいろいろあって……。お客さんがリアルタイムで観てくれて、そのリアクションがこちらへダイレクトに伝わってくるというのは面白いですし、映像だとやり直しがきくというか、なにかあったらもうワンテイク撮れるっていう保険があるけど(笑)、舞台ではそれが許されないっていう緊張感は特別。毎公演常に100点のモノをお客さんに提供したいですし、そこでワンチャンスっていうのが、ちょっとヒリヒリっとして堪らないですね。
でも映像だから、舞台だからってことではなく、声をかけていただいたお仕事はなるべく全てやりたいですし、全力を注いでいきたい。それがたまたまどっちのお話をいただいてるかっていう違いでしかないと思ってるので──。舞台に関してはまだ経験値が少ないので、今はまだ勉強させていただいてるって感じです。
ーーやる前から決めつけることが好きではない。お話を伺っていると改めて俳優業に対してとてもフラットに向き合っているんだな、と感じます。
そうかもしれないですね。自分ひとりで見えてる世界って狭いものだと思うので……作品はいろんな人がいて、いろんな考え方があって、みんなで創るものなので、いろんな可能性があると思うんです。だから僕は出会った時に出会ったものをやる。もちろんやるからにはすべてに対して全力で取り組みます。
本郷奏多
ヘアメイク:福田純子 スタイリスト:川地大介
取材・文=横澤由香 撮影=鈴木久美子

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