NakamuraEmi

NakamuraEmi

【NakamuraEmi インタビュー】
“これがNakamuraEmiです!”
って言えるものを詰め込んだ

素直に書けない私だからこそ
歌える曲もきっとある

ちなみにベスト盤を出すにあたり、やはり新曲はマストだったんでしょうか?

そういうわけではなかったんですけど、インディーズ時代の曲を集めたベストでデビューして、今回2枚目のベストを出させてもらえるとなった時、いろんな人の力がどんどん増えたり、お客さんがいてくれるからこそ出せるんだっていう想いがバーッ!と言葉になってあふれてきて。毎回“このアルバムが最後かもな”って思いながら作ってるんで、その気持ちを曲にしておきたかったんです。どんなに良い状態でも、明日、何が起きるかなんて誰にも分からないですからね。

おかげで生まれたのが1曲目の「BEST」で、この曲が最初にあるからこそ、どんな想いで生まれたベスト盤なのかが非常によく伝わってきました。《毛並みの揃った曲はないけれど 生粋のメッセージ》というフレーズは、もうNakamuraEmiの音楽を的確に言い表しているなと。

なんか“ありがとう、愛している、好きです”っていうような、一番分かりやすくて誰にでも伝わりやすい歌が、私、書けないんですよね。ちょっと痒くって(笑)。それをどうにか違う方法で書こうとするから…うん、だからこそ受け入れにくい人もたくさんいるし。もっと素直に書けたらいいなって思う時もあったりするんですけど。

“もっと素直になりたい”って、それこそ「チクッ」の世界観にも通じるところですね。でも、素直になれないからこそ書ける曲もあるはずで。今回、初めてCD収録される「ちっとも知らなかった」も、その気付きから生まれた曲じゃありません?

そうですね。これはNHK Eテレのアニメ『ラディアン』のエンディングテーマとして作った曲で、作品自体が結構ヘヴィな内容なせいもあり、私自身と通じるものは少ないんですよ。でも、その中に二重人格の少女が出てきて、“こんな自分は周りに受け入れてもらえない”って否定する彼女を、主人公は“どっちの人格も面白いじゃん!”って全然違う価値観で受け止めるんです。私も自分の“ダメだな”って思うところを、“だからこういう曲が書けるんじゃない?”って受け止めてくれる仲間が周りにいてくれるから曲を書き続けていられける。アニメサイドの方も“静かに、でも、ひしひしと伝わるものを”とオーダーしてくださったので、普段はなかなか書けないけど、私自身はすごく好きな、ひしひしと来るバラードを書くことができたんですよ。

ストリングスのオーケストレーションも壮大で素晴らしいですよね。

そうなんです。デビュー前から仲良くさせてもらってる弦の方が、本当に歌詞も理解しながらアレンジを考えてくださったので、今回も泣きそうになりながらレコーディングしました。4曲目の「ふふ」もそうなんですけど、いろんなテーマをタイアップでいただけるのが、すごくありがたいですね。でなければ、書けなかった曲ばかりなので。

「ふふ」はLaLaTVからのオファーで虐待防止をテーマに今年書かれた曲ということですが、曲自体は決して重いものではないですよね。

ライヴにいらっしゃったLaLaTVの方が、MCで私が保育士をやっていたというのを聞いて、それだったら通じるものがあるんじゃないかとチャンスをくださったんです。そこから曲を作るにあたり、虐待と向き合っている団体の方といろいろお話させていただいたんですが、実際の話は途轍もなさすぎて…。話を聞けば聞くほど、苦しいばかりになってしまったんですけど、みなさんおっしゃっていたのが、虐待に至ってしまうほど親が追い詰められてしまう前に、社会が声を掛けてあげることが大事なんだっていうことだったんです。例えば、肩身の狭い想いをしながら電車に乗っていて、赤ちゃんが泣いてしまった時に、誰かが“あら、かわいい子ね”って言えば、それだけで救われたりするじゃないですか。私は子供がいないので、最初は“虐待のことを書くなんて”と思っていたけれど、そう考えると私にもできることはあるんですよね。虐待ってすごく大きなテーマに見えるけど、実はめちゃめちゃ身近なことで、まずは子供を育てているお母さんやお父さんを周りの大人でカバーすることが大事。その手助けができたらいいなぁっていう想いを込めたので、長く伝えられる曲になったら嬉しいです。

いや、本当に大勢の人に伝わってほしい曲だと私も思います。そういった広く聴いてほしい曲が詰まった一方で、「東京タワー」みたいな新曲が入っているのも面白い。

はい(笑)。ベストアルバムとなると1枚通してのテーマもないから、何を伝えるべきなのか分からなくなってしまって曲が上手く作れなかった時期があったんです。自分が閉じこもった曲ばかりで、何曲デモを出してもプロデューサーの心を動かせなくて。それで息詰まってどうしようもなくなった感情をぶつけたら、それがドン!と来たみたいで、“あっ、これはなんか伝わってきたわ”って言ってもらえたんです。アレンジのイメージも私の中では固まっていたので、要望を全部言って作ってもらって、こればっかりは自分100パーセントでできた曲ですね。

