インターネットポップロックバンド・
神聖かまってちゃんだからできる発信
のかたち

中央線に飛びこんで 傍迷惑な奴だと言われて いつだってそこにいたんだ ――「るるちゃんの自殺配信」より

デビュー10周年の今年、10作目のアルバム「児童カルテ」をリリースした神聖かまってちゃん。今回は約2ヶ月前からデジタルリリースもスタートし、特にアルバムの発端である、実際にあった10代の少女の自殺配信をテーマにした「るるちゃんの自殺配信」は他のバンド(もしくは同時代のアーティスト全般でも)がポップに昇華できないテーマだと思う。

バンドにとって初のアニメーションMVも制作され、CDリリース日に公開。ファン以外の共感も集め、るるちゃんに近い少年少女だけでなく、生きづらさを抱えていたり、日々の過激なニュースに疲れたりしているあらゆるリスナーに響きつつある。

今回は同曲をはじめ、インターネット時代の寵児として登場した2010年当時と比べた、ネット経由の発信の変化、1月13日のライブをもって脱退したちばぎんの思いとその後の活動のマインドについてメンバー全員に訊いた。

Photography_Kana Tarumi
Interview&Text_Yuka Ishizumi
Edit_Mine.k

生に執着がなかったら後のことなんか気
にしないと思うんですよ。

――今回、CDリリースに先駆けて約2ヶ月前からデジタルリリースを実施した理由からお聞きしたいんですが。

の子 : やっぱりそれはアメリカのヒップホップチャートに……時代に乗って行こうと。やっぱそこらへんはLil Pumpとか意識して。

みさ子 : ははは!影響受けてる(笑)。

の子 : でもやっぱ時代の流れでありますね。僕も今、サブスクかYouTubeでしか音楽聴きませんし。

――なるほど。サブスクチャートでも上を狙いたい?

の子 : はい、上、狙いたいんで、皆にワンクリックお願いしたいです。

みさ子 : (笑)。音源をとりあえず聴けるようにしたかった大きな理由のひとつが、ツアーでもう曲を聴いてる状態で楽しんでもらいたかったのがあったので。アルバムをフィジカルで出すには結構、準備が必要だったけど、音源はもうきちんと仕上がった状態だったから、先にそれを広めたかった。

――そして今回のアルバムの中で一番注目されているところだと思うんですが、「るるちゃんの自殺配信」。の子さん自身は去年の中学生の……。

の子 : 去年の梅田の飛び降りですか?はい。あれは自分で配信したわけではなく、彼女が飛び降りる寸前の様子を下から、通行人たちがiPhoneで動画撮ってた。僕はああいう劇場型の自死というものはーー答えなんてないんですけども、やっぱり承認欲求的なものも含まれてる、本人もいろいろ混沌とした中にあるかもしれませんが。ちょうど先日もありましたね?

――新宿南口の。

の子 : はい。その度に皆さんが撮ってSNSに晒すっていうことに至るっていうのは、さすがに俺も「信じられんなぁ」と思うんですけど、彼がああいった場所で突発的とはいえやってしまったんだから、それはそういう風にされても仕方ないとは思いますね。

――自殺配信って究極の配信だと思うんです。の子さんはそのこと自体というより、物語にして曲にしたのかな?と思ったんですが。

の子 : ああ、その曲を作るに至って?そうですね。自分の中でもシンパシーがあるから題材にしたわけで。

――その人の最後の発信なわけですよね。

の子 : うん、そうですよね。だからそれに込められてる意味、怨念でも呪いでもあると思うんですけど、それは誰にも分からないことじゃないですか。本人が遺書みたいなものを残していればあれですけど。大体、形がなかったりするケースが多いですからね、ああいうのって。ちゃんと残すべきだと思って……いや、わかんないな(笑)。

みさ子 : 逆に言ったら、死んだ後の世界なんか自分は見れない大前提で死んでる。ある意味、一番、生きてることにこだわった人が多分そうなっちゃうのかなと。人目につくような、衝撃を与えるような死に方をわざとするっていうことは。生に執着がなかったら後のことなんか気にしないっていうか。でもなんか生きた証っていうか、自分がいなくなった後の世界にちょっとでも残したい究極の形なのかなっていう感じはします。

――そして「るるちゃんの自殺配信」のアニメのミュージックビデオ、あれがすごく泣けて。アニメーションを制作したRabbit MACHINEにはどういう内容で依頼したんですか?

の子 : 僕らからは「アニメーションを作りたい」という意見を伝えたぐらいなんです。もともとこの「るるちゃんの自殺配信」は、僕の自作のMVはすでに出していて。そっちでは電車の中でゲリラで撮影して、ひとつの確固たるものが出来上がっちゃっててるんです。でもこの曲をリードにしたいって考えた時に、一気に別のベクトルで攻めた方がいいなってことで。常々やりたかったんですよ、アニメーションってのは。

みさ子 : るるちゃんの心情が変わるのと同時に姿が変わるから絵柄も変わるという表現をしてくれているのは、いい感じに分担しながらアニメーターさんが作画をしてくれたからで。あそこまでクオリティが高いものをうまいこと、この曲だからやってもらえたって感じだったので、「こんないいものをありがとうございます」っていう気持ちですね。
――アニメーションだからこそできる表現もあって。

みさ子 : MV含めて、コンセプトをまとめた全部一個の作品にしたいなぁっていう気持ちがあったから、ちょっとアルバムジャケットのオマージュというか、るるちゃんの姿と心が変化する瞬間をジャケットと同じように崩すアニメーションの瞬間、入れてもらえないか、そういう所々の要望を聞いてくださって。わがままを通して(笑)作ってくださいました。

――比喩的な表現も優れていて。

の子 : いい意味でも悪い意味でもオブラートに包まれていて、世の中向けだなと。でもこれはこれでいいと思います。やっぱり自分らで作るとある意味毒がありすぎちゃう(笑)。逆に引いちゃうっていうのもあるかもしれませんね。

みさ子 : 最終的にやっぱたくさんの人に聴いてほしい、よね?

の子 : やっぱメジャーミュージシャンやってて、毒がありすぎるのは違うとも思う。僕らも紅白出たいですし。

みさ子 : 出てえなぁ(笑)。

の子 : Mステとか。

みさ子 : 出てえなぁ(笑)。

の子 : やっぱりそういったところでの夢はありますよ。
インターネットポップロックバンド・神聖かまってちゃんだからできる発信のかたちはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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