長谷川京子「毎日毎日愛のムチをいた
だいて...」 森新太郎演出の舞台『
メアリ・スチュアート』まもなく開幕

舞台『メアリ・スチュアート』が、2020年1月27日(月)から世田谷パブリックシアターにて開幕する。今回の戯曲は、18世紀のドイツの大劇作家シラーの『メアリ・スチュアート』を、20世紀のイギリスの詩人スティーブン・スペンダーが上演台本にまとめたもので、第21回読売演劇大賞・最優秀演出家賞や第64回芸術選奨新人賞受賞など数多くの受賞歴を誇る実力派の森新太郎が演出を務める。
開幕を直前に控えた1月25日(土)、ゲネプロ(総通し舞台稽古)と囲み取材が行われた。演出の森をはじめ、出演する長谷川京子、シルビア・グラブ、吉田栄作三浦涼介が取材に応じた。
演出の森新太郎
−−まもなく初日ですが、初日を迎えるにあたって、今のお気持ちをお聞かせください。
 
長谷川京子:森さんが隣にいるというだけで怖くって(笑)。1カ月半ぐらい稽古をさせていただいて、本当に毎日毎日愛のムチを演出家の森さんからいただいて、ここまで来たという感じです。昨日(24日)初めて舞台で、衣装を着て、通し稽古をさせていただいて、今までの稽古とはちょっと違う感情や感覚がありました。すごく緊張しました。これから行われるゲネプロも緊張するんですよ...。
ですが、ここまでは森さんまでにご指導いただいたんですが、ここからは自分の世界だなとすごく思っているので、森さんに怒られるとか気にしないでのびのびとやりたいと思っています。まだ本番ではないですが、ゲネプロも精一杯頑張りたいと思います。
シルビア・グラブ:とうとうここまで来ちゃってねという感じです。稽古も随分長い時間してきて、これからもう稽古できなくなるのかなと思うとそれも恐ろしいし...私、今年の初夢に森新太郎さん出てきました(笑)。めでたいのか、悪夢だったのかよく分かりませんけど、見ちゃいました。いつまで森さんの夢を今年見続けるのかというところがとても楽しみです(笑)。みなさまもぜひ楽しみにしていてください。
『メアリ・スチュアート』のゲネプロの様子
吉田栄作:制作発表から1カ月半しか経っていませんが、もっとたくさんの時間が経ったような感じがします。僕も森さんには大変しごいていただきました。最初に戯曲を読んだ時、僕はもっとクレバーな策略家をイメージしていたんですが、森さんの演出にかかって、もっとバカっぽい、人間的なレスター伯に出来上がったのではないかなと。その男を演じるのが今、すごく楽しくなってきました。大切なのは、この女王2人に愛された男なので、女王2人がなぜこんな男を好きになったのか、きっちりやりたいと思っています。
三浦涼介:約1カ月半のお稽古はすごく刺激的でした。森さんのご指導のもと、僕自身、森さんを信じてこの1カ月半、稽古に励んできました。昨日(24日)、衣装とメイクをつけて通したお稽古は今までにないぐらい楽しめた自分がいました。お客様に来ていただき、みなさまの前でお芝居することがもっともっと楽しみになりました。ゲネプロ1回目ということで、自分の精一杯を力を込めて、愛を持って、頑張りたいと思いますので、ぜひみなさん、劇場にお越しいただければなと思います。
森新太郎:みなさんの話を聞いていて気になったことが2つあります。1つは長谷川さんが「ここからは私たちが」と言っていたんですけど、僕は初日の幕があくまで長谷川京子にダメ出しをし続けますので、まだまだ安心するなよと思いながら聞いておりました。2つ目はシルビアさんは初夢で見てくださったんですけど、長谷川さんは僕の夢を見ていないんです。俺としては正月明けから夢に出たつもりだったんですけど(笑)、見なかったというので、まだまだだと思っています。
長谷川:たぶん、忘れたくて、忘れたくて....(笑)
森:千秋楽までにはなんとか夢に出てやろうと...
長谷川:嫌だ!いやだいやだ!!!
森:今は「おはようございます」より先にダメ出しから入る毎日ですので...。
長谷川:そう、捕まると長いんですよ。私が直すべきところがたくさんあるので、仕方がないんですけど。
シルビア:私も稽古の帰り際、いつも捕まります。
『メアリ・スチュアート』のゲネプロの様子
森:三浦もね、しごくという言葉が正しいのか分かりませんけど、僕は愛情すら感じていますよ。アダルティなメンバーの中で、彼が若さを爆発させないとどうしようもない芝居で、彼にはその責務があるので、頑張ってほしいなと。
 