曲自体は聴きやすくて、ちょっと意外に感じていたら、だんだん様子がおかしくなっていって。2番の後半で一気に爆発するところがNakamuraEmi節だなと。

ここはブワッ!と出しちゃったところですね。人間、歳を重ねると他人に言うほどでもないけど、すごく悔しいとか悲しいとか、家に持って帰れない感情を抱えることがあるじゃないですか。私の場合、東京タワーに行っちゃったんです。車を運転してると、あのぼんやりしたオレンジ色の光に、いつもジーンとしちゃって…私が生まれる前から変わらず、ずーっとここに建ってるんだって考えると、なんだかホッとするんですよ。だから、それぞれのホッとする場所で時を過ごせば、例え答えが出なかったとしても、いつか“あんな日もあったな”って振り返る時が来るよ…って寄り添える、みんなの側にいられる曲になったらいいなと思います。

自分の経験をもとにしつつ、やっぱり誰もが共感できる曲に仕上がっているのはさすがですね。

まだまだ自分のことばっかり書いてるけど、ちょっとずつは変わってきてたりするのかなぁっていうのは、自分で聴いていても感じました。歌声に関しても、今年はまた変わると思うんですよ。去年は体調のこともあってライヴを飛ばしたり、喉の調子も悪かったりしたので、1回いろんな方向から歌を見つめ直す時期に来ている気がするんです。周りのスタッフさんたちも長く歌っていけるように一生懸命環境を作ってくれているので、長く歌える歌い手というのは目指していきたいですね。

ファンにとっては一番嬉しい言葉です。3月からのリリースツアーは、またもやアコースティック形式とバンド形式の両方で行なわれますけれど、もしや、どちらの形態でもやれることを想定して最近は楽曲を作ってたりもします?

いや、何も考えてないですね。実際“あれ? これ、アコースティックでどうやるの?”みたいな話も今、してたり(笑)。でも、ヒューマンビートボックスの朝 光介(カサリンチュ)くんが入ってきてくれたことで、機械を使いながらやれたりもするから、また別のかたちに生まれ変わりつつ、ちゃんと歌詞が伝わるものとして面白く聴かせられたらなと思ってます。

取材:清水素子

アルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST2』2020年2月5日(水)発売
    • 【初回限定盤(Blu-ray付)】
    • COZP-1613~4
    • ¥4,200(税抜)
    • 【通常盤】
    • COCP-41047
    • ¥2,700(税抜)
    • 【アナログ盤】
    • COJA-9370~1
    • ¥5,000(税抜)
    • ※本人直筆シリアル
    •  ナンバー入り
    • ※数量限定生産

『NakamuraEmi NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST2~Release Tour 2020~』

<Acoustic>
3月22日(日) 群馬・高崎club FLEEZ 
3月25日(水) 神奈川・横浜BAYSIS
3月28日(土) 静岡・浜松窓枠
3月29日(日) 岐阜・club-G
4月04日(土) 岡山・CRAZYMAMA KINGDOM
4月05日(日) 広島・LIVE VANQUISH
4月08日(水) 京都・KYOTO MUSE
4月09日(木) 兵庫・神戸チキンジョージ
4月12日(日) 栃木・HEAVEN'S ROCK 宇都宮 VJ-2
4月16日(木) 石川・金沢vanvanV4
4月17日(金) 新潟・ジョイアミーア
4月25日(土) 鹿児島・SR HALL
4月26日(日) 熊本・B.9 V2
4月29日(水) 岩手・盛岡CLUB CHANGE WAVE
5月01日(金) 宮城・仙台darwin
5月02日(土) 福島・郡山HIPSHOT JAPAN
5月04日(月) 北海道・札幌PENNY LANE 24
5月05日(火) 北海道・帯広Rest
5月08日(金) 香川・高松DIME
5月09日(土) 高知・X-pt.
<Band>
5月19日(火) 大阪・なんばHatch※1F全自由のみ
5月22日(金) 福岡・DRUM Be-1
5月24日(日) 愛知・名古屋ReNY limited
5月29日(金) 東京・EX THEATER ROPPONGI

NakamuraEmi プロフィール

ナカムラエミ:神奈川県厚木市出身。1982年生まれ。山と海と都会の真ん中で育ち幼少の頃よりJ-POPに触れる。カフェやライヴハウスなどで歌う中で出会ったヒップホップやジャズに憧れ、歌とフロウの間を行き来する現在の独特なスタイルを確立する。その小柄な体からは想像できないほどパワフルに吐き出されるリリックとメロディーは、老若男女問わず心の奥底に突き刺さる。16年1月にアルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST』メジャーデビュー。20年2月には5thアルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST2』をリリースした。NakamuraEmi オフィシャルHP

「東京タワー」MV

OKMusic編集部

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