歌謡界のスーパースターと称される人物を取り上げ、様々な資料から、その人物の”すごさ”を浮き彫りにする証言集。今回は、流行歌、演歌、ジャズ、ブルースと様々なジャンルに挑戦し続け常に超一流のパフォーマンスを提供する、日本屈指の女性ボーカリスト八代亜紀をフィーチャーする。
八代亜紀
ヤシロアキ:1950年8月29日生まれ、熊本県八代市出身。歌手、女優、画家。1973年、「なみだ恋」が120万枚を超える大ヒット。その後もヒットを連発し、1980年には「雨の慕情」で日本レコード大賞を受賞。現在は、演歌、ジャズ、ブルースなど、ジャンルレスな公演を続けている。

(八代亜紀さんは)子どもの頃から見たり曲を聴いたりしてきた方。大御所の方なので、今回のお話(デュエット)をいただいた時は緊張しました。会ってみたらものすごく腰の低い方で、なんて心の広い方なんだと思いました。存在が近しく、支えてもらっているようにも感じています コメディアン・みやぞん 『HIGHFLYES』(目指すは紅白!平成から新時代へつなげる応援歌、八代亜紀とみやぞんによる初のデュエット曲「だいじょうぶ」がリリース!【インタビュー】/2019.2.7)より

八代さんは本当に20世紀のレコーディングシステムができてからの音楽を体現してる歌手で、マイクロフォンの使い方が完璧なんです。よくマイクを離して大きい声で歌う人がいるじゃないですか。ああいうことは絶対にしない 音楽家・小西康陽 『音楽ナタリー』(八代亜紀×小西康陽 構想5年で生まれた「夜のアルバム」の続き)より

八代さんの声は、厚みがあって、響き方が独特なんです。包み込んでくれるような感じで。今回、八代さんのレコーディング姿を見ることができたのが、本当にうれしかったんです!スタッフの方にも見せたことがないって 歌手・May J. 『excite.ニュース』(八代亜紀&May J.ほっこり対談「八代さんってお料理するんですか?」/2017.5.25)より

とにかく一にも二にも、歌にビックリさせられっぱなしでしたね。僕が若い人をプロデュースする時には、歌入れでAメロだけ、Bメロだけって分けて歌ってもらうことも多いんです。〈中略〉とにかく1曲仕上げるのにものすごく時間がかかるし、直すところが多かったりもしますが、八代さんの場合は本当に早くて。歌に入る準備段階ではじっとメロ譜とにらめっこしているんですが、ブースに入ったらもうあっという間にOKという感じが、僕にはかなり衝撃的だったんですよ 音楽プロデューサー・寺岡呼人 『MIKIKI』(INTERVIEW 八代亜紀、哀しみのブルースを歌う―プロデューサーの寺岡呼人と共に、哀しさを通して希望見い出す新作『哀歌-aiuta-』を語る/2015.10.28)より

歌詞の情景を八代さんは頭の中で絵にするそうだ。するとまるでその中に自分が佇んでいるみたいな感じになるという。『絵と歌と頭は全部共通している』といわれたが、歌と絵が八代さんの身体を通してひとつになっている。歌も本番になると、80パーセントしか覚えていなくても100パーセント歌える集中力が出るという アーティスト・横尾忠則 『横尾忠則マガジン VOL.4』(平凡社/2000年3月15日発行)より

一旦、八代さんが言葉に出されると、何事もその通りになる感じですよね。それもご両親の、『いつも笑顔でいなさい』という教訓の成せる業かも(笑)。〈中略〉少女のように天真爛漫な八代さんが、お仕事とはいえ、女の情念の世界を歌われるのが、ちょっと不思議です 作詞家・阿木燿子 『サンデー毎日』(阿木燿子の艶もたけなわ 第199回/2018年4月22日増大号)より