吉田さんは今回初めてご一緒したのですが、こんないい男だとは。本当に男らしい方で。先ほどバカっぽくと仰っていたけれど、それぐらい軽薄な感じを出さないと、有無を言わせずモテ男になってしまうので、あえて吉田さんにはヘラヘラ笑ってくださいなどと指導しているんですけど、相変わらずいい男。あと、今回吉田さんと一緒にやって、プロだなと思ったのは、彼は家に持ち帰って色々考えて次の日に思いもよらないことをやってのけたりして。栄作さん、すごいなと尊敬しております。プロだなと思っています。
この他にもですね、今回俳優陣がすごいんです。山崎一さん、鷲尾真知子さん、藤木孝さん...とベテラン陣が極上の台本を全力で料理しておりますので、ぜひぜひ今回は足を運んでいただきたいなと思います。また、見たら分かると思うんですけど、世田谷パブリックシアターでしかできないような演出てんこ盛りです。一見何もない舞台なのですが、この世田谷パブリックシアターの素の状態が大きな魅力となっておりますので、それも感じていただけたらと思います。
『メアリ・スチュアート』のゲネプロの様子
−−森さんにお伺いします。今回の舞台は客席中央に花道を通すという特殊な形状ですが、そうした形状にした意図と演出面でこだわった点を教えてください。
森:僕も世田谷パブリックシアターって客席の真ん中に抜け道があるとは知らなかったんですよ。今回、舞台美術の堀尾さん(※堀尾幸男)が最初から「実は面白い出口があって、そこはみんな使わないので、1回使ってみないか」と。半分騙されたような感じで、誰も使ったことないのなら、使ってみたいと思ってやりました。体感してもらわないと分からないのですが、ダイナミックなんですよ。人が客席の方に向かって消えて、客席の方から現れる。縦の動線ができて。この芝居はひそひそ話が多いのですが、花道の狭いところで、ものすごい熱量でやるので、それをお客さんは自分たちの真隣で見ることになるので、ものすごい臨場感になるのではないかなと思います。
舞台セットがない中で、役者さんのみなさんも正直大変だと思います。何しろ俳優の体とテキストの言葉で埋めなくてはいけないので。でも今回の俳優陣はそれを乗り越えていただいて。単純にみなさんビックリすると思います。セットがないのにこれだけ人間の熱量、人間の関係性だけで芝居が成り立つんだと。もしかしたら「THE演劇」的な魅力を発見していただけるのではないかなと。演劇ってこんなに素朴なんだけれども、こんなに豊かなんだということを感じていただけたらなと思っております。
『メアリ・スチュアート』のゲネプロの様子
−−長谷川さんはメアリ・スチュアート、シルビアさんはエリザベス女王ということで対立する役柄です。映像も含めて初共演ということですが、お互いの印象を教えてください。
 
長谷川:シルビアさんに対しては、お会いする前の印象から全く変わらないというか、素晴らしいというと短絡的なんですけれど、本当に気持ちの良い、性格の優しい方なんだろうなというのが表情に出ておられた。本当にそのままですし、それプラス、チャーミング。ちょっとダメ出しされても、可愛い顔するんですよ(笑)。(役柄としては)憎むべき相手なんですけど、可愛い。
 
周りの人からシルビアさんは達者な方なので、その方と対決をするということで、相当頑張らなくてはいけないよと言われてきて、それは覚悟で挑ませていただきました。毎日稽古の中で勉強させていただいている感じです。
シルビア:ありがたいですね。私もイメージとしては映像で見る長谷川京子さんしか知らなかったので、それこそ綺麗で可愛い人なんだろうなと思いつつ、どんな感じで対立できるんだろうなぁと思っていたら、めちゃくちゃ負けず嫌いです(笑)。それを感じた時に、あぁ面白いと思って!対決のシーンがあるんですけど、近くで見ていると、まぁ憎まれている顔をされているのが、気持ちよくて。
舞台だけではないのですが、この仕事をすると女性陣は、負けず嫌いというか、負けん気が強くて、サバサバしていないと成り立たないことが多くて。長谷川さんはまさにサバサバしていて、負けず嫌いな素敵な女優さんです。見ていても一緒にやっていても楽しいです。
『メアリ・スチュアート』のゲネプロの様子
−−ちなみに森さんが夢に出てきたというのはどういう夢だったのですか?(笑)
 
シルビア:正月のお休みに海外に行かせてもらっていて。ただずっと台本のことに追われていて、台本を毎日のように読んでいて、全然海外を楽しむこともできず、台本に追い込まれていて、寝ている間もずっと稽古をしているんですよね。そうしたら森さんからダメ出しされる夢が、初夢でした(笑)。日本にいないのにダメ出しされていました。
 
