多様性が一本の筋になった新感覚ポッ
プ。ネクライトーキーの個性とは

2017年の春に結成し、2019年9月にはマイナビBLITZ赤坂でのワンマン・ライヴを成功させるなど、人気急上昇中の5人組・ネクライトーキーがメジャー・デビュー。ここに完成したセカンド・アルバム『ZOO!!』は、前衛的でスリリングな展開をみせる曲あり、ビッグなバラードあり、クールなループ・ミュージックありの、バンドの発起人・朝日を中心とした多彩な音楽性や、各メンバーのアビリティがより高い次元で交わる、まさにタイトルのごとくワクワクの詰まった作品となった。今回は、バンドのここまでの歩みと『ZOO!!』の魅力について、メンバー全員にインタヴュー。2月23日(日)の川崎CLUB CITTA’を皮切りに、5月4日(月) 東京 Zepp Tokyoでのファイナルまで、全国18か所を回るツアーがますます楽しみになる、バンドとしての高まりを強く感じさせてくれる時間となった。


Text_Taishi Iwami
■ネクライトーキー
朝日(ギター)
もっさ(ヴォーカル/ギター)
藤田(ベース)
カズマ・タケイ(ドラム)
中村郁香(キーボード)

いろんな音楽に出会えるきっかけであり
、再び戻ってきて聴いても楽しめるバン
ドでありたい

――2017年の春にネクライトーキーを結成して約3年。当初思い描いていたことと現在地を比べてみて、どのような感触をお持ちですか?

藤田 : 自分たちの音楽性をじっくり突き詰めながら、2020年の冬あたりにはLIQUIDROOMでワンマン・ライヴができたらいいなって、結成当初はそんな話をしてたんですけど、2019年9月の段階で、それよりもキャパの大きいマイナビBLITZ赤坂でやれました。そこまで数字的なことを意識していたわけではないんですけど、振り返ってみれば「思ったより早いぞ」って。ありがたい誤算です。

朝日 : 俺としてはバンドの音楽性に、その嬉しい誤算があったことが大きいですね。結成した頃は、最初2、3年の間は俺が主導権を持ってバンドを引っ張っていかないとまとまらないと思ってたんです。でも、もうすでに俺の手を離れた”ネクライトーキーという生き物”になってる。みんな好きにやってくれてるし、それがすごくいい方向に作用していると思います。

――今作『ZOO!!』も、作詞作曲のクレジットはこれまでと変わらずほぼ朝日さんですが、作品を作り込んでいくうえで、メンバーの介入度が大きく上がったということですか?

朝日 : そうですね。作詞作曲は全11曲中10曲が俺なんですけど、約1年前にリリースしたファースト・アルバム『ONE!』(2018年12月5日リリース)と比べると、アレンジのプロセスがぜんぜん違います。今までは俺が作ったデモを聴いてもらってからの作業だったのが、例えば「深夜とコンビニ」は、スタジオに入ってメンバー全員で合わせながらアレンジを詰めていきましたし、「ぽんぽこ節」は、みんなからアイデアをもらいながら作ったものを、家に持ち帰ってブラッシュアップしていきました。まずは最低限のデモを作って、基本的に各自が自由にアイデアを出していくようになったんです。俺のアイデアに対しても、例えば「ここは長いから削ろう」とか、ストレートな意見が聞こえてくるようになりましたし、すごくいい感じですね。

――自然とそうなっていったのですか?

藤田 : そうですね。感覚としては自然にそうなっていきました。

――カズマさんは、朝日さんと藤田さんがもともと組んでいるバンド・コンテンポラリーな生活のサポート・ドラマーでもありますが、ネクライトーキーのなかでは、どういう役割なのでしょう。

カズマ : 聴いたままだと思います。それが求められてるから声をかけてもらえたのかなって。僕のルーツはパンクなんですけど、ライヴで映える力強さみたいな。

回答者名 : パンクにもいろいろありますけど、初期パンクやメロディック・パンクにはないフレーズも多いですよね。

カズマ : 高校では吹奏楽をやってましたし、大学ではファンク系のサークルに入ってたんで、そういうところも重要視してもらえたのかもしれないです。

朝日 : ファンクがちょっとでも血に流れてることは大きいです。

――もっささんは、バンドの変化をどう捉えていますか?

