LUNA SEA 新たな地平を切り開いた最
新作『CROSS』を完成させたポジティ
ヴな心持ちの表れ【『LIVE LUNATIC
X’MAS 2019』2日目レポート】

LUNA SEA 30th Anniversary LIVE LUNATIC X’ MAS 2019

201912.22(SUN)さいたまスーパーアリーナ
今や恒例とも言える、LUNA SEAのクリスマスライブ。しかし、当然、バンドが存在しているからこそ開催できるわけで、その意味では、これも奇跡的なものだ。“終幕”からの数年間が“REBOOT”につながり、そこからの歩みが開いていった一つひとつの新たな扉。もちろん、あの5人が集えばLUNA SEAであるのは自明の理だろう。リユニオンから現在に至るまで、その核心部分はいつの時代でも揺るぎない。
ただ、新作『CROSS』を耳にした今、誤解を恐れずに言えば、自身の次なる変革期を彼らは長らく待ち続けていたようにも思えてくる。1stアルバムのセルフカバー『LUNA SEA』(2011年)は言うまでもなく、『A WILL』(2013年)と『LUV』(2017年)にしても、その時点でのLUNA SEAを存分に体現していた。しかし、単なる現状維持は彼らが目指すべきものではない。
『CROSS』の制作期間中や完成後にメンバーと面会して話を聞く中で、彼らが得ていた手応えは、確かな前進と同義のように感じた。むしろ、ブレイクスルーと称したほうが適切かもしれない。それまでとは明らかに趣の異なる感覚である。
LUNA SEA/RYUICHI
『LUNATIC X’ MAS 2019』の2日目は、「宇宙の詩~Higher and Higher~」で幕を開けた。ゆったりとしたテンポの中、轟音が心地よく場内を包んでいく。かねてからライブにおけるサウンドの良質さはLUNA SEAの特長ではあるものの、やはり『CROSS』で示していた新鮮な音像が重なってくる。直情的な衝撃ではなく、重厚な存在感。結成から30年というキャリアを経てきたゆえに生まれる空気でもある。その落ち着いた佇まいは、パイロを炸裂させての「The End of The Dream」へとつながれた。2012年にシングルリリースされた楽曲だ。
LUNA SEA/SUGIZO
「『LUNATIC X’ MAS』2日目。昨夜を超えていきたいと思います」(RYUICHI)という言葉に次いでプレイされたのは「ROSIER」だった。しかもそこに続いたのは「DESIRE」と「IN MY DREAM (WITH SHIVER)」である。それぞれ『MOTHER』(1994年)、『STYLE』(1996年)、『EDEN』(1993年)に収録された、いわば初期の代表曲であり、盛り上がらないはずはない。リアルタイムで耳にしていたリスナーは、激しさと切なさをまといながら、焦燥感にも似た感情を喚起させられた記憶もあるだろう。それがいつしか幸福感を伴うマテリアルに転化されてくるから面白い。
LUNA SEA
中盤の流れも絶妙だった。『LUNACY』(2000年)の「Sweetest Coma Again」は終幕前の楽曲ながら、「世界基準のLUNA SEAのサウンド」と『CROSS』に触れたRYUICHIのMCの直後に耳にすると、また捉え方が変わってくる。19年も前のマテリアルが本来的な魅力をさらに表出させた、そんなグルーヴだった。それゆえに次の「BEYOND THE TIME ~メビウスの宇宙を超えて~」「悲壮美」で描かれるサウンドスケープが、音源以上の広大な空間へとオーディエンスを誘う。加えて、その素晴らしさすら序奏に思えてしまったほど、「闇火」の劇的さには引き込まれた。INORANのアコースティックギター、SUGIZOのヴァイオリンによる調べから、情念を映し出すかのように歌い上げていくRYUICHI。内面にジワジワと浸透してくる荘厳な物語の中にいつまでも佇んでいたい、そんな思いに駆られた人も少なくなかったはずだ。
LUNA SEA/INORAN
