【矢井田瞳 インタビュー】
ライヴをたくさん
やらせてもらっているからこそ
生まれた一枚
新曲「Cheer for you」は
普段と違う表現方法ができると思った
分かりました。それでは、5曲目「Look Back Again」です。原曲はかなりファンキーでしたが、これはそれとはまた違う印象ですね。あと、一発録りっぽい雰囲気もあります。
確かに。この曲ではスタジオセッション感みたいなものが出せたらいいかなと思っていて。とは言っても、それをいきなりはすることはできなかったと思うんです。「Look Back Again」はライヴでは高高-takataka-のギター2本だけで、私はギターを持たずにステージの左右に行けるようにしてて、そういうライヴで積み重ねてきたものがあったから、レコーディングでもそのままでセッション的にやってみようと。なので、彼らにとってこれはスポーツ曲だと思います(笑)。
確かに忙しい感じではあります(笑)。
ギター2本というシンプルな構成にすることで、歌詞は暗いんですけど、この曲が持っている明るさみたいなものを表現できたと思います。
オリジナルと印象が異なるのは6曲目「I’m Here Saying Nothing」も同じです。これが今作ではもっとも原曲とはイメージが違うんじゃないですかね。
これは構成もコードもシンプルだったりするので、いろんなリズムがはまりやすいんですよね。だからと言って、いろいろやりすぎると小難しい曲になっちゃうし、シンプルにすると寂しくなっちゃうし。そういうところで新しいアレンジをみんなで探していく中で、あの印象的なスパニッシュっぽい叩き方から始まるものに落ち着きました。
過剰じゃないアレンジという感じでしょうかね。オリジナルは同期が入っていることもあってか、2001年らしいサウンドである気はするのですが、今回は時代性がないというか、普遍性を感じるところです。あと、間奏で聴かせるギターの絡みがとにかく素晴らしいです。
すごいですよね! あれができた時、みんなで“イエーイ!”ってなりました(笑)。緊張の演奏だったんで。ライヴで初めてあそこが成功した時も思わず“上手くできたね!”って言っちゃいましたから(笑)。どちらかができると、どちらかができないことが続いてて。
それほどスリリングでしたか。
最近は上手くなりすぎて、普通に1本に聴こえちゃうんです(笑)。ふたりなのにどちらかひとりが弾いているように聴こえちゃうんで、今、どちらかの音を変えようかという話をしてて(笑)。
あと、これもヤイコさんのメロディーセンスを知ったところで、キャッチーだけどスウィートじゃないというか。「I’m Here Saying Nothing」のメロディーってとても独特だと改めて思いました。
あらら(笑)。
気持ちは元気だったんですよ。《そっとしといてよ かまわないでよ》という歌詞を書けてしまえるような時期だったんですけど、だからこそ言いたいメッセージとは裏腹にメロディーはパキッと分かりやすいものを、きちんと削ぎ落して作りたいと思ったことは覚えています。
そう、分かりやすいメロディーであるんですよ。でも、かと言ってシンプルではない。その辺で不思議な感じはするんですよね。
私はど真ん中のどキャッチーなものを書きたいと思って、それを書いたつもりでも、友人からすると“すごく歌いにくいね”と言われたりするから(苦笑)、その差は一生埋まらないものなのかなと思います。自分の中でのポップさ、キャッチーさと、他の人のそれとは違うんだろうなって。
「my sweet darlin'」辺りとは明らかに違うものの、しっかりとキャッチーなわけで、「I’m Here Saying Nothing」はヤイコさんが多彩なメロディーを作られるアーティストであることを改めて知ることができる曲だと思いましたね。これは今回のアルバム総体の話にもなりますが、今回リアレンジされたサウンドはどれも素晴らしいものですけど、新しいサウンドでもメロディーがしっかりと拮抗している印象が強くて。優れたメロディメーカーであるというヤイコさんの本質も再確認したような感じもあるんですよね。
あぁ…でも、『Beginning』を出して、そのあとでライヴをする中で、よりアコギサウンドの可能性に興味を持ったというのが、『Keep Going』がシンプルな理由ですね。“こんなに違う輝き方をするんだ!?”とか“こんなに新曲みたいに生まれ変わるんだ!?”とか、そういう音楽的な楽しさがここに詰まればいいなと思ったんです。
こういう言い方が適切かどうか分かりませんが、もともとのメロディーがタフであることが分かると言いますか。タフだからこそ、どんなサウンドでも料理できると思うんですね。
確かに最近は料理されるのは楽しいですね(笑)。いろんな引き出しが残っているなら開けてほしいところもあるし、守りに入らない姿勢であれば開くかなと思ったりもするし。そういう姿勢ですね。
その意味では『Keep Going』はリアレンジ盤のお手本みたいなものだと思いますよ。最新のサウンドで原曲のポテンシャルをさらに引き出すという。
ライヴをたくさんやらせてもらっているからこそ生まれた一枚だと思います。いきなり“リアレンジして”となったらこうはならなかったと思うし。
ライヴアーティストであるからここに辿り着いたという感じでしょうかね。『Keep Going』の限定盤には過去のライヴ映像が収録されたDVDが同梱されますが、そう考えるとこの仕様も納得ですね。
自分で言うのも変ですけど、このDVDはすごいと思います。“こんな映像、撮ってたんだ!?”という、ほぼ自分も忘れていた映像も入っていたりして(笑)。すごく観応えがあると思います。
それだけいっぱいライヴをやってきたということですよね。
ですね。ものすごく恐ろしいことですけど、“この衣装を着たことを覚えてない!?”みたいなこともあったりして(笑)。“ものすごく一生懸命に演奏しているな…怖っ!”って思ったものもあるし(笑)。すごく歴史を感じます。
そういう映像を観れるのはファンも嬉しんじゃないでしょうか。
分かりました。最後にもう1曲、今回の新曲である「Cheer for you」についてうかがいます。パッと聴き、応援歌的な雰囲気を持った楽曲ではありますが、もともと曲に込めたメッセージがはっきりとしていた感じでしたか?
この曲に関しては、東京都TEAM BEYONDパラスポーツ普及啓発映像「FIND YOUR HERO」があって、それを観たらすごくカッコ良くて、エッジが効いてて、応援したくなる感じ…ほんとシンプルに“選手、カッコ良いな”って思う感じだったんですね。で、それを観たのがちょうど高高-takataka-と色濃くリハをしている時期だったので、プロデューサーのGAKUさんも一緒になって、リハスタで円になっていろいろとアイディアを出しながら作っていったんです。曲作りはバンドっぽくて楽しかったですね。
言葉の乗せ方はヒップホップ的ですね。
そこは新しいチャレンジでしたね。私、とにかくラップができなくて、コンプレックスなんです。お経みたいになっちゃうんですよ(笑)。
ラッパーの方に言わせると、発声法、呼吸法が歌とは異なるらしいですから。
やっぱり違いますよね。でも、普段の自分とは違う表現方法ができる場面だと思ったし、高高-takataka-とGAKUさんと積み上げてきたものの今のベストみたいなものもこの曲に集約できると思ったんです。休憩中に高高-takataka-の歩くんが何気なく弾いたリフを私が気に入って…曲の頭のリフなんですけど、それを繰り返し弾いてもらってそこにメロディーを付けるところ曲書きが始まって。
バッキングのリピートの中にメロディーを入れるというのはヒップホップ的ですよね。ビートも肉体的でアスリート感がありますよ。
そこにはとても気をつけましたので、そう言ってもらえるのも嬉しいです! 何かに向かって頑張っている人がさらに頑張れるようなものになればいいなと思って作りました。
取材:帆苅智之
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アルバム『Keep Going』2020年2月12日発売
青空レコード/VAA
- 【初回限定盤(DVD付)】
- ZLCP-0390
- ¥3,454(税抜)
- 【通常盤】
- ZLCP-0391
- ¥1,818(税抜)
『"20th Anniversary" 矢井田瞳 Live Tour 「Keep Going」』
2/08(土) 東京・EX THEATER ROPPONGI ※SOLD OUT
2/11(火) 愛知・ダイアモンドホール ※SOLD OUT
2/23(日) 大阪・大阪市中央公会堂 ※SOLD OUT
3/22(日) 福岡・DRUM LOGOS
2/14(金) 東京・浜離宮朝日ホール ※追加公演
2/24(月) 大阪・大阪市中央公会堂 ※追加公演
『yaiko x takataka Live Tour「3 -triangle」』
3/28(土) 茨城・日立シビックセンター天球劇場
3/29(日) 群馬・高崎少林山達磨寺
4/04(土) 栃木・高根沢ちょっ蔵ホール
4/18(土) 大阪・南海浪切ホール
ヤイダヒトミ:1978年大阪生まれ大阪育ちのシンガーソングライター。2000年5月に青空レコードより「Howling」でデビュー。同年7月に「B'coz I Love You」でメジャーデビューを果たし、1stアルバム『daiya-monde』はアルバムチャート初登場1位を獲得。2020年にはデビュー20周年を迎え、新曲のリリースやライヴの開催等、精力的にアーティスト活動を続け、2022年9月7日に12thアルバム『オールライト』をリリース。矢井田瞳 オフィシャルHP