もっさ : えっと……、前よりは同い年になったんじゃないかと……。

藤田 : 同い年にはなってない(笑)

朝日 : 言葉のチョイスが……(笑)。初めは敬語で遠慮しがちだったのが、対等に意見が言い合えるようになったんだよね。

もっさ : そうです(笑)。最初はみんなが引っ張ってくれて、そこにふわふわと着いて行ってる感じだったんですけど、今はちょっとちょっかいも出せるようになって。

朝日 : ちょっとじゃないだろ(笑)

――2019年の3月にサポート・キーボーディストから正式メンバーになった中村さんはどうですか?

中村 : 最初はサポートだったんで、自分の意見が採用されなくても、「決めるのはメンバーだしな」って思ってました。でも今は、朝日さんにフレーズを捏ねられる前に、自分が先にどんどん出してやろうって思ってます。そのうえで私の考えたフレーズがOKか没か。そういうやりとりが増えたことは、すごく楽しいです。

朝日 : 俺とむーさん(中村)のやりとりは、今のネクライトーキーをわかりやすく表しているように思います。そもそも通ってきた音楽がぜんぜん違うんですよ。むーさんはクラシックから入っていて。

中村 : 私はクラシックから現代音楽寄りになっていった感じで、バンドはほとんど通ってなくて。だから朝日さんが名前を出すバンドは、ほとんど聴いたことがないんです。

朝日 : わかりやすく言うとUNICORNを通ってるか通ってないか、みたいな。俺はカッコいいなかにも、ユーモアとかコミカルなエッセンスのある音楽が好きで。それに対してクラシックがハイファイで綺麗な音楽なのかとなると、そう断定できるものではないし、それだけですごく長い話になるんで割愛するとして、根っこの部分が違うんです。だから、俺が出せないフレーズはむーさんに委ねます。逆に弾いてほしいフレーズのイメージがはっきりしている場合は、そのまま伝えます。

――そんなネクライトーキーが目指している音楽性を言葉にするとすれば、どうでしょう。

朝日 : 自分たちが好きな音楽を作りたいっていうことは大前提だし、難しいですね……。どうなんだろう?あ、最近思ったのは、音楽は難儀だなって。昔は音楽を聴くことや、そこで得たことを参考にして曲を作ることがただ好きだったのに、いろんなものを探してアウトプットしていくうちに、昔は楽しく聴いてたはずの曲が、聴けなくなることってあるじゃないですか。

――そこにはさまざまな理由があると思いますけど、わかります。昔好きだった曲が素直に聴けなくなった自分が寂しかったり、昔の好みを悔いたりする瞬間もありますよね。

朝日 : その難儀な部分とは関係のないバンドになれたらいいなって。それって騙し騙しじゃできない。10代の若い人たちが、いろんな音楽に出会えるきっかけになりたいし、また再びネクライトーキーに戻ってきて聴いても十分に楽しめる、骨のあるバンドになりたいと思います。

――そういうマインドはメンバーともシェアするんですか?

カズマ : いえ。お互いの好きな曲を教え合ったりとかはします。みんなの個性が集まって、今までになかったようなものが生まれることがバンドの魅力。朝日のデモを聴いて、”考えるな、感じろ”みたいな。

中村 : 練習中に朝日さんが「こういうイメージで作ったんだよね」って、別のバンドの曲を流すことはありますけど。

朝日 : かけてる曲とデモが似てるかと言うとそうでもなくて。

中村 : こういうバンドがいて、こんな感じの曲ができたんだったら私はこうするかな、みたいな。そこにある空気みたいなものを掴んで作っていくイメージですね。

“無秩序”だからこその“アルバム”。
『ZOO!!』の魅力とは

――先行で配信されていた「ぽんぽこ節」は、みなさんの個性が集まったネクライトーキーのおもしろさを象徴しているように思います。例えばファンキーでダンサブルなイントロ。その路線で1曲いけそうなくらいカッコいいんですけど、歌に入るとジャジーになって。さまざまなアイデアをもったいつけずに惜しみなく詰め込んで、目くるめく展開を作っています。

朝日 : 実は、そのままディスコとかファンクみたいな路線でいく案もあったんですけど、このまま躍らせるのもなって。

――それはなぜですか?