新たに開発された電子ドラム「e/MERGE」を操る真矢のドラムソロも見どころで圧巻だった。裃姿の笛、鼓奏者を迎えての五人囃子。こういったコラボレーションはこれまでも取り組まれてはきたが、あたかも真矢がシテであるかのような名演は、能をルーツに持つ彼が務めるからこそ意味がある。その熱をJのベースソロが引き継ぐ。LUNA SEAのオーセンティックなロック感を彼のプレイが担っているのは周知の事実だろう。「30周年だぜ! とことんいこうか!」と笑顔を向けながら、「このまま次の曲をコールさせてもらいます」と「JESUS」のタイトルを高らかに叫ぶ。予想外の展開に客席は瞬時に沸いた。このお馴染みの楽曲が醸し出すある種の邪悪さは、この時代ならではの特性だろう。
LUNA SEA/J
RYUICHIは「今年はみんなに心配をかけましたが」と自身の病気治療についても触れながら、「さらに高いところを目指していきたいと思います」と言って「THE BEYOND」をコール。再び『CROSS』の世界を垣間見せる。曲が終わったとき、SUGIZOが何かをRYUICHIに耳打ちする姿が見えたが、その後すぐさま明らかになったのは、彼のギターサウンドの要とも言えるディレイ系統が機能しなくなったという機材トラブル。ただ、どうも簡単には修復しない状況のようで、ここを起点にまったく予定になかったトークライブが始まった。結果的にかなり和やかな空間が生み出されることになったが、かつてであれば一旦ステージから引っ込んで仕切り直しをしていたはずの彼らが、「脱線LUNA SEA」(INORAN)、「神回」(J)などと、そのままステージに立ち続けて冗談を投げ掛け合う光景は、逆に言えば、現在のLUNA SEAがとても好調な状態にあることの証でもあるだろう。新たな地平を切り開いた『CROSS』を完成させたポジティヴな心持ちは、こんなところにも表れていたように思える。
LUNA SEA/真矢
結果的に20分近いインターバルになり、SUGIZOも復旧しきれなかった機材で改めて演奏に臨むことになった。その意味では完全体ではなかったものの、本来であれば「THE BEYOND」からすぐに始めたかったと思しき「BLACK AND BLUE」は、特に彼らが繰り出すバンドサウンドの軸がより際立って伝わる貴重な機会にもなった。「STORM」や「SHINE」も、冷静に考えれば今やクラシックだが、両曲が収められた『SHINE』(1998年)は、往時の彼らの円熟さを体現しつつ、ここでの実演を耳にすると、そこから20年先の自身もを内包していたアルバムだったのだろうとも解釈したくなる。本編最後は1stシングルでもある「BELIEVE」。LUNA SEAの歴史を集約させる意味でも納得の選曲だった。
LUNA SEA
オーディエンスによる「きよしこの夜」の合唱を経て始まったアンコール。まずは「Hold You Down」、そして「White Christmas」からの「I for You」。さらには「TONIGHT」と「WISH」である。今回の公演のエンディングとして相応しいセットだが、ラストに用意されていたのは初披露となる「LUCA」だった。『CROSS』のオープニングトラックをここに置いた意味は明らかだ。スティーヴ・リリーホワイトとの共同プロデュースで生み出された音は、LUNA SEAの音楽における新たな萌芽でもある。2020年2月から始まる『LUNA SEA LIVE TOUR 2020』で起こる様々な出来事を、メンバー自身が最も楽しみにしているのは間違いないだろう。そんな昂揚感すら先駆けて覚えるライブだった。
なお、本公演でも、メンバーすべての楽器演奏について、再生可能な水素燃料電池発電によって賄われた電力が使用されていたことも付記しておきたい。
取材・文=土屋京輔 撮影=田辺佳子、橋本塁、清水義史
LUNA SEA
>>【インタビュー】LUNA SEAはなぜ結成30周年を迎えても進化できるのか? SUGIZOとJに訊く、最新で最高のアルバム誕生物語

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