−−長谷川さんは一番ダメ出しされたのはどんな部分ですか?
長谷川:熱量ですね。あの時代で国を背負って、基本的に今よりもっと男社会の中で、女王として君臨しなくてはいけないという意識の熱量がないということをずっと言われてきました。
 
もちろん技術的なセリフの言い回しとか、もううるさい(笑)。「僕は耳と目がいいから」というんですけど、他の方のダメ出しを聞いていても何が違うんだろうと思う時があるぐらい(笑)。現代語ではないので、あまり意識しないで言ってしまうと、聞いている方がスルーしてしまうことがあるので、どこに意識を置いてセリフを言うかとか、あとはイントネーションとかもダメ出しを言われましたけど、一番は熱量だと思います。
『メアリ・スチュアート』のゲネプロの様子
−−役づくりで一番大切にされたことを教えてください。
吉田:何でしょうかね、役づくり。自分の中で、森さんの演出によってどんどん変わっていきましたから。それに対応すること。先ほど、森さんにも仰っていただきましたが、森さんとキャッチボールしたいというのがあったので、持ち帰って、考えて、これでどうですか、あれどうですかと提案して、これは要らないとか、やらせておいてやっぱり要らないとか。森新太郎あるあるなんですよ(笑)。そういうのも本当に良かったですし、当初のイメージとは違うレスター伯となりましたので、そこに僕自身ゴールをめがけたところもあるんですけど、やっぱり演出家の指導で、変わりましたね。まだ初日まで時間がありますから、高めていきたいなと思います。
長谷川:気をつけたことがありすぎるんですけど、まずセリフの量が多いということでいうと、セリフをなぞってお芝居をしていたら成立しない。体にどれだけしみこませられて、かつ、森さんが演出してくださる内容をちゃんと動かしていると、「あ、こういう感情の流れなんだな」と、自分の中に腑に落ちることがあるんですよ。まだ覚えているセリフを言って、言われたことをやっていたらよく分からないんだけど、全部が流れる瞬間というのがあって、それがすごく気持ちがよくって。そういうことの積み重ねの毎日でした。なにかを意識していたというよりは、指導していただいたことを毎日こなす日々でした。ここまでは。

『メアリ・スチュアート』のゲネプロの様子
シルビア:エリザベスの周りの俳優陣がすごい人たちばかりで、ベテランでもあり、年齢でも私より全然上だったりする人たちを、一言で動かすという威厳を持たさなくてはいけない、けれどもそこまで感情を露わにできない、けれども人間臭い感情を露わにする瞬間がなくてはいけない。人を動かす説得力を持たせることが今回苦戦したところだと思います。当然いろんなヒントもいただけるし、いろんな角度から「今日はこうやってみて」と言われて、1回「マイケルジャクソンでやってみて」と言われたこともありましたが(笑)、なんかヒントはすごくあったりして。それを自分の中でどう消化するか。まだ目指すところは先があると思うんですが、みんなを動かす威厳を持つ。この顔で言っていますけど(笑)。
三浦:僕はお稽古の1週間前ぐらいに盲腸の手術をして、それでお稽古に入って、冒頭から結構膨大なセリフ量で、もっと熱!熱!と言われて、僕はお腹の痙攣と戦いながら...。今はようやく痙攣はおさまって。
森:僕が腹から声出せとバーンと叩いて。まさか盲腸の余韻があるとは知らず(笑)。1日2日熱出して休んだりしてました。最近三浦には「辛かったら言え」と言っています。我慢するタイプなので。
『メアリ・スチュアート』のゲネプロの様子
16世紀のスコットランド女王メアリとイングランド女王エリザベスの歴史的な対立を、人間ドラマとして描き出した『メアリ・スチュアート』。メアリとエリザベスの2人の女王だけが登場する『メアリ・スチュアート』が上演の機会も多く有名だが、本作の『メアリ・スチュアート』は登場人物が20数名に及ぶ群像劇となっている。
史実をもとにしたイギリスの話ではあるが、権力を手にする者の孤独、権力者の間を奔走しながら自分の生きる道を見出そうとする人々の生き様が、繊細な心理描写によって鮮やかに描き出され、現代に生きる私たちにもリアルな説得力を持って迫ってくる。
上演時間は1幕2幕それぞれ90分、途中15分休憩ありの計約3時間15分。取材の中で森新太郎が語っているように、今回は客席中央に花道を通すという特殊な舞台形状に挑戦。舞台セットらしき舞台セットは最小限に限られ、実力派の俳優陣の肉体とセリフを存分に味わう、濃密な芝居となっている。舞台『メアリ・スチュアート』は、2020年2月16日(日)まで。
『メアリ・スチュアート』のゲネプロの様子
取材・文・撮影=五月女菜穂

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