日本音コン・ヴァイオリン部門 第1位
東亮汰インタビュー「作曲家の思い
を自分の音で伝えていけるヴァイオリ
ニストに」

昨年2019年の第88回日本音楽コンクール・ヴァイオリン部門で第1位を獲得した東亮汰は、現在、桐朋学園大学の2年生。2020年2月26日(水)に開催される、東京オペラシティコンサートホールでの『第88回日本音楽コンクール受賞者発表演奏会』では、太田弦&東京フィルとともに、ブルッフの「スコットランド幻想曲」より第3・4楽章を披露する。
――まず、ヴァイオリンを始めたきっかけを教えてください。
母が趣味でヴァイオリンを弾いていまして、(母が)所属するアマチュア・オーケストラの練習を見学しました。そこで、まず指揮者に憧れて、指揮者になりたいと思いました。指揮者になるには何か楽器をやらなければいけないということで、4歳のときにヴァイオリンを始めました。そして、桐朋の子供のための音楽教室に入り、森川ちひろ先生につきました。母から話を聞くところによると楽しそうにやっていたみたいです。音楽教室の中に弦楽アンサンブルがあり、いろいろな曲をやりました。チャイコフスキーやドヴォルザークの弦楽セレナード、グリーグの「ホルベルクの時代から」などです。小学校の前半までは指揮者になるためにヴァイオリンを勉強しているようでしたが、今は好きでヴァイオリンを弾いているので、夢も少し変わったのかなと思います。今でも指揮はしてみたいですが(笑)。
――最初にオーケストラと共演したのはいつですか?
小学校5年生のときに、NHK交響楽団のメンバーが中心となっている、ハマのJACKオーケストラで、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番を弾きました。
東亮汰
――小学校6年生のときに、全日本学生音楽コンクールの東京大会で第1位、全国大会で第2位に。そして、中学2年生のときに全国大会で第3位に入賞しましたね。
中学校は地元の公立校に進学しました。この頃になると、もう母がつきっきりで見ることはなくなり、自分の意志でコンクールに挑むようになっていました。でも、今ほどは音楽に向き合えていませんでした。普通の中学生のように、クラスの友達とサッカーで遊んだりしていました。少し中途半端な気持ちになっていたのですが、中学3年に上がる頃にセミナーで辰巳明子先生に見てもらって、桐朋学園の高校に入ることにしました。辰巳先生には現在でも見てもらっています。
――高校生活はどうでしたか?
高校に入って音楽仲間との学校生活になり、一気に気持ちが引き締まりました。まわりの環境のおかげで、自然と音楽に向き合うようになりました。
高校2年生から日本音楽コンクールを受けるようになり、日本音楽コンクールが1年間の中心となっていきました。4月に課題曲が発表され、8月までそれに掛かりっきり、というような生活です。小さい頃から日本音楽コンクールを聴きに行っていて、自分が出るのが信じられませんでした。日本音楽コンクールは、レベルが高く、高2、高3、大学1年のときは、第3次予選までしか進めませんでした。でも、コンクールで課題を見つけて、次の年のコンクールに備えました。
東亮汰
――桐朋学園大学に進んでいかがでしたか?
大学に入って、作品に対する練習配分や本番までに仕上げるための時間の感覚がつかめてきて、自分の課題も改善することができてきました。
――そして、大学2年生になり、昨年秋の日本音楽コンクールで見事に優勝しましたね。
本選では、ブラームスのヴァイオリン協奏曲を弾きました。ブラームスの協奏曲は、初めてコンクールに参加した高2のときから、何年もかけて準備してきました。大学1年のときには、ハマのJACKオーケストラと共演させていただいていました。僕はブラームスの音楽の深いところが大好きなのです。
――本選はいかがでした?
弾き始めるまでは、どれだけ緊張するんだろうという不安が大きかったのですが、いざ舞台に立って弾き始めたら、楽しく演奏できました。一年前から、大学の体育の先生に本番での気持ちの持って行き方についてアドバイスを受け、自分のなかで緊張を克服することができたのです。それから、指揮が渡邊一正先生だったので、渡邊先生だからこそ楽しく演奏できたのかもしれません。
――2月26日の受賞者発表演奏会では、ブルッフの「スコットランド幻想曲」を選びましたね。
ブルッフの「スコットランド幻想曲」から時間の関係で第3・4楽章を弾きます。大好きな曲で、小学校6年生のときにピアノと弾いたことがあるのですが、ハープの入っている曲なので、いつかオーケストラと弾けたらいいなとずっと思っていました。今回弾かせていただけてとてもうれしいです。プロのオーケストラでもあまり取り上げない曲で、貴重な機会ですが、僕はオーケストラの部分も大好きなので、本当に楽しみです。この曲は、メロディが素敵で、聴きやすい曲です。オーケストラと一体となって、曲の魅力を余すところなく伝えられるようにがんばります。
東亮汰
――今はソロ以外ではどういう活動をしていますか?
桐朋の仲間たちと、ポローニャ弦楽四重奏団を組んでいます。「ポローニャ」とは「桐」の意味です。磯村和英先生と山崎伸子先生に見ていただいています。3月9日(月)にヤマハ銀座コンサートサロンでリサイタルをひらきます。
――楽器は何を使っていますか?
昨年11月からストラディヴァリウスを仮で借りていましたが、この1月30日から正式に貸与されることになりました。
――次の目標は何ですか?
これからは、海外のコンクールを受け始めようと思っています。
――どういうヴァイオリニストになりたいですか?
ソロでも室内楽でも、いろんな形で音楽に関わりながら、作曲家の思いを自分の音で伝えていけるヴァイオリニストになりたいです。

東亮汰

取材・文=山田治生 撮影=中田智章

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