若手登竜門、2つの国内コンクールで
優勝した18歳のピアニスト・亀井聖矢
が次に目指すもの

亀井聖矢(かめいまさや)は、2019年、若手音楽家の登竜門とも言われる日本音楽コンクール・ピアノ部門、そしてピティナ・ピアノコンペティション特級に17歳で優勝した俊英。飛び入学特待生として桐朋学園大学に入学し、現在、1年に在籍している。
――ピアノを始めたきっかけを教えてください。
出身は愛知県で、高校まで愛知県にいました。ピアノは4歳のときに始めました。
物心つく前、僕は外で遊ぶというタイプではなく、家で鍵盤のおもちゃで遊んでいるような子供だったので、それを見て、母がピアノを習わせてみようと思い、近所の先生のところへ通いだしたのが始まりです。小学生になって、コンクールを1年に1回程度受けるようになりました。そして、中学1年生の時、今も教えていただいている長谷正一先生に出会いました。​
――いつ頃、ピアニストになろうと決心しましたか?
中学の頃から、音楽の道に進みたいと思っていました。中学1年生のときに、学生音楽コンクールの全国大会に進みました。中学2年生のときに、ピティナのF級全国決勝大会で銀賞をいただきました。中学校の部活では、卓球部に所属していました。ほとんど幽霊部員でしたけれどね(笑)。
――そして、愛知県立明和高校音楽科に進まれました。
まわりがみんな音楽の道に進もうしている人たちという環境で、とても刺激を受けました。その頃から、コンクールをより積極的に受けるようになりました。
亀井聖矢
――高校2年終了後、飛び入学特待生として桐朋学園大学に進学されましたね。
高校2年のとき、先生を通して、桐朋学園大学で飛び入学という話があるのを聞きました。仲の良い友達と過ごす時間が1年短くなるのは、さみしく思いましたが、新しい環境でいろいろなことが勉強できるのは自分にとってすごく良いことですから、すごく行きたいという気持ちもありました。高校の杉浦日出夫先生に相談したら、「それはすごく良い話」と言っていただけ、それで受験を決めました。
試験は実技だけでした。桐朋には今までそういう(飛び入学特待生の)制度がなく、僕が初めてでした。
――大学ではいかがですか?
桐朋では、新しく上野久子先生と岡本美智子先生に教えていただいています。先生たちにいろんな視点からアドバイスをもらい、それを吸収して、自分の解釈にまとめて、自分の音楽にしています。周りには、日本音楽コンクールで第1位を取ったような先輩たちがたくさんいて、自分もがんばらないと追い付いていけないような高いレベル。刺激を受け、切磋琢磨しています。大学では、音楽史や音楽理論も勉強できて、とても充実しています。
――2019年の日本音楽コンクールのファイナルとピティナ・ピアノコンペティションの特級ファイナルで、ともに、サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」を取り上げましたね。これは珍しい選曲ではないですか?
ラフマニノフやプロコフィエフが王道なのでしょう。でも、サン=サーンスの第5番を聴いて、きれいな部分、激しい部分があり、すごく惹き込まれ、弾きたいと思って楽譜を買いました。コンクールで弾くことを先生たちに相談したら、「この曲を選ぶ人は少ないし、この曲で大丈夫?」と言われました。僕は、好きな曲を弾きたい思いと、サン=サーンスの第5番は演奏者によって変わる魅力的な曲だと思っていたので、「弾きたいです」と言って、押し切りました。最終的に良い結果をいただいて、先生たちにも「良い曲だったね」と言われました(笑)。
亀井聖矢
――サン=サーンスとは、フランス音楽に特に興味があるということですか?
フランス音楽というより、サン=サーンスの曲自体にすごく魅力を感じました。第1楽章は最初がすごくきれいで、第2楽章は「エジプト風」の副題の通り、異国情緒豊かな旋法が現れて、面白い。第3楽章は、技巧的にも難しくて、派手に盛り上がり、見ていても、聴いていても、楽しい。全楽章を通して、いろんな場面があり、飽きないのです。
――それまでにオーケストラとの共演の経験はありましたか?
小さい編成で1楽章だけ弾いたことはありましたが、フル・オーケストラで協奏曲の全楽章を弾くのはサン=サーンスが初めてでした。
――好きなレパートリーについて教えてください。
リストのような、派手でわかりやすく、聴いている人にも喜んでもらえる曲が好きです。楽しんでもらえるのがうれしくって、そういうレパートリーが好きで、得意です。
最近はショパンが好きですね。小さい頃は特に何とも感じなかったのですが、最近、弾いたり、聴いたりして思うのは、同じようなパッセージが何回繰り返されても毎回違う表現ができるということ、そして、その繰り返しは何回聴いてもきれいだと思えるメロディがあってこそ可能だということ。その良さを引き出せるかどうかは、演奏者の表現にかかっていると思います。
亀井聖矢
昔から好きなのはバッハですね。すごく緻密に音楽が組み立てられているフーガのようなものが特に好きです。
コンチェルトでは今後、ラフマニノフを弾きたいと思っています。彼のソナタは弾いたことがあるのですが、コンチェルトはまだなので演奏してみたいです。
――2020年2月26日(水)の日本音楽コンクール受賞者発表演奏会ではチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番 第1楽章を演奏されますね。
チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番は、ずっと弾きたいと思っていた曲です。こういう機会をいただけたので、ちゃんと勉強していきたいと思います。
――2020年3月21日(土)のピティナ・ピアノコンペティション入賞者記念コンサートでは、独奏と室内楽ですね。
第1部でソロを弾かせていただいて、第2部はピアノ五重奏です。最初はスペインもので、アルベニスの組曲「イベリア」第2巻から「トゥリアーナ」。「リストのハンガリー狂詩曲」第13番は、ヴォロドスの編曲による、リストの原曲をさらに華やかに技巧的に昇華させたような、聴き応えも見応えもある、楽しい曲です。後半は、ポローニア・クァルテットとドヴォルザークのピアノ五重奏曲から第3、4楽章を弾きますが、弦楽器のアンサンブルとの共演は初めてです。
「緊張する」と言いながら撮影にのぞむ亀井
――これからは海外へも活動の場を広げていくのでしょうか?
今月末(2019年12月末)に初めてヨーロッパに行き、パリでレッスンを受けてきます。そして、2020年4月にはウィーンでのリサイタルがあります。
――将来はどういうピアニストになりたいですか?
コンサートを積み重ねて、「亀井君の演奏をもう一度聴きたい」と思われるようなピアニストになりたいです。国内はもちろん海外でコンサートをひらいたり、オーケストラとも共演したりしたいです。それから、海外のコンクールも少しずつ受けていって、できれば5年後のショパン・コンクールに挑戦したいと思っています。
――大学生活はいかがですか?
大学に入って、東京で一人暮らしになり、自分でご飯を作ったりもします。嫌々ながら家事もしています(笑)。どこかに遊びに行ったりというようなことはあまりありません。
作曲するのも好きで、趣味で曲を書いたりしています。今は大学の副科で作曲の勉強もしています。ちゃんとした曲が出来たら、どこかで演奏したいですね。
亀井聖矢
取材・文=山田治生 撮影=福岡諒祠

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