朝日 : ちょっと話がずれるかもしれないんですけど、踊れるトラックにかわいい声のヴォーカルがゆるいラインを乗せていくことはやりたくないんです。あとは、コード進行と同じメロディなんですけど、細かく言葉を刻んでその抑揚だけで雰囲気を出していく感じも個人的には好きじゃないし、そういうのはやりつくされたようにも思います。でも、Bob Dylanのそれは好きだなあ(笑)。とにかく”メロディ”と呼べるものがしっかりあることが大切で。

――ときに濁流のようなカオティックな音のなかを貫く、メロディの強さはすごく感じます。

朝日 : それで、「ぽんぽこ節」の場合は、メロディを大切にした時にああいう展開になっていきました。

――間奏もすごく印象的でした。リファレンスはKing Crimsonの「21st Century Schizoid Man」ですか?

朝日 : 確かに、クリムゾンっぽいですよね、僕としてはYesとかELP(Emerson, Lake & Palmer)が頭の中にありました。Yesの『Fragile』は高校生の頃からずっと聴いてるアルバムで。でもむーさんはYesを知らないし、特に元ネタを教えなくても、それっぽいものが彼女の感覚で出てくるのがおもしろくて。

藤田 : テルミンみたいなね。あれすごく好き。

――ベースは、ある意味異様な世界観を、屋台骨で演出するのはなかなか大変じゃなかったですか?

藤田 : 「ぽんぽこ節」と「北上のススメ」は、イントロのベースを朝日が考えたんですけど、「なんて曲を持ってきてくれたんだ」って思いましたね。休譜とミュートが難しくて。さらに、「北上のススメ」はレコーディングでは長い竿を使ってるんですけど、ライヴでは短い竿になるんで、ミュートで気にしなきゃいけない部分が変わってくるから、二重でひいひい言わなきゃいけない(笑)。でもサビは開放的で気持ちよくて、トータルで楽しいですね。

――「渋谷ハチ公口前もふもふ動物大行進」は、「ぽんぽこ節」とはある意味対照的で、展開の軸はシンプルなんですけど、塗り重なっていく音がすごく個性的で好きなんです。

藤田 : これ、私も一番好きかも。まさに、ハチ公口とかスクランブル交差点を行き交う人たちのゾンビ感が出ていて。私もそういう感じで街を歩いているとき、ありますから(笑)

――精神的にきついときに都会を歩くと、人々の流れが異様に見えますよね。

朝日 : 「ぽんぽこ節」と同じく「平成狸合戦ぽんぽこ」を観てるときに思ついたんですよ。最後の百鬼夜行のシーン。中身は全員狸の大行進で、自分の目に映る渋谷と重なったんですよね。

――ヒップホップ・ルーツのリズムループに、朝日さんのおっしゃる”メロディ”のマッチングが効いた魅力はそのままに、ギターロックのダイナミズムが重なって、ダークなハードロックまで飛び出すアイデアに脱帽しました。

カズマ : あのくらい遅めのテンポで跳ねてる感じ、ネクライトーキーにはあまりないですよね。そこに乗っかって遊びました。

朝日 : スネアの音を大きくしたくなって、エンジニアさんもそのほうが好きだって。で、ディレクターが「0.3デシベルまでで上げてみようか」って言って上げてもらったら、めちゃくちゃ良くなった。じゃあ実際は何デシベル上げたのか訊いたら、1.5だったんです。指示の5倍(笑)

――メロディもすごくおもしろい。でも歌は難しくなかったですか?

