【NakamuraEmi インタビュー】
“これがNakamuraEmiです!”
って言えるものを詰め込んだ
メジャーデビューから4年の間にNakamuraEmiが辿った軌跡が詰め込まれている2作目のベスト盤『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST2』。“日本の女”として自分自身のリアルな心情を、周囲との関わりの中から紐解いた彼女のメッセージは、世代も性別も超えて響くもの。その豊かな感受性を、ぜひこの機会に味わってほしい。
たくさんの人が共感しやすいもの、
世代を超えて伝わる曲を選んだ
今までのジャケット写真は顔がほとんど見えないものだったのに、今回のベスト盤は振り向きざまのカットで顔が見えているのに“おっ!”と思ったんですよ。何か心境の変化でもあったんでしょうか?
1枚目のベスト盤(2016年1月発表の『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST』)でメジャーデビューした時のジャケットが、実は今回のジャケットの中にある枠にはまってるみたいなイメージなんですよね。あれから4年経った今、もう1歩後ろから当時のジャケットを見てるみたいな案を、ずっと担当してくださってるデザイナーさんが出してくださって。でも、最初は後ろ姿で今まで通り顔が見えないままでいくつもりだったんです。私の歌詞って自分のことを歌ってばかりなんで、聴く人それぞれに曲を自分のこととして置き換えてもらうためには、逆に顔の情報はいらないかなって。
なるほど。だから、これまでのジャケットでも顔が出ていなかったんですね。
はい。でも、今回のベストは本当にいろんな人のおかげで作れたという気持ちが強かったので、完全に後ろ向きっていうよりは、ちょっとこっちを向いてるくらいがナチュラルでいいんじゃないかって。いろいろ話しながら写真を撮っていくうちに、こうなりました。
この4年間でしっかりと手応えを感じながら活動してこれたことの表れですね。選曲は前回のベスト盤(2016年1月発表の『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST』)以降にリリースした、シングルやタイアップ曲を中心に選ばれた感じでしょうか?
そうですね。デビューのベスト盤以降に出してきた3枚のアルバムと、その後のシングルと。ただ、インディーズ時代に出した「チクッ」っていう曲だけは、いろんな方に“また聴きたい”と言われていたので、再録することにしたんです。当時はまだ自分の世界を作ることに精いっぱいで刺々しい部分を出していたけれど、今回はベスト盤に収録するということで、できるだけたくさんの人に聴いてもらいやすい、分かりやすくて開けたバージョンにしたかったんですよね。それでストリングスの方たちのお力を借りてやってみました。
ずいぶん華やかになって、私も“こんなポップな曲があるなんて!?”と驚きました。しかし、“たくさんの人に聴いてもらえるように”という発言があったり、収録曲の「メジャーデビュー」には《万人受けじゃない》という歌詞もあったり、どこかで自分の音楽は好き嫌いが分かれやすいという感覚があったりもします?
それはリリースのたびに感じますね。何かを創造する人はみんなそうでしょうけど、それが万人に伝わったり、同じ想いで受け取ってもらえるわけじゃない。でも、ちょっと環境の変化があった時、前は受け付けなかった曲でも“あっ、今の自分はこの曲と近いなぁ”って感じることもあるじゃないですか。特にベスト盤は今まで聴いたことのない人に聴いてもらうための作品っていうイメージもあるので、今までメディアで流していただいた機会の多いタイアップ曲だったり、たくさんの人が共感しやすいものっていうのは多めに選んだつもりですね。例えば「大人の言うことを聞け」はいろんな世代の人に伝わりやすい内容だと思いますし…「新聞」もそうかな。
個人的にも「大人の言うことを聞け」は大人に反発する若者と彼らに口出ししてしまう大人の両方に寄り添った歌詞に、とても衝撃を受けた記憶があります。
その一方で、「甘っちょろい私が目に染みて」みたいに、“これだけは絶対入れたい!”っていう曲もあったりしつつ(笑)。どんな立場の人にも聴いてもらいやすくて、“これがNakamuraEmiです!って言えるものを詰め込んだ感じです。
そうして選んだ楽曲を、基本的には時系列を遡るかたちで収録していますよね。
はい。他の方の作品だと昔の曲から始まるパターンもありますけど、新曲もいくつかあったので、逆に新しい順にどんどん入れていったんです。そうすると最後に一番古い、でも、最新のバージョンで録音した「チクッ」で終わるのもいいかなって。自分で聴いていても、時が遡るにしたがって“この頃にあの人と出会ったなぁ”とか、いろんな人の顔が浮かんできたり、そんな中でも“今だったら、もうちょっと違う歌詞表現するな”っていうのが見えてきたりして、いろいろ面白いんですよね。ただ、厳密にリリース順にしたわけではなく、今回アナログ盤だと2枚組で4面に分かれてしまうから、その辺の区切りも考えながらアルバムごとに並べて、その中で上手く順番を組んでみました。
そもそもアナログ盤を毎回出しているというのも珍しいですよね。
ありがたいことですよね。自分もすごくアナログ盤が好きで、自主の時にはアナログの真似っこをした、ちょっと大きいサイズのものを手作りで出してたりもしてたんです。なので、そんな“何かできないかなぁ”っていう想いをレコード会社さんが受け止めてくださって、ひとつひとつシリアルナンバーを手書きしたアナログ盤を出させてもらってるんですよね。おかげで曲の組み合わせは毎回考えさせられますけど(笑)。