当時うちのお手伝いをしていた人がね、亜紀ちゃんのレッスンの時に部屋の前の階段でじっと聞いていたんだって。それを悠木(作詞家悠木圭子/鈴木淳夫人)が見つけて『そこで何してるの?』って聞いたら、「あまりにも素晴らしい歌なのでつい聞き入ってしまいました』って言うんで、良く聞こえるよう にレッスン室の扉を少しだけ開けてあげたんだって。その人は、美空ひばりのお手伝いをしてた事があったらしいよ 作曲家・鈴木淳 『作曲家・鈴木淳』(八代亜紀歌手生活40周年記念対談/2010.5.14)より

八代さんいわく、もともと小さい頃からイマジネーションが強い子だったらしくて、2才ぐらいの頃にいつもお父さんの腕枕で寝ていたけど、お父さんが天中軒雲月さんっていう女性の浪曲を聞かせながら寝かせていたら、『おかあしゃん、おかあしゃん』って泣いて追いかける部分で浪曲士が悲しい声色を出す。そしたら、歌詞なんかわからないはずなのに2才の八代さんがボロボロと泣いていた。記憶が無いはずだけど、お父さんが『どうしたんだ?』って聞いたら、『かわいそう、かわいそう』って2才の八代さんが言っていたという プロインタビュアー・吉田豪 『miyearnZZ Labo』(吉田豪 八代亜紀を語る/2017.11.4)より

八代は、歌好きの間では今や伝説になった『全日本歌謡選手権』出身である。プロとアマをごちゃ混ぜに、ノドを競わせたテレビ番組。十週勝抜けばチャンスが生まれたが、それ以前に敗れれば、プロの名折れで将来は閉ざされる。それを承知で起死回生を賭けたのが、五木ひろしや八代だった 音楽プロデューサー・小西良太郎 『女たちの流行歌』(著・小西良太郎/産経新聞ニュースサービス/2001年3月30日発行)より

『舟唄』。聴くたびに泣けてくる。日本人の感覚のすべてが、ここにある。人の悲しみ、切なさ、二度と戻らないものに向けた大人の感傷。私は今も、冬に日本酒を飲む時は必ず『温燗』にする 作家・小池真理子 『文藝別冊 総特集 阿久悠〈没後10年〉時代と格闘した昭和歌謡界の巨星』(河出書房新社/2017年8月30日発行)より

デビュー50周年記念のベスト盤『八代亜
紀 オリジナル・スーパーベスト』

2019年12月11日発売
アルバムCD(2枚組)+着せ替えジャケット
TECE-3573 / 3,636円+税
[ Disc-1 収録楽曲 ]
1. なみだ恋
2. おんなの涙
3. 女ごころ
4. しのび恋
5. 別れの夜明け
6. 愛ひとすじ
7. 愛の執念
8. おんなの夢
9. ともしび
10. 貴方につくします
11. 花水仙
12. ふたりづれ
13. もう一度逢いたい
14. おんな港町
15. 恋歌

[ Disc-2 収録楽曲 ]
1. 愛の終着駅
2. 愛の條件
3. 哀歌
4. 故郷へ……
5. 涙の朝
6. 舟唄
7. 女だから
8. 夜のめぐり逢い
9. 雨の慕情
10. 港町絶唱
11. わかれ川
12. 女の街角
13. あなたに逢いたい
14. 下町夢しぐれ
15. 花(ブーケ)束
仲村 瞳(なかむらひとみ)
編集者・ライター。2003年、『週刊SPA!』(扶桑社)でライターデビュー後、『TOKYO1週間』(講談社)、『Hot-Dog PRESS』(講談社)などの情報誌で雑誌制作に従事する。2009年、『のせすぎ! 中野ブロードウェイ』(辰巳出版)の制作をきっかけに中野ブロードウェイ研究家として活動を開始。ゾンビ漫画『ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ~童貞SOS~』(著・すぎむらしんいち/講談社)の単行本巻末記事を担当。2012年から絵馬研究本『えまにあん』(自主制作)を発行し、絵馬研究家としても活動を続ける。2014年にライフワークでもある昭和歌謡研究をテーマとした『昭和歌謡文化継承委員会』を発足し会長として活動中。

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