金属恵比須・高木大地の<青少年のた
めのプログレ入門> 第20回「金属恵
比須7年周期説」

「ロック・シーンには、実に自然にある種のサイクルが生じ、その一つの輪は約7年間で一回りする」━━ロバート・フリップ(『MARQUEE別冊 キング・クリムゾン』48ページ、91年インタヴューより)

キング・クリムゾンの総裁ロバート・フリップを教祖と崇めながらバンド運営をしている筆者は、彼の言葉の通りに動こうとする。
2019年12月22日、頭脳警察とのジョイント・ライヴにてスターレス髙嶋(髙嶋政宏)氏をゲストに呼んで奏でたクリムゾンの「スターレス」。筆者が頭脳警察と金属恵比須混合バンドの指揮をとったのだが、11名の考えることは千差万別。演奏がどんどんアレンジされていく。オリジナルからかけ離れて変貌していく「スターレス」に興奮を覚えながらも、筆者はあくまでフリップの奏でるギター音を完コピする。
メンバーには、「みなさん大いに暴れてください! 僕はフリップ信者なんでギターのフレーズまったく変えられないんで」と指示を出した。それを見ていたPANTAさんが、「お前は原理主義者か!」と大笑いしていた。畢竟、大ファンだと原理主義者に行きついてしまうのである。
それはともかく、フリップ「7年周期説」を昔から本気で信じている。74年に「スターレス」にて幕を閉じたクリムゾンは見事に7年後に『ディシプリン』で返り咲く。84年に活動を終了したものの、その7年後、91年のインタヴューが冒頭の言葉である。結局91年に復活しなかったものの、94年に再び産声を上げる。「7年」ではなくあくまで「約7年間」と表現している点に抜け目のなさを感じる。さすが教祖。
ということで金属恵比須も「7年周期説」を2005年あたりから唱え始めた。というのも、この年に金属恵比須が日本代表としてメキシコの世界最大プログレフェス「Baja Prog」への出演が決定した年。オファーの電話をもらったのは冬の黄昏時、世田谷の駄菓子屋「島田商店」だった。そこのおばちゃんとは仲が良く、世間話をよくしていたのだが、会話中に携帯電話が鳴り始めたのである。駄菓子屋を離れて通話ボタンを押すと、レーベルの社長。「メキシコ行きが決定しました」と。おばちゃんに即報告。満面の笑みで喜んでくれたのがいい思い出だ。なお、おばちゃんはその後、若くして亡くなる。
金属恵比須は1991年、小学5年生の時に結成された(「金属恵比須」と名乗るのは96年)。その7年後の1998年、「NLA全国高校生音楽祭」というバンドコンテストで東京代表・南関東代表として出場。周りは横文字のヴィジュアル系ばかりだったが、「鬼ヶ島」「病院坂の首縊りの家」「桜の樹の下には」という楽曲を披露しドン引きされたもののインパクトを与えたクラブチッタの舞台だった。そしてその7年後の2005年に海外遠征のオファーである。まさに7年周期説。フリップの言葉を信じて救われた気分だった。近頃、Youtubeにてそのメキシコでの演奏をフル映像としてアップされた。小倉の勇姿はそれで確認できる。
【動画】金属恵比須 - BajaProg 2006

それから7年後の2012年。フォトン・ベルト突入だとかマヤ暦の予言だとかで地球が滅びるという流言が飛び交ったその時、現在の金属恵比須の体制が動き出す。海外遠征後の金属恵比須にやるべきことを宣言した。2012年地球滅亡をテーマにしたプログレ曲「光の雪」を発表する。
その集大成が7年後の2019年だった。五木ひろし、頭脳警察、難波弘之という小さい頃から憧れていた大物ミュージシャン、そして俳優の髙嶋政宏、作家の伊東潤、映画監督の樋口真嗣、オーケストラ・トリプティーク、そしてアイドルのxoxo(Kiss&Hug) EXTREME(キスエク)とのコラボレーションまで。正統的な音楽の活動から、音楽以外の“文化人”との“異種格闘技戦”まで。本当によく働いたものだ。
その中で印象的だったのがキスエクとのコラボ。そのリーダー楠芽榴(めるたん)が9月に卒業した。アイドル然とした凛々しい容姿といかなる場においても的確なコメントをする対応力でキスエクを引っ張っていたので、残念で仕方がない。
そうか、では勝手に表舞台に引っ張り出してみてはどうか――悪魔の囁きが聞こえた。ということで、2020年1月18日、新宿Rock Cafe Loft、めるたんを司会に迎えてトークイベントを行なうこととなった。その名も「金属恵比須・めるたんの『青少年のためのプログレ入門』」。2019年4月、第1回を開催したのだが、ゲストのPANTA氏が「まったく『入門』じゃねえよ!」とお怒りになる内容だった。よって今回こそは「入門」の内容を用意しようと思っている。なにせ、めるたんはプログレ・アイドル経験者にもかかわらず「永遠のプログレ初心者」。彼女にわかってもらえればおそらく「入門」になるはずだ。
そしてゲストは先述の元メンバー・小倉隆昭。9年ぶりに公の場に姿を現す。忍者の実態に迫る。金属恵比須の「7年周期説」の実態に迫る。
ロバート・フリップは、1981年の『ディシプリン』に関してこう総括している。
「二つのまったく反対側にあるモードに出会う……(中略)……それはとても素晴らしい瞬間だ」(同)
めるたんと金属恵比須――全く反対側の人間を揃えてのイベントとなる。フリップ教祖のおっしゃる通りすばらしい瞬間に出会えるかもしれない。こんな時でもフリップ教祖のご信託は役に立つ。
ふと脳裏にPANTA氏の言葉が浮かんだ。
「お前は原理主義者か!」
もはやフリップの信者からは逃れられないのである。

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