もっさ : 難しいというか、ちょっと気持ち悪い感じで好きなんです。

朝日 : コーラスも楽しかったよね。

藤田 : そこにコーラスをつけるから、もっと気味悪くなって。”はひふへほ”の裏で”まみむめも”ってね(笑)

――「虫がいる」はストレートにカッコいいロックがベースになっています。

カズマ : 今回のレコーディングは山中湖での合宿スタイルだったんです。タイトルそのままですけど、虫もいっぱいいました。そういう環境だからこそできた曲で、この先何十年も残る曲なんじゃないかと、思います。

藤田 : 最初はコンテンポラリーな生活そのまんまで、ちょっと笑いました。でも、みんなで作り上げて、もっさが歌うとネクライトーキーになるんですよね。

朝日 : もっさの歌がめちゃくちゃ良くなったことは、作品全体においてもすごく大きかったです。もっさがいれば、サウンドはどこに行っても大丈夫だと思えましたから。

もっさ : でも良くなったらなったで、良くなったことが良くないみたいな顔もする……。

朝日 : ちょっと寂しいなって。ハラハラ感を楽しんでたから(笑)

もっさ : どっちやねん(笑)

中村 : 子離れできないお父さんみたいな(笑)

――激しい展開の曲で冒険心を煽られたかと思えば、「深夜とコンビニ」のような、バラード然とした歌の浸透度にもグッときます。

中村 : もっさの歌い方もすごく好きだし、そこにグランドピアノを使わせてもらえたんで、すごく哀愁が出て、胸が締め付けられる感じもして、大好きな曲です。

――もっささんが、歌っていてとりわけ気持ちよかった曲や好きな曲を教えてもらえますか?

もっさ : 「朝焼けの中で」ですね。結成した2017年に出したシングル「だけじゃないBABY」に入っていた「朝焼けによろしく」のリメイク曲で、そっちも好きなんですけど、今回のヴァージョンが最後の最後に上がって、ようやくアルバムとしてまとまったなって、私は思いました。飛び抜けてただただいい曲。淡々としてるところが好きなんです。

藤田 : もともとはダイナミックな曲だったんですけど、今回改めてリメイクするにあたって、”淡々とした日常”って、珍しく明確な言葉でイメージを共有したよね。

朝日 : ちょっと悲しい曲なんですけど、変にドラマチックじゃなくて、いい終わり方だなって。

――今回、唯一朝日さんではなくもっささんが作詞作曲した「夏の暮れに」についてはどうですか?

もっさ : 何も考えずに、今やりたい曲をストレートに書きました。

中村 : アルバムの中でもっとも苦労した曲です。もっさのイメージが受け止めきれなくて。それは私の経験不足でもあるんですけど、もっさは今まで私があまり弾いたことのないフレーズを欲してたんですよね。

もっさ : 意思疎通は大変でした。

――朝日さんは、それぞれの曲についてロジカルに話せますし、イメージをメンバーに伝えるための最善の方法を選ぶことができる。もっささんはご自身が思ってることを言葉にすることは得意ではないけど、メンバーみんながそこにおもしろい何かがあるんじゃないかと思っている。ネクライトーキーが”二人のソングライターがいるバンド”として立ってくれば、さらに強くなるように思います。

カズマ : それはそうですね。タイプが全く異なるから。

もっさ : 「言葉にできるようになろうね」って、言われるけど(笑)

カズマ : もっさが調べてきたんですけど、タイトルに選んだ”ZOO”という言葉には、動物園以外にも意味があるんです。

もっさ : ”混乱”とか”無秩序”。

カズマ: : 実際の使われ方はポジティヴではないんですけど、妙にはまってるんですよね。

朝日 : そういう意味合いも含めて、すごくいいアルバムになったんじゃないかと思います。

リリース情報

01.29 release
ネクライトーキー 2nd Album
『ZOO!!』

■初回生産限定盤[CD+DVD] AICL-3796~7 ¥4,000(税込)
 三方背デボス加工&スペシャルブックレット仕様
■通常盤[CD] AICL-3798 ¥2,500(税込)
★初回プレス封入チラシ:全国ツアーラスト3ヶ所(東名阪)先行抽選予約【受付期間=1月29日12:00~2月6日23:59】

★配信/CD予約はコチラ★
https://smar.lnk.to/qaCmWAY
https://smar.lnk.to/Y38LT


ネクライトーキー webサイト
ネクライトーキー Twitter

多様性が一本の筋になった新感覚ポップ。ネクライトーキーの個性